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バブル期に各自治体へ1億円…「ふるさと創生」とは一体何だったのか 小学校に作った“巨大電飾看板”のその後

東海テレビ / 2024年7月19日 6時34分

ニュースONE

 バブル絶頂期の1989年、「ふるさと創生事業」として全国の自治体にそれぞれ1億円が交付された。需要のないハコモノを作るなど「ムダ使い」と批判を浴びたものもあったが、今もなお地域に根付いているものもある。注目を集めた取り組みはどうなっているのか、その後を追った。

■“城”を作ったり“自由の女神”設置した自治体も




 全国3000以上の自治体に一律1億円をバラまいた竹下内閣の「ふるさと創生」事業は、使い方は自由で、どう使えばいいのか担当者が頭を悩ませながら、様々な使い方が生まれた。

1989年、兵庫県津名町(現在の淡路市)では、1億円の巨大な金塊が公開された。重さは63キロあり、多くの町民が見学に訪れた。


岐阜県伊自良村(現・山県市)では現金1億円を村民に公開。


見たこともない大金に驚いたり、手を合わせる人の姿もあった。

青森県百石(ももいし)町(現在のおいらせ町)が設置したのは「自由の女神」だ。


アメリカのニューヨーク市と「北緯が同じ」だったためだという。近くには米軍の基地もあるため外国人からも人気で、2020年には改修工事も行われた。


当時の百石町の町名から愛称が“ももちゃん”と付けられている。

岐阜県の墨俣町(現在の大垣市)では、墨俣一夜城という城の建設費の一部に1億円を充てた。桜の名所として知られ、年間3万人が訪れる。


城の屋根に設置するものと展示用で「金シャチ」も作った。


展示用のミニチュア(800万円相当)は2002年に盗まれ、その後も盗難未遂などが相次いだため、現在は展示されていない。

■「みかん」「竹島」等の特産品が表示される巨大電光掲示板には反発の声も




 愛知県蒲郡市では1億円の使い方をめぐり、物議を醸した。


市内の西部小学校の校舎の屋上に1990年、縦4.4メートル、横17.6メートルの巨大な電飾看板が建てられた。当時としては画期的な、発光ダイオードを使っていた。


看板には「がまごおりし」と市の読み方をアピールしたり、「みかん」「竹島」など、蒲郡の特産品や名所をPRしていたという。

電飾看板は新幹線の車窓から見える場所に建てられ、出張や旅行中の乗客に蒲郡の魅力をアピールするのが狙いだったが「学校に電飾看板を建てるのはおかしい」と反発の声が多くあがった。


さらに8500万円という高額な費用がかかることから当時、蒲郡市の職員組合が行ったアンケートでも9割以上が反対だった。

現在の蒲郡市民の男性:
「新幹線からしか見えんもん。金で1億円分買っておいた方がよっぽどいい」

別の男性:
「1億円にしてはあまりにも不甲斐ない。もう少し庶民に有効な活用をすべきだったんじゃないか」

結局、設置から9年後の1999年に看板は撤去され、安値で転売された。PRの効果はあったのか?2024年4月、鈴木寿明市長に話を聞いた。

蒲郡市の鈴木寿明市長:
「関東から関西に旅行なり仕事なり。行きかう方が蒲郡の存在を電飾看板で知ってもらうというのは大きい効果があったんじゃないか。本当に大成功であったかというと、それはクエスチョンがつくかもしれない」


鈴木市長は「一定の効果はあった」と、その後は、映画のロケの誘致に力を入れるなど、形を変え新たなPRの道を模索している。

■「村営キャバレー」開業し約10年で閉店した村も




「ふるさと創生」では全国で3000以上の自治体が1億円を受け取り、多くの自治体が温泉を掘ったり、ハコモノを作るなどしてきた。

秋田県仙南村(現在の美郷町)では「村営キャバレー」をオープンさせた。若者の人口流出を食い止めるのが目的だったが、利用者は中高年中心で経営も立ち行かず、約10年で閉店した。

■ふるさと創生金きっかけに「世界一」が生まれた自治体はいまもなお




“バラマキ”と批判されるケースが多い中、地元の人に愛されているのが、岐阜県瑞浪市の八王子神社にある「世界一のこま犬」だ。美濃焼で作られた「こま犬」は高さ3.3メートルあり、ギネス世界記録に認定されている。


新しい窯を作る際、氏神さまに狛犬を寄進する習わしがあったことから市民のアイデアで「ふるさと創生」の1億円を使い、こま犬が作られた。

当時の中心メンバーだった河口建喜さんには、あるこだわりがあった。


河口さん:
「地域のみんなで作ったという意識を持ってもらわないと、やっぱり長いことを大切にしてもらえないということですね。『行政が作りました』『はい、持ってきました』ではダメだと思うんです」


河口さんの呼びかけで、のべ1000人が制作に参加し、当初は想定していなかった「世界一」の焼き物ができあがった。完成後も、ボランティアが掃除をしたり、花を植えるなど手入れを欠かさない。

その後もさらに「世界一」を求めて、1999年には高さ5.4メートルの「世界一の茶つぼ」が完成。およそ1年の月日をかけ、のべ1万2000人が製作に参加した。


2024年の秋には、世界で一番参加者が多い、特産の豚肉「ボーノポーク」の試食会を開く計画で「こま犬」が地域の絆を深めてきた。


「ふるさと創生」とは一体何だったのか。地域の問題に詳しい愛知東邦大学の宮本佳範教授は、評価できる一面もあるという。

愛知東邦大学の宮本佳範教授:
「あの政策は面白い政策だと思っています。批判的に語られることが多いと思うんですけど国が1億円ポンと出すよ、使い道に対して国は制限しませんよ。住民たちが地域の魅力を考え直すきっかけとしては非常に大きな起爆剤になったかなと思います」

2024年4月15日放送

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