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外国人観光客の増加率が全国1位…愛知県犬山市に『オーバーツーリズム』の兆し 解決のカギは“分散と宿泊”

東海テレビ / 2024年7月21日 21時0分

ニュースONE

 観光客が殺到することでゴミや騒音などの問題が生じる「オーバーツーリズム」が、世界中で問題となっている。愛知県犬山市では人気スポットに人が集中し、解決するための取り組みが始まった。また、人気ドラマ「愛の不時着」のロケ地となったスイスの村では、すでに対策がすすんでいた。

■繁忙期は2時間待ちの犬山城 “国宝”に“食べ歩き”で人気復活


 

 現存する日本最古の木造天守の国宝「犬山城」を抱える、愛知県犬山市。2024年6月の週末に訪ねると、城に入ろうとする観光客で長蛇の列が出来ていた。


天守閣の最上階は、入りきれないほどだ。


外国人観光客向けのナビゲーションアプリ「Japan Travel by NAVITIME」の利用状況によると、23年12月から24年1月にかけて、外国人観光客の滞在が全国で最も増えたのが『犬山市』で、 前年の4倍にもなっているという。


約100種類の串グルメが並ぶ城下町「本町通り」も、 “食べ歩き”で大人気となっている。

観光客の女性:
「人の多さにビックリしました」


犬山市観光協会 後藤真司さん:
「つい20年前は週末でもほとんど誰も歩いていなかった状況ですから、これだけ賑わうと本当にありがたいですね」

■“オーバーツーリズム寸前”の犬山市で起きていたこと


 

 今では賑わう犬山城の城下町だが、20年ほど前までは、人影はまばらだった。


観光協会が中心となり、串グルメなど新たな名物を考案した結果、犬山城を訪れる観光客は約3倍に増え、年間58万人になった。


しかし、人が増えたことで、観光地に住む人たちの環境が悪化していた。本町通りでは、人が溢れるあまり、地域住民の車の出し入れや走行の妨げとなっている。

観光客による“ポイ捨て”なども頻発し、ゴミ問題も起きた。さらに、住宅敷地内に侵入されるといった声も上がっている。

地元住民:
「人のお屋敷の中まで入り込まれたり、なんかされたり、ご迷惑されている方たちはいらっしゃるけどね。」

犬山市観光協会の後藤真司(ごとうしんじ)さんは、「対策をとらなくてはいけない時期にきた」と話す。


犬山市観光協会 後藤真司さん:
「“オーバーツーリズム”というわけではないですけれども、ずっとお客さんは右肩あがりに伸びていますので、今後を見据えて対策とっていかなければいけないという時期だと思います」

■大人気ドラマ「愛の不時着」のロケ地 “写真撮影だけ”に殺到




「オーバーツーリズム」とは、観光地などに旅行者が集中することで、地元住民の暮らしに影響が出る問題だ。コロナ禍から観光需要が急速に回復する中、各地で様々な問題が発生していて、“観光公害”とも呼ばれている。


年間2500万人以上が訪れる観光の国・スイスでも、オーバーツーリズムの問題を抱えていた。


アルプスの山々に囲まれた、人口約400人の村「イゼルトヴァルト」。


美しい湖が「静寂のオアシス」とも呼ばれている。


しかし、2年ほど前から、この村の「桟橋」に観光客が殺到する事態となった。

シンガポールからの観光客:
「韓国のドラマを見てここに来ました。“愛の不時着”というドラマです」

この村は、世界中で大ヒットした韓国ドラマ『愛の不時着』のロケ地になっていて、名シーンの舞台となった桟橋で写真を撮るために人が押し寄せた。


観光客の車で大渋滞が発生し、路上駐車も問題となった。ゴミも増え、まさに「オーバーツーリズム」だ。

ホテルで働く女性:
「ゴミをそこら中に捨てる人がいて大変だった」

観光業の男性:
「当時はひどかった。観光客による路上駐車ばかりで、道が通れなかった。それなのに、写真を撮ったら、すぐ帰ってしまう」

しかも、観光客の多くは“写真を撮るため”に1~2時間の滞在だけで、村のホテルやレストランの売り上げにつながらなかったという。


村は対策として、桟橋にゲートを設置し、入場料として5スイスフラン(約900円 2024年7月現在)をとるようになった。ただ、ホテルの宿泊客や、レストランの利用者などは、入場料はかからず無料でゲートに入れる。

観光業の男性:
「対策もされて、今は路上駐車もなくなったし。桟橋のおかげで、オフシーズンにも人が来るようになって、昔よりもホテルは忙しくなった。いいこともあったかな」


イゼルトヴァルトが行った対策について、観光に詳しい専門家・山田桂一郎さんは、「宿泊を伴う戦略が大事だ」としつつ、オーバーツーリズムには『分散』がカギだと話す。


観光戦略に詳しい 山田桂一郎さん:
「ただ写真撮って帰るだけじゃなくて、(宿泊すれば)色んな地域まわってくれるわけじゃないですか。伴って色んな消費行動も起きてくるわけですから。宿泊の方にどんどんシフトしていくのは大事な戦略だとは思う。(オーバーツーリズムは)極めて限られたところで起きていますので、そこからどうやって“分散”させるかっていう話だと思う」

■観光資源に恵まれている犬山市 課題は“分散”と“宿泊”




“オーバーツーリズム寸前”ともいえる犬山市も、大きな課題を抱えていた。

犬山市観光協会 後藤真司さん:
「観光資源でいうと、ものすごく恵まれているんですね。犬山城・木曽川・明治村・リトルワールド・モンキーパークがあるが、それがまだ“ネットワーク化”されてない。交通の便がかなり不便だったりしますから」

犬山城の周辺には、博物館明治村・モンキーパーク・リトルワールドなどの観光施設が点在している。


さらに木曽川では、ライン下りや鵜飼も楽しめる。こうした観光資源に恵まれているにも関わらず、観光客の「96.4%」が日帰りで、犬山城周辺に集中してしまっている。


課題は、観光客を“分散”させることだ。そのために、“宿泊”させ長く犬山に滞在してもらうことも必要になってくる。

犬山市観光協会 後藤真司さん:
「城下町に来たお客さんがどんどん“分散”していくというか、“周遊”していただくように仕組みをみんなで考えなければいけないと思っています。やっぱり泊まっていただいた方が、地域経済における影響は大きいですから、なんとか泊まっていただけるように頑張っていきたい」

■観光地を持つ「名鉄」とタッグ 犬山城からの“足”をどうするか




 2024年6月、後藤さんは、名古屋駅にある名古屋鉄道(名鉄)本社に向かった。


打ち合わせの相手に選んだ名鉄は、明治村やリトルワールドなど、犬山の観光施設を運営している。

名古屋鉄道 地域連携部 花村元気さん:
「犬山の他の観光施設の魅力を、特に言うと私たちの園地ですとか、そういったところをPRしたい」

“分散”を狙う犬山市と、自社の観光施設に人を呼びたい名鉄。目指す先は同じだ。


打ち合わせでは、犬山城周辺と点在する観光地を結ぶ「交通」が議論となった。

犬山市観光協会 後藤真司さん:
「行き来しやすいように永遠の課題というか、やれるといいですね」

名古屋鉄道 地域連携部 花村元気さん:
「バスがやっぱり一番輸送力を持っていますし、運賃の便も安くなるところがありますんで」

現在、犬山城と明治村などをつなぐ直通のバスはなく、名鉄犬山駅を経由しなければならない。そのため、直通のバスを新設したいが、運転手不足やコストの問題で難しい状況だ。


名古屋鉄道 地域連携部 花村元気さん:
「すごく難しいとは思いますが、ただ、難しいと止まってしまってはやっぱいけないとは思いますので、本当に今の時代に合った足みたいなのは考えなきゃいけない」

■高級ホテルも課題 宿泊からの“ファン作り”を




 名鉄は、“宿泊”のためにすでに手を打ってきた。犬山駅前に2021年、「ホテルミュースタイル」をオープン。客室数は118室で、ターゲットは20代から40代の女性だ。


2022年に犬山城の目の前にオープンした「ホテルインディゴ犬山有楽苑」は、富裕層をターゲットにした長期滞在型のホテルだ。


評判は上々だが、目標の稼働率には達していないのが現状だ。

ホテルインディゴ犬山有楽苑 佐橋学さん:
「(犬山は)名古屋から30分、中部国際空港からも一時間あれば来れるぐらいで。立地としてはいいんですけど、逆に良すぎて“日帰り”の選択肢をされる方がほとんどなんですよね。来ないと出来ないような体験とか、見られるものを提供できるか」


ホテルインディゴは名鉄とも協力し、鵜飼や花火などの夜に体験できるプランを作って宿泊客に提案する考えだ。

宿泊により犬山市に長く滞在してもらえば、その分、多くの観光地へ足を運んでもらえる。


犬山市観光協会 後藤真司さん:
「一番はやっぱり犬山のファン作りが肝心ですから、1泊で来るより長い間来て、実際に観光に関わっていただいたほうが、ファンになっていただきやすい」

■「住民と観光客が共存できる形を」




 犬山市観光協会は、ゴミ対策として、地元の竹を使ったオリジナルの「串入れ」を作り、各店舗に置いてもらうようにした。“持ちつ持たれつ”の精神で、食べ歩きの串などのゴミを回収している。

犬山市観光協会 後藤真司さん:
「ゴミの問題も一時期すごく話題になりましたけど、(今は)目立って落ちている感じないですよね」


こうした小さな取り組みが、観光と地域の発展を支えている。

犬山市観光協会 後藤真司さん:
「これからもう明らかに日本は人口が減っていきますからね。住む人も大事ですけれども、同じぐらい“交流人口”って言って、来てくれる人がいないと、色んなことが維持できなくなってきますから。住民と観光客が共存できるような形を一生懸命考えていかないといけないと思います」

2024年6月27日放送

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