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同性同士も“いいふうふ”に…パートナーシップ制度で認められた男性カップル 踏み出した平等への第一歩

東海テレビ / 2024年8月4日 21時0分

ニュースONE

 2023年11月、岐阜県のパートナーシップ制度で第一号に認められた男性カップルがいる。2人は、この制度をきっかけに家族や友人らにカミングアウトした。今は、同じ悩みを抱えている人たちに「勇気や希望を与えたい」と、新たな人生を歩み始めている。

■友人ではなく「パートナー」に…次は『家族』になりたい




 岐阜市で共に暮らす、谷村祐樹(たにむら・ゆうき 36)さんと中村文亮(なかむら・ふみあき 36)さん。

中村文亮さん:
「今日掃除してたんですけど、午前中。なんか寝てたんですよ、僕めっちゃ掃除しているのに。『おい!』みたいな」

谷村祐樹さん:
「ちょっと疲れちゃったんですよ。疲れて2階のベットで猫と転がっていたら怒られました。謝りました」


2人は、2018年に青年海外協力隊の職員と参加者として出会った。

中村文亮さん:
「『遊ぼうか』ってなって、2人で会ってそこからですね。ぼくは、その時から『一緒に生きていけたらいいな』と思っていたので」


全国で広がり、岐阜県でも2023年9月に始まった「パートナーシップ宣誓制度」。2人は、その第一号として認められ、9月1日、岐阜県庁で宣誓書受領証が交付された。

2人は「友人」ではなく、人生を共に歩むことを決めた「パートナー」だ。


互いを「家族同等」の存在として、公営住宅の入居が認められるほか、パートナーを医療機関からの緊急連絡先に指定することなどができる。

中村文亮さん:
「一緒に住もうってなったときに、家探しが苦労したし」

谷村祐樹さん:
「家が見つからなかったらどうしようとか、不安を抱えながらの家探しではあったので、すごくハードルが高かったです」


ただ、2人は「家族」として認められているわけではない。

■「同性同士の結婚」が認められない憲法の壁




 日本国憲法24条1項には、「婚姻は両性の合意のみに基いて成立」と書かれている。“同性同士の結婚”が認められない壁の1つだ。


認定制度がなければ、事実上の「家族として」生きていくことを選んでも、パートナーが手術する際の同意や、病状の説明を受けられない。亡くなった場合の相続も原則認められないなど、様々な不利益がある。


パートナーシップ制度認定前の2人も、不安に駆られたことがある。

ある時、中村さんが深夜になっても帰宅せず、LINEの既読もつかずに連絡がとれない時があった。谷村さんは「死んだと思った」という。

谷村祐樹さん:
「12時すぎてもLINEに既読がつかなくて、どこ行っちゃったんだろうなと思って。帰ってきたら、『同僚とすごい話込んじゃっていた』みたいなことを言ってて。連絡くれればいいのにと思ったことあります」

中村文亮さん:
「『死んだかと思った』と言ってた」

“帰りが遅い”ということだけにみえるが、「家族」として認められていないことが、「もしかしたら」という不安を膨らませていたという。


法を巡る判断は分かれている。2023年11月現在、同性カップルが全国5カ所で起こした集団訴訟の1審判決では、「憲法違反」が2件、「違憲状態」が2件、「合憲」が1件だ。


このうち、憲法違反とした名古屋地裁の判決では、「同性愛者を婚姻制度から排除することで大きな格差を生じさせ、何ら手当てがなされておらず、もはや無視できない状況」だと、強い言葉で指摘した。


ただ、同性愛への理解は進んでも、法律で「同性婚」が認められたわけではない。

■パートナー制度が破ってくれた「自分の中の壁」




 2人は、“同じ性別の人を好きになった”だけで、悩み続けてきた。

谷村祐樹さん:
「僕らはそもそも結婚したくてもできないので、選択肢がそもそも与えられていない状態の中で生きているので。結婚することもできるっていう選択肢があるだけで、基本的な人権をやっと尊重してもらえる立場になれる。『ホモ』とか『おかま』とか、悪口を言われて、笑われる対象になっているのをすごく見てきたので、この世にいてはいけない人間なんじゃないかと悩んだこともすごいあった。『これは言ってはいけないことなんだ』とずっと思って生きてきた」


周囲の同性愛者への偏見を恐れ、当事者である自分を隠す日々。しかし、パートナーシップ宣誓を機にカミングアウトしたことで、意外な反応を目の当たりにした。

フェイスブックなどにSNSに寄せられた、好意的な反響だ。


谷村祐樹さん:
「いい意味でポジティブな反響がすごい大きかったです。家族や友人にも広くお伝えしたんですけど、すごく皆さんからお祝いをして頂けて、祝福の言葉をたくさんいただいて。人生のターニングポイントというか、変わるきっかけになった制度でもあるかな」

中村文亮さん:
「自分たちの中にも壁があったのかなと思いましたね。差別されるんじゃないかとか。時代の流れを感じた」


パートナーとして認められたことが、2人に自信を与えてくれた。

■“可哀そうな人たち”じゃない




 2023年11月10日、松坂屋名古屋店で「私たちだって“いいふうふ”になりたい展」が開かれた。


性別を限定しない愛の形を、平等に求める展示会だ。


2人は、それぞれに宛てたメッセージを、写真ととともに展示した。展示を通して、同じ悩みを持つ人たちに“自分たちのような生き方もある”と知ってもらいたいと考えた。

谷村祐樹さん:
「どんな人でもそこに当てはまっていけるように、漢字(夫婦)じゃなくて、ひらがな(ふうふ)で表現してくださっていると思うんです。お互いが、大切に思い合ってる2人が、誰もが『ふうふ』になっていけるようになっていったらいいなと思います」

中村文亮さん:
「ひと昔前だと“可哀そうな人たち”っていうイメージがあったと思うんです、誰の中にも。でもそうじゃなくて、マイノリティでもこれだけ幸せな人たちがいて、決して可哀そうな存在じゃなくて。その幸せというのが武器になっていく時代になりつつあるんじゃないかなとすごく感じていて、それを見た人も感じて欲しいなと思います」


同性婚の権利を声高に求めるのではなく、ただ自分たちも、“胸を張って好きな人との人生を歩んでいきたい”という思いが詰まっていた。

■「勇気や希望を持ってもらえたら」差別でも壊れない絆で…




 名古屋市中村区のホテルで2023年11月、2人はブライダル会社主催のSNS企画で、ウエディングフォトの撮影に臨んだ。


これまではブライダル業界に連絡することをためらっていたが、今では違う。


法律上は認められなくても、友人に見守られながら、互いを想う「ふうふ」の絆を確かめた。


谷村祐樹さん:
「(手紙を朗読)あきくんへ、9月1日の岐阜県パートナーシップ宣誓の第一号を機に、2人の人生がさらに大きく動きはじめたね」


中村文亮さん:
「(手紙を朗読)君と見つけた未来の中に、どんな差別にも壊れない、生きるに値する瞬間があるって信じている。これからも一緒に僕と歩いていきましょう」


中村文亮さん:
「『こういう生き方があるんだよ』というのを知ってほしいなっていうのはすごくあった」

谷村祐樹さん:
「今も辛い思いをしている人たちがたくさんいると思うんですけど、僕らは今日こういう日を迎えることが出来て、すごく生きててよかったなと思えたし、すごく幸せな気持ちになれたので。自分たちの存在でおこがましいですけど、勇気とか希望とかを持ってもらえるような人たちがいたら、僕たちもうれしい」


性別ではなく、互いを思う気持ちが、その2人を「ふうふ」にする。

2023年11月17日放送

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