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戦没者の遺骨を米軍基地の埋め立てに…沖縄で42年間“骨を掘る男”の活動を基地問題が翻弄「冒涜は許さない」

東海テレビ / 2024年8月18日 12時35分

ニュースONE

 終戦から79年、激戦地となった沖縄で、犠牲となった人々の遺骨を40年以上掘り続けている男性がいる。戦没者の尊厳を守るためのその活動が、いま、沖縄の基地問題に翻弄されている。

■沖縄で「戦没者の遺骨」を掘り続ける男性




 沖縄県民の具志堅隆松(ぐしけん・たかまつ 70)さんはこの日、糸満市で木や枝をかき分けながら進み、辿り着いたのは「ガマ」と呼ばれる自然壕だ。


具志堅さん:
「これ砲弾。砲弾が地面に直立に突き刺さっている」


太平洋戦争末期、ここで日本兵が身を潜めていた。


具志堅さん:
「手前の方の下から、おひとり掘り出しました。その方は状況からみて、小銃を自分の喉につきあてて、右の靴をぬいで足の親指で引き金をひいて自決なさっている」


具志堅さんはこの場所をスコップでひたすら掘って「戦没者の遺骨」を探している。

■活動の目的は「二度と戦争を起こさせない」こと


 

 沖縄では凄惨な地上戦が行われ、20万656人が命を落としたとされる。特にこの南部は戦闘が激しく、至る所にその傷痕が残っている。


具志堅さんは遺骨や遺留品から当時の状況に思いを巡らせ、戦没者の尊厳を懸命に守ろうとしている。撮影開始から5年をかけ、2024年6月から上映が始まったドキュメンタリー映画「骨を掘る男」には、その活動が丁寧に描かれている。

具志堅さん:
「遺骨収集をやる目的は?と言われたら、『家族に返したい』なんですけども、最終的な目的はというと『二度と戦争を起こさせない』だと思っているんです。それが、戦没者に対する最大の供養になると思っていて」


映画の中で、活動について「行動する慰霊」と話している。

具志堅さん:
「『行動する慰霊』っていうのは、死者に近づくっていうんですか。要するに見つかる、見つからないじゃなくて、近づこうとする姿勢が供養のひとつというか」

ボーイスカウトからの要請で、28歳の時に遺骨収集を始めた。医療機器の修理業を営みながら、ボランティアで活動を続け、現在70歳、これまでに400柱(はしら)もの遺骨を掘り起こしてきた。


具志堅さん:
Q続けてこられたモチベーションは
「やめようと思わなかったから。(戦没者遺族は)本当は遺骨に、本人に帰ってきてほしいって。帰ってきてほしいとはみんな言います」

■「戦友への裏切りだ」…国が戦没者が眠る土を“基地の埋め立て”使う計画




 沖縄の土には今も家族のもとに帰れない、多くの魂が眠っている。しかし、沖縄が抱える問題が、具志堅さんの活動を阻もうとしている。


政府が米軍普天間基地の移設先として決めた名護市辺野古は、飛行場の建設のため、2018年に埋め立て工事が始まった。

しかし、大浦湾側に軟弱地盤があることから、当初の計画以上の土砂が必要となり、未だ戦没者が多く眠る「沖縄南部」の土砂を使用する計画が持ち上がった。


県は工事を認めなかったが、県に代わって国が計画を認める「代執行」を行う異例の事態に発展した。

具志堅さん:
「辺野古の基地の建設に賛成、反対以前の問題として、人道上の問題として戦没者の尊厳を傷つけるようなことはやめてくれって。戦争で犠牲になった人たちが、国によって今度は海に捨てられようとしているわけですよ。これを防衛省が言い出したのが信じられなくて、これは戦友への裏切りですよ、遺族と国民への裏切りですよ」

2024年6月16日に行われた沖縄県議選では「辺野古移設反対」の玉城知事を支える与党が大敗し、議席が過半数を割り込む結果となり、防衛省は8月1日以降、軟弱地盤の工事に本格着手すると県に通告した。 

具志堅さんが採取した、沖縄南部の土を見せてもらった。


目立った遺骨や遺留品はすでに取り除いたというが、小さな骨が、次から次へと見つかった。


土の採掘業者は「遺骨が見つかれば工事を一時中断する」としているが、小さな骨を判別するのは困難だ。

具志堅さん:
「こういった小さい微細な遺骨は、現場安置って考え方で、そこを慰霊と平和を考える霊域として保全したい」


戦没者の骨を、米軍基地の埋め立てに利用する。「そんな冒涜は許さない」と具志堅さんは訴え続けている。

■沖縄を「平和の島として訴えたい」…隣り合わせの「脅威」が続く現実も




 しかし、沖縄は今もなお「脅威」と隣り合わせだ。2024年5月には北朝鮮の弾道ミサイル発射とともにJアラートの警報音が鳴り響いた。相次ぐ発射に、航空自衛隊の迎撃ミサイルPAC3が配備されるなど、沖縄に「戦争」の二文字が再び近づこうとしている。


具志堅さん:
「正直とても混乱するんですよ。というのは私が生きている間に、再び戦争の話なんて出てくることないだろうと思っていたんですよ。ですから戦争の発火点は沖縄。『戦争になるようなことはやめてくれ』って国民が声を上げるっていう運動を作っていかないといけなくなったんだなと感じています」


具志堅さんは平和を願い、埋もれた「声」に耳を傾け続ける。


具志堅さん:
「戦場になったら我々が新たな戦没者になってしまう。沖縄を平和の島として、もう戦争を拒否する島として訴えたい」

2024年6月21日放送

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