“学童のよっちゃん”がパリへ…義足のスプリンター・大島健吾 新たな武器で再びパラリンピックメダルに挑む
東海テレビ / 2024年9月6日 16時0分
パリパラリンピックの陸上に、愛知県瀬戸市出身の大島健吾選手が出場している。9月2日に行われた男子100メートルは予選で敗退したが、7日夜の男子200メートル予選(決勝は8日未明)にも出場する。3年前の東京パラではリレーで銅メダルを獲得したが、パリでのメダルを目指し、「武器」となる義足の改良をギリギリのタイミングまで続けてきた。
■東京パラではリレーで銅…「義足のスプリンター」大島健吾
8月16日、瀬戸市の学童保育で行われた“夏祭り”に大島健吾選手の姿があった。
大学時代からここでアルバイトをしていて、「よっちゃん」の愛称で親しまれている。パリパラリンピックを前に、子供たちから「もぐらたたき」で手荒い激励を受けていた。
アジア最速の「義足のスプリンター」。大島選手は2000年元日、三つ子の長男として生まれた。
生まれた時から、左足は足首から先がなかった。
運命を変えたのが、競技用義足との出会いだ。高校卒業後に本格的に陸上を始め、わずか3年半で東京パラリンピックに出場し、リレーでは銅メダルを獲得した。
この時は、銅メダルを学童保育に持ち帰り、子供たちの首にかけて回った。
■パリへ向け義足の改良に取り組むもタイムに結びつかず…
大島健吾選手:
「人間の限界プラス、道具のアシストもあるので、もっと義足が進化していったりとか、使いこなす技術が進化していったらどんどん速くなっていって、『義足だからこんなに速く走れるんだな』っていうようなスポーツになってほしいと思っていて。自分もそういうような選手になりたいと思っている」
東京からパリへ向けて、大島選手は義足のさらなる改良に取り組んだ。
海外選手を真似て、よりバネを大きくし、スピードアップを図ろうとしていた。
大島健吾:
「今回のこの義足は、進むバネがついているイメージが強い」
2023年4月の日本パラ陸上には新しい義足で臨んだが、記録は自己ベストに遠く及ばない11秒67で、2着に終わった。
義足を作っても作っても、タイムに結びつかず、原点に帰ろうと昔の義足を試してみるが感覚の違いから、歩くこともままならない。
大学時代の同級生:
「今までは『新しいのを履いたらどれだけ速くなれるんだろう』ってワクワクがあったけど、今はそれが全く感じられんって言っていました」
世界と戦うための「義足選び」は、なかなか答えが見つからなかった。
■世界パラでパラリンピックの出場権獲得も貪欲に義足の改良目指す
悩める大島選手の心の支えとなったのが、学童保育の子供たちだった。
大島選手:
「だいぶ助かっていますね。自分の中で義足がうまくいかない、陸上がうまくいかない中で、ここにいる間はそれから離れられる感じがあるので」
子供たちから勇気をもらった大島選手は2023年10月のアジア大会で、11秒27のアジア新記録で優勝。きっかけは、やはり義足だった。
大島選手:
「義足も調整して体も変えているけど、でも結局自分の足にとってうまくいかないよねっていうものがあって、そこからもう訳がわからなくなっちゃって、自分の良かったときに一回戻してみようっていう調整で、やっぱりここが良いっていうものを再認識できた」
大島選手は本来の走りを取り戻し、2024年5月の世界パラ陸上では、200メートルで銀メダル。パラリンピックの内定を勝ち取った。
しかしこの時、ようやくいい方向に向かった義足を、あえてもう一度見直そうとしていた。
パラリンピックを約2カ月後に控えた7月、大島選手は義足作りを依頼している茨城県水戸市の義肢装具士のもとを訪ねた。
求めているのは、膝を曲げてもバネが邪魔にならない義足だ。さらなる進化を求めて、ギリギリまで様々なタイプの板バネを試す。
大島選手:
「ギャンブルですからね、分からないことを想定してどうなるか。いま東京のときに戻してぐちゃぐちゃになっちゃうかもしれないとも思うし、新しいものを試して全くダメだってなるかもしれんし」
■直前まで選び抜いた武器でパリへ
8月になって、パリで戦うための義足がようやく出来上がった。板バネのアーチが下に下がり、アーチを取り付ける位置も3センチ下げた。
大島選手:
「同じように見えて全然違って。走っている感覚も違うんですよ」
以前よりも膝が曲げやすくなり、バネの反発力を、より前に進む力に変えることができるようになったという。
大島選手:
「まだまだ義足のやりようはあるなって、全く違うものになったからこそ思った。今はこれがベストだと思うし、全部僕の中で考えられる手は尽くした義足で行こうと決めているので」
悩みに悩み抜いて出した「答え」。今できる最高の走りをするために新たな武器でパリに挑む。
大島選手:
「できるかできないかとかっていうものよりも、やるって決めて、そこまでにどうにかして何とかするっていう、そこまでの過程をとにかく楽しみたい人間なんだろうなって思って。だからしっかり食らいついて勝負できるよっていうのをやっぱり、したい。それがしっかりできるように練習を積んで、それをバンってぶつけに行きたいなと思いますね」
大島選手はパラリンピックで、9月2日未明の男子100メートルでは敗退したが、7日夜の男子200メートル予選(決勝は8日未明)にも出場する。
2024年8月22日放送
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