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"可愛い義足”でメダルを…陸上と絵本作家の二刀流・前川楓がパリパラへ 苦しみ変えたトップ選手との2カ月

東海テレビ / 2024年9月5日 22時5分

ニュースONE

 パリパラリンピックで走り幅跳びと100メートルに出場する三重県津市出身の前川楓(まえがわ・かえで)選手は、陸上選手でありながら絵本作家でもある「二刀流」です。

10代の時、事故で右の太腿から下を失い、「義足はかわいい!」を合言葉にパリでメダルを狙いますが、初めて出場したリオパラリンピック後は、陸上との向き合い方に、心を病むほど苦しみました。苦しみから救ったのは、イタリア修行で共に時間を過ごしたトップ選手の言葉でした。

■絵本作家との二刀流…ファッションショーにも出演する前川楓選手




 パリパラリンピックで走り幅跳びと100メートルに出場する前川楓選手(T63 片大腿義足)は、三重県津市出身の26歳で、練習の合間には大好きな絵を描く絵本作家でもあります。


【前川選手の作品「くうちゃん いってらっしゃい 作・絵 まえがわかえで」】

くうちゃんは ぎそくを はきます

あしを いれて


ぐっぐっ ぷしゅ ぷしゅ はけた はけた


前川選手の義足には、「くうちゃん」のシールが貼られていました。

前川楓選手:
「パリはまたシール変えようかなって思っていて」


合言葉は「義足はかわいい!」。ファッションショーにも出演するアスリートです。


8月21日、大阪で会った時には、髪の色がパラリンピックのシンボルマーク「スリーアギトス」の赤・青・緑になっていました。

多い日は1日6時間程練習する前川選手。パリは3度目のパラリンピックで、自己ベストを超える5メートルを飛んで、メダルを目指します。


前川選手:
「最近めっちゃ踏めるようなってきて、すごくいいジャンプができるようになってきたんですけど、それが踏めるってことは高く上がるんですよ。その方向が、走り幅跳びって前に跳ぶスポーツなので、自分の足だと微調整できるじゃないですか。でも私たちの場合は膝も義足なので動かせないんですよ。自分でどこに踏んでいるのかみたいなのを、血が通ってるくらいわかるようになるまでならないと結構難しいですね」

■陸上と出会い2年でパラ出場もその後は「死にたいと思う毎日」




 前川選手は2012年、愛犬のくうちゃんの散歩中に事故に遭い、右足の太腿から下を失いました。


前川選手(2016年):
「お母さんがずっと泊まりで病室にいてくれていたんですけど、2人で毎日毎日泣いて。でも『いつか笑える日が来るよ』って毎日励ましあって」

大好きなバンド『SEKAI NO OWARI』のライブでジャンプしたいという夢を叶えるために、前川選手は義足でのリハビリに励むなど、努力を続けていましたが15歳の時、陸上と出会います。


前川選手(2016年):
「(初めて出た大会は)100mがあっという間で『もう終わってしまった』という感じで、しかもすっごい楽しくて。走るのってこんな楽しかったっけって」


陸上を始めてわずか2年で出場したリオパラリンピックでは幅跳びで4位に。しかし、それから苦しい日々が始まりました。


前川選手:
「メダルを取るにはどうしたらいいのかっていうので、やりたいことを全部我慢したりとか、『陸上を人生にしないといけないんだ』ってすごい思っちゃって。完全に心が病んじゃって、本当に死にたいって思う毎日で」

医師と相談しながら陸上を続け、東京パラリンピックでは幅跳びで5位入賞を果たしました。


前川選手:
「心から楽しめたとは言えない。でも楽しんでいる様子は見せたいから、ちょっと楽しんでいる自分を演じていた部分もあった」

■陸上は「人生を豊かにするために」…苦しみから救ったトップ選手の言葉




 東京パラリンピックの後、たったひとりでイタリアへ。同じクラスのトップ、マルティナ・カイローニ選手のもとで約2カ月、ともに練習をしました。そこで大切な経験をしたといいます。


前川選手:
「一緒にご飯食べたりとか、練習したりとか、試合に行ったりとかしている中で、カヌーを漕ぎに行ったんですよ。マルティナが『私にとって陸上はイコール人生ではなくて、人生を豊かにするために、人生を楽しむために陸上をやっているんだ』っていう風に言ってくれて。すごいその言葉が今でも自分の宝物になっている」


人生を楽しむ。前川選手は練習の合間に大好きな絵を描いています。


前川選手:
「幼稚園くらいから描いているんですけど、iPadを買ったのがこの5年くらいですかね。イタリアに行っていた時に、ジェラートが美味しすぎて感動して、Tシャツにしました。本当いろんな国に行って、いろんなものを見て、いろんな人に出会って、本当に自分の世界も視野も広がったなって思います」

■陸上も絵本も“作品作り”…パリでは「これ以上ないくらいの力を出し切る」




 前川選手が描いた絵本、主人公は「義足のくうちゃん」です。


前川選手:
「『わ、何あの変な足』とか『ロボットみたい』とか、その言葉で私は全然傷付かないんですけど、それがもし『見て、くうちゃんと一緒の足や』に変われば、全然受け取る側としては違うなあっていう風に思って」

前川選手に「くうちゃん、パリへ行く」をテーマに描いてもらいました。

絵に集中すると10時間も描いてしまうといいますが、およそ5分後、国旗が服に描かれた、全身でフランスを表現したかわいらしいくうちゃんが描きあがりました。


前川選手:
「やっぱり“走る”っていうことにフォーカスした絵本を出したいなっていう風に思って。足が2本あった時って“走る”って別に特別なことじゃないじゃないですか。でも、義足ってなると結構特別なことになって。“走る”っていうことってすごく大事なことだなって」

走ること、絵を描くこと、人生を楽しむこと。

前川選手:
「どっちも作品作りをしているっていう感覚ですね。絵とかだと描きながら、あ~違うな違うなって言いながら消して描いて、自分の頭の中にある完成形を求めて色々描いていくんですけど、陸上に関しても違う違うって言いながら毎日毎日練習して、その『5mを跳んでいる自分』っていう作品を作るためにやっているような感じ」

前川楓選手、26歳。パリパラリンピックの舞台で最高傑作を描きます。


前川選手:
「目標は、自分がこれ以上出し切れないくらい全部の力を出し切ったって思えるようなパフォーマンスをすることです。私の全力で競技する姿が、何か皆さんの力になればすごくうれしいなと思うので、全力で頑張ってきます」

前川選手は日本時間9月6日の午前2時の走り幅跳びと、7日の午後6時27分からの100メートル予選(決勝は8日午前4時22分)に出場します。

2024年9月4日放送

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