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「火山だから美しい…」死者58人 行方不明者5人の御嶽山噴火から10年 集う人たちがより安全に登れる山へ

東海テレビ / 2024年9月27日 20時55分

ニュースONE

 2014年9月27日に起きた御嶽山噴火から10年を迎えた。より安全に登れるように防災対策がされ、復興はすすんでいるが、山小屋を営む人や犠牲者の友人などは“変わらない思い”を抱き続けていた。噴火から10年の山を辿った。

■長かった“賑わい”までの道のり 噴火にくわえコロナが追い打ちに




 2014年9月27日午前11時52分に発生した御嶽山噴火では、火山灰と無数の噴石が降り注ぎ、登山者を襲った。死者58人・行方不明者5人の、戦後最悪の火山災害だ。


御嶽山の麓・長野県木曽町にある「おんたけロープウェイ」。登山シーズンの9月、週末の朝は行列ができるほどだ。今はにぎわっているが、ここまでには長い道のりがあった。


2014年の噴火当時は、ゴンドラが火山灰にまみれて清掃作業などに追われたため、営業中止を余儀なくされた。


利用者は激減したため、 “映え”を楽しめる「ミラーデッキ」や、景色を楽しめるテラス席といった“山に登れなくても楽しめる”ための試みを続けたが、新型コロナウイルスも追い打ちをかけ、運営会社が撤退することとなった。

2023年からは、新たな会社が運営を引き継ぎ、再スタートを切っている。


登山者:
「やっぱロープウェイあると行きやすい、気持ち的に行こうかなって」

登山者:
「採算あってないと思うけど、登山者にとってはこまっちゃう。こんないいところね」

■子供から高齢者まで登りやすい山




 御嶽山の登山ルートの1つ、長野県王滝村にある「王滝口登山道」は、標高2180mの7合目から登れる人気のルートだ。噴火当日、亡くなった人たちの多くは、ここから山頂へと登っていった。

登山道入口にある大きな岩で記念撮影してから登っていく登山者も多い。


なだらかで、階段やロープが整備されている御嶽山は、子供から高齢者まで人気の山だった。1時間ほど歩くだけでも、遠くの山々が見渡せる景色が楽しめる。


しかし、噴火の影響で登山者は減っている。長野県によると、御嶽山への入山者は、噴火前の2013年には23万7千人に上ったが、2023年は7万7千人で、半分にも回復していないのが現状だ。

それでも、新しい世代の姿も見ることができた。三重県から来た小学5年生の男の子(11)は、色んな山を登る中、御嶽山のことが気になり自ら登りに来たという。


父親:
「(登山が)大好きなんですよ。色々勉強してきてね」

男の子:
「いろんな人が亡くなって。火口とかそういうのが気になったから」

■火山灰にまみれた登山者で混乱した山小屋 今は「命の砦」に




 噴火以降、なによりも進められたのが「防災対策」だ。要所にある避難小屋には、ヘルメットや防寒具などが揃えられたほか、噴石対策のために、防弾チョッキに使われている素材「アラミド繊維」で屋根が補強された。


9合目にある『王滝頂上避難施設』は、もともとは「山小屋」で多くの登山者で賑わった場所だったが、今は「避難施設」に変わっている。


当時は、灰と噴石に襲われ、小屋の中は火山灰にまみれて混乱する登山者であふれた。周辺では、亡くなった人もいた。


安全対策はすすめられたが、噴火口に近いこともあり、宿泊することはできなくなった。今は避難施設として、登山者を守るための「命の砦」へとかわっている。

■賑わい戻った山小屋 それでも「火山であることを忘れないで」




 山頂から1キロほどの場所にある山小屋『二の池ヒュッテ』も、噴火の被害を受けた場所だ。


二の池ヒュッテでは、噴石が屋根を突き破った部屋を今も残していて、希望する客に見せて噴火の恐ろしさを伝えている。オーナーの高岡ゆりさんは「ここを直して、ここにお客さんに泊まってもらう気持ちにはなれない」と話す。


この山小屋は、噴火で被害を受けて休館となっていたが、2018年に高岡さんが引き継いだ。雨漏りを直したり、カビだらけの布団を片付けるなどして、なんとか営業にこぎつけた。

当時は、うまくいかず、「毎日のように泣いていた」という。


山小屋を再び営業してから7年がたった。布団を片付けた2階は、きれいな2段ベッドの部屋となった。ウリにしていたご飯もさらに力を入れ、特製の麺を使った「担々麺」の提供を始めたところ大人気となり、連日行列ができるほどだ。

二の池ヒュッテ 高岡ゆりさん:
「担々麺のおかげもあって、知名度もついたのかなと思って。お客さんは今年は多いですね。ありがたいです」


高岡さんにとって当時から変わらないのは、「火山であることを忘れないでほしい」という思いだ。


二の池ヒュッテ 高岡ゆりさん:
「活火山であるっていうことは変えられないですけれども。火山だから美しいっていう景色があったりもするんですよね。じゃあ御嶽行ってみようかっていうきっかけの一つにうちがなれればいいなと思いますね。人が来てくれないと、やっぱり山が元気にならない」

■噴火から9年で通れるようになった「八丁ダルミ」




 9合目から山頂へと続く「八丁ダルミ」と呼ばれる場所は、噴火から9年たった2023年、シェルターの整備もすすんだことから、やっと通ることができるようになった場所だ。


八丁ダルミは火口から近く、時速300キロほどともいわれる速度で降り注いだ噴石が、逃げ場のない登山者を襲い、多くの命が失われた。


山頂近くでは、10年たった今も、火山灰が残されている。


今も、この周辺では硫化水素のにおいがただよっている。八丁ダルミを抜けると、山頂に到達する。

■今も行方不明の友人へ…「一緒に年をとりたかった」




 標高3067mの山頂「剣ヶ峰(けんがみね)」。


噴火の爪痕が、今でも残っている。


山頂では、記念撮影をしたり、ご飯を食べたりする人の姿があった。


この日は霧がかかって絶景を見ることができなかったが、10年前の噴火があった日は、すみわたった青空の下、同じことを多くの人たちが楽しんでいた。

登山者:
「10年前の噴火の一週間前にここ(山頂)に来た。10年たったんで、どうなってるんだろうって」

別の登山者:
「(当時は)みんな学生だった。怖い気持ちはありますけど、あまり恐れすぎず、ヘルメットとか備えはして」


名古屋市から登山に来ていた女性は、今も行方不明となっている三重県鈴鹿市の伊藤亮介さん(当時39)のために登りにきていた。

女性:
「友達が噴火で、この現場でまだ見つかってない。今年は10年だから、会いに行こうかなと」


女性は伊藤さんと大学の同級生で、まだ見つからない伊藤さんに会うために登山をはじめ、毎年、友人と登っている。


女性:
「まだみんな下なんですけど。大学の時の友達に毎年会うことないと思うけど、今はこうやって登るので毎年会える。こんなことで会えるのは寂しいなという気持ちもある。一緒に年とりたかったなって。みんな年とってるから」


御嶽山はこの10年で、“より安全に登れる山”に変わった。それでも、活火山であることにはかわりない。ヘルメット着用など安全対策をし、最新の情報を確認したうえで登ることが大切だ。

2024年9月26日放送

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