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初来日した“コアラフィーバー”から40年…繁殖成功までの苦闘の日々 故郷・豪州では「絶滅の危機」

東海テレビ / 2024年10月29日 21時16分

ニュースONE

 名古屋市千種区の東山動植物園の人気者「コアラ」は、2024年10月で初来日から40周年を迎えた。当時の飼育員らの努力で繁殖に成功し、日本で飼育される頭数は増えているが、ふるさとのオーストラリアでは、絶滅の危機に瀕している。

■日本中が“フィーバー”に…コアラ初来日から40年




 名古屋市千種区の東山動植物園では2024年10月18日、オーストラリアの関係者を招き、コアラの来園40周年を祝う式典が開かれた。人気動物のランキングでも常に上位に入る人気者で、子供や大人問わず、多くの人々に愛され続けている。


コアラは1984年10月25日、オーストラリアから初めて日本にやってきた。


専用機で名古屋空港に到着すると、パトカーに先導され、東山動植物園に運ばれるという“超VIP”待遇だった。


名古屋にやってきた2頭のコアラは「モクモクと食べコロコロと元気に遊ぶ」との願いを込めて「モクモク」と「コロコロ」と名付けられた。


一般公開が始まると、コアラ舎の前には数時間待ちの長い行列ができた。東山動植物園のほかにも、東京都の多摩動物公園と鹿児島県の平川動物公園でも飼育が始まり、日本中が「コアラフィーバー」に沸き返った。


「コアラ物語」「コアラ音頭」などのレコードが相次いで発売され、店には特設コーナーが作られた。銀行では「コアラ預金」もスタートするなど、人気にあやかった商品が続々と登場した。


レストランには料理を運んでくれる「しゃべるロボット」も登場。


子供たちに大人気となった。

■飼育員が泊まり込みで観察も…コアラ来日2年後に日本で初の繁殖に成功




 東山動植物園の飼育員、佐藤正祐さん(70)は、初めてやってきたコアラの飼育を担当した。

来園当時のコアラの飼育員 佐藤正祐さん:
「日本で初めて飼うということですので、いろんな勉強はしましたけど、来てみないとわからないということでドキドキでしたよね」

佐藤さんは当時3人いたコアラ担当の中で、一番年下だった。


初めての飼育で何もかも手探りだった。来園当初は1カ月以上にわたって、飼育員が交代で泊まり込み、ビデオカメラも設置して24時間体制で行動を見守った。


中でも赤ちゃんの出産には特に神経を使い、母親のわずかな兆候も見逃さないよう行動観察を続けた。

こうした努力が実を結び、1986年4月、雄のコロコロと雌のブルーの間に「ハッピー」が誕生し、日本で初めての繁殖に成功した。


佐藤さん:
「めちゃうれしかったですね、コアラは有袋類ですから、袋の中で赤ちゃんが育ちます。お腹の袋の所が少し動くというのは前々からわかっていたんですけど、実際に袋から顔を出した瞬間というのは何とも言えない感じがありました」

40年経った現在も16台のカメラで24時間録画し、コアラの健康状態や発情のサインをチェックしている。コアラは夜行性で、夜どれぐらい動くかで発情のサインがわかるため、翌日に収録された映像をチェックしているという。


東山動植物園ではこれまでに55頭のコアラが誕生。


2023年10月に生まれた「もなか」も、およそ1年で見た目では大人と変わらないほどに成長した。

■天候や災害でも供給続けられるように…コアラの命支える「ユーカリ」




 コアラには餌となるユーカリが欠かせない。必要なユーカリの大部分は東山動植物園の近くにある、平和公園で栽培している。

平和公園には、およそ4ヘクタールの敷地に1万本のユーカリが植えられている。

コアラの好みや体調に合わせられるよう27種類のユーカリが育てられ、東山動植物園のコアラが一番好きな品種は「プンクタータ」だという。


コアラは水をほとんど飲まず、ユーカリから水分をとる。瑞々しく、柔らかい新芽を好むため一年中、新芽を供給できるように5月から12月は露地で、12月から5月はハウスで育てたものを与えている。


平和公園の他にも、静岡、沖縄、鹿児島でもユーカリを栽培し、天候や災害のリスクに備えている。

ユーカリ栽培の担当者:
「ユーカリってすごく柔らかい木なんですね。成長が早いので、台風とか雪で結構被害が出たりするんです。平和公園だけだと、どうしてもコアラのエサを確保できない、そういう状況にならないように、もし名古屋に何かあった時は静岡の割合を増やすというふうに、毎日コアラにエサを欠かさないようにしています」

■伐採に森林火災…ふるさとでは「絶滅の危機」




 10月25日には新たにオーストラリアのタロンガ動物園からやってきたオスのコアラ「スカイ」の一般公開が始まった。


しかし、ふるさとのオーストラリアではコアラが「絶滅の危機」に瀕している。かつて数百万頭いたとされるコアラは毛皮を目的とした狩猟や、開発による伐採、感染症などが原因で減少を続けた。

2019年から2020年にかけて大規模な森林火災が発生して、多くのコアラが犠牲となり、現在は30万頭以下ともいわれている。


コアラなどのオーストラリアの動物を救うため、2020年2月には東山動植物園でも募金活動を行った。


2022年、コアラはオーストラリアで絶滅危惧種に指定された。日本でも年に一度開かれる「コアラ会議」で、全国の飼育担当者が情報交換をしたり、国内だけで繁殖できるよう動物園の間でコアラをレンタルするなどの取り組みを進めている。


東山動物園の細江航園長:
「コアラは東山を象徴する人気動物です。さらにはシドニー・タロンガ動物園との友好の証の象徴ではないかなと思っていますので、飼育や繁殖などを通じて、コアラ飼育のけん引役としての役割をしっかり我々は果たしていかないといけないと思っています」

■“絶滅危惧種”コアラを守れ! 日本でも支援




 日本でもコアラの保護活動への支援が呼びかけられている。ロッテの「コアラのマーチ」は1984年3月に発売され、コアラと同じく40周年を迎えた。

ロッテは1994年から支援を続けていて、コアラのマーチのパッケージには「オーストラリア コアラ基金」のマークが描かれている。


「オーストラリア コアラ基金」は絶滅の危機に瀕するコアラの保護や研究に取り組んでいるNGO団体で、日本でも里親を募集するなど、支援を呼び掛けている。

2024年10月21日放送

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