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雑居ビルの銭湯にも…“日本一のシャッター商店街” 復活への切り札は『廃墟ツアー』で逆手に取った町おこし

東海テレビ / 2024年11月7日 21時17分

ニュースONE

 かつて全国屈指の規模を誇っていた岐阜県岐阜市の柳ケ瀬商店街は2024年7月、「高島屋」が撤退するなど、衰退の一途をたどっている。「日本一のシャッター商店街」とも呼ばれる中、逆境を逆手にとった「廃墟ツアー」など、新たな戦略で巻き返しを図ろうとしている。

■営業するのは全盛期の1割…不名誉な“日本一”のスタープレイス柳ケ瀬商店街




 岐阜県岐阜市の柳ケ瀬商店街は戦後、市が繊維の一大産地になるとともに発展してきた。現在は8つの商店街から構成され、古き良き昭和の雰囲気を残しているが、いま、苦境に立たされている。

「スタープレイス柳ケ瀬商店街」は柳ケ瀬商店街の中でも、飲食店が立ち並ぶ「西柳ケ瀬」にあり、夜の歓楽街としてにぎわっていたが、近年はどの店もシャッターが下りたままで、通りに人影はほとんどない。


全盛期にはおよそ300メートルの商店街におよそ250の店が営業していたが、2024年に営業しているのは30店ほどに減少し、「日本一のシャッター商店街」とも呼ばれるようになった。


2024年10月時点で、営業している店は全盛期のわずか1割しかない。西柳ケ瀬でうなぎ店を営む小澤達雄さんは、スタープレイス柳ケ瀬商店街の理事長として、復活に向けたプロジェクトを進めていた。

スタープレイス柳ケ瀬商店街の小澤達雄理事長:
「今後、先を見据えてどうしてやっていこうかと頭を悩ませていまして、さびれた西柳ケ瀬を何とか元気つけたい」

■賑わう昭和の「柳ケ瀬」…その後は百貨店も続々撤退




 昭和30年代から40年代にかけ、柳ケ瀬商店街は全国にその名を知られる存在だった。昭和41年(1966年)には美川憲一さんの「柳ケ瀬ブルース」が大ヒットし、すれ違う人が肩と肩をぶつけないと歩けないほど、賑わっていたという。


中でもスナックやキャバレーが多かった西柳ケ瀬は「夜の歓楽街」として、サラリーマンや観光客の人気を集めていた。

小澤理事長:
「テナントのビルも全部埋まっていましたし、昭和の時代はまだホテルからのお客さんとか、観光客が浴衣着ながらここを徘徊するような。昭和風情というものがまだありまして、楽しかったですね」


しかし、柳ケ瀬の繁栄を支えていた繊維産業の衰退とともに商店街の活気も失われ、1999年に岐阜近鉄百貨店、2002年には長崎屋が次々と閉店した。

そして、2024年7月には岐阜高島屋も47年の歴史に幕を下ろし、大型商業施設はすべて柳ケ瀬から姿を消したこともあり、客足はさらに遠のきつつある。


西柳ケ瀬の商店街のアーケードには、バブル期の面影を残すネオンが残されているが、テナントの減少に加え、電気代の高騰やコロナ禍の外出自粛も重なり、ここ数年はずっと消えたままだ。

■夜の歓楽街復活へ…切り札は“廃墟ツアー”




 西柳ケ瀬に再びネオンの灯をともそうと、商店街の小澤さんら有志が立ち上がった。ディープな商店街であることをアピールしようと「奥柳ケ瀬」という新たなワードを生み出した。

小澤理事長:
「独特な商店街なので、ちょっと“奥柳(おくやな)”という名称を使ってですね、何かやらないかと。『それいいですね』ということで」


9月に行われたイベントは「奥柳ケ瀬夜市」と名付けられ、キッチンカーやご当地アイドルのステージなどに人だかりができていた。開催費用の一部はクラウドファンディングで募集し、目標の100万円を超える122万円が集まった。


「奥柳ケ瀬」の名をアピールしようと行われたのが、「日本一のシャッター商店街」を逆手にとった“廃墟ツアー”だ。


廃墟となったビルのシャッターを開け、スナックや銭湯があった跡を、懐中電灯の明かりを頼りに進んでいく。


狭い入口をくぐりぬけ、銭湯の裏側に潜入すると、大きなボイラーが残されたままだった。


「廃墟ツアー」は、岐阜のまちおこしを目指す会社「カンダまちおこし」の代表、田代達生さん(48)が企画した。西柳ケ瀬には懐かしい昭和の味わいを残す、雑居ビルや細い路地が多く残されていて、観光資源としての魅力があるという。

「カンダまちおこし」の代表 田代達生さん:
「この建物の裏側なんか見ていただくと、かなり朽ち始めていて、今見ておかないとこれは見納めかなという風景があるので、だからこそ今見ておきたい。記憶に焼き付けておきたいものじゃないかなと思って」


「昭和の遺産」が満載の、自虐的ともいえる廃墟ツアーだが、資金不足に悩む商店街にもメリットがある。

田代さん:
「この廃墟ツアーはお金がかからずできちゃうので。今あるものそのままが観光資源になりますので、初期投資0円でツアーが組めるというのも1つのあり方だと思って、今の柳ケ瀬においては、結構合ってるんじゃないかと思っています」


廃墟ツアーには40人が参加し、閉店したキャバレーではミラーボールやタバコの吸い殻が残されたままの灰皿など、当時のままの姿を思い思いに探索した。


ツアーのしめくくりには、“バブルの置き土産”アーケードのネオンが点灯された。一夜限りの復活だが、ピンクや青、緑と怪しげに光るネオンは、参加した若者に新鮮に映ったようだ。


参加した女性:
「ネオンが気になって申し込みました。時が止まっているような、昔ながらの雰囲気を一緒に楽しめた」

参加した男性:
「全国的にもここしかないみたいな光り方してるみたいなので、本当に貴重な物を見られてうれしいです」


小澤理事長:
「感激しました。コロナ以降全く点灯していなかったので感慨深いです。この町は何かある、怪しい感じがするけど、楽しい町やなというのを思って頂けたらありがたいですね」

■全身タイツ姿で歩くイベントも…「柳ケ瀬商店街」復活への様々な取り組み




 西柳ケ瀬だけでなく、柳ケ瀬商店街全体でも再生に向けた取り組みが進んでいる。

10月20日から12月15日まで行われる「柳ケ瀬日常ニナーレ」では、全身タイツを着てみんなで街を歩いたり、名物の“あゆ菓子”の食べ比べなど、個性豊かなプログラムを楽しむことができる。


2024年で3回目を迎え、次々と新たな企画が生まれていて、その1つが予算1000円で楽しめる「はしご酒ツアー」。昔ながらの人情あふれる「こころと財布に優しい」ツアーだ。

「はしご酒ツアー」の準備として、柳ケ瀬の住人が勧める飲食店マップの作成も進められていた。


はしご酒ツアーを企画した女性:
「自分にとって居心地のいいお店が見つけられれば、ものすごくラッキーなことですし、『参加してよかった』『行って面白かった』という声が、柳ケ瀬に来てくださる方から聞こえてくるといいと思っています」

もう「シャッター商店街」とは言わせない、柳ケ瀬ならではの魅力を武器に、復活に向けた逆襲が始まった。

2024年9月24日放送

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