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「妻の死を無駄にしない」殺害現場のアパートを25年間借り続ける夫 新たな“DNA捜査” 期待もハードル 未解決の主婦殺害事件 名古屋

東海テレビ / 2024年11月26日 21時0分

ニュースONE

 1999年に名古屋市西区で高羽奈美子(当時32)さんが殺害された事件は、2024年11月13日、未解決のまま25年を迎えた。妻を失った夫の悟さんは事件から25年間、犯人の血痕と足跡が残る現場のアパートを借り続け、逮捕の手掛かりを残している。

「妻の死を無駄にしない」という思いで今、新たなDNA捜査などに期待を寄せ、活動を続けている。

■犯行は当時2歳の息子の目の前で…25年たっても現場は当時のままに




 高羽悟(たかば・さとる 68)さんは、事件現場となった名古屋市西区のアパートを、今も借り続けている。


玄関には、当時の血痕と足跡が残されたままだ。

高羽悟さん:
「ここの下に犯人の血痕というか血がありますので。ここが24センチ。靴の向きがあっちこっちしていますので。これだけの血が落ちているケガなので。縫わないと止血できないくらいの深い傷じゃないかと」


事件が起きたのは、結婚5年目、長男の航平さんにも恵まれ、まさに幸せの絶頂だったその時だった。


1999年11月13日、家族3人が暮らしていたアパートで、高羽さんの妻・奈美子(なみこ 当時32)さんが首などを刺され、死亡しているのが見つかった。犯行は、当時2歳だった航平さんの目の前で行われたとみられている。


高羽悟さん:
「倒れていたのは、ここからうつ伏せで。ひざから下が廊下に投げ出されるかたちで」

料理が好きだった奈美子さんは、「子どもにおいしいものを食べさせたい」と頑張っていたという。


アパートの1室は、当時と変わっていない。未解決事件の現場だ。


高羽悟さん:
「家賃は(2024年)11月分で2188万円になりまして。25年長いですね。(Q残しておけば、また“ひょっとすると”という思いに?)もちろん、それを励みに」

■遺族が抱える問題の解決を…殺人罪等の時効撤廃も成し遂げる




 高羽さんは犯罪被害者の遺族として、殺人事件の被害者遺族の会「宙(そら)の会」に参加し、遺族の抱える問題をともに解決しようと活動してきた。

2010年には、署名活動や国への働きかけが実を結び、刑事訴訟法が改正され殺人罪などの時効が撤廃された。

高羽悟さん(2010年):
「本当にやったぞと。時効を撤廃したことによって、(犯人は)随分がっかりしてくれたのではないか」


「宙の会」の代表幹事を務めている高羽さんは、同じ愛知県で起きた未解決事件「豊明母子放火殺人事件」の情報提供を求める活動に協力していて、毎年、チラシ配りに参加している。


高羽悟さん(2024年9月):
「(未解決事件遺族は)同じ仲間だと思っていますので。僕としては手伝いにいったんだけど、そこの遺族や警察から元気もらって帰るような部分もありますから」

■「殺されたうえで夢を失わないといけないのか」




 高羽さんと「宙の会」はいま、『代執行制度の実現』と『DNA捜査の法制化』を訴えている。

『代執行制度』は、民事裁判で殺人事件の被害者遺族が加害者に損害賠償を請求し、判決確定後、加害者が支払うべき賠償金を国が一旦、遺族に建て替えた上、加害者に支払いを求めていく制度だ。


実際は、加害者が損害賠償を踏み倒すケースも珍しくない。日本弁護士連合会によると、被害者側が受け取った賠償金は、裁判などで認められた額のうち、殺人事件で13.3%、強盗殺人事件では1.2%に留まっている。


高羽悟さん:
「例えば確定判決で1億という判決がでたなら、一旦、1億のお金を被害者に払えば、国が求償権を持ちますので、国が責任をもって犯人に求償する。刑務作業費から1000円でも2000円でもいい。“刑期を全うすれば償った”ではなくて、刑期を務めても毎月ひかれるて、そこで経済的に補填して、やっと償いですよということを感じてもらわないといけない」


「宙の会」の活動で高羽さんが目の当たりにしてきたのは“被害者遺族の経済的負担”だ。加害者に支払い能力がないケースも少なくないが、賠償金の支払いを通しても罪を償って欲しいと考えている。


高羽悟さん:
「遺族が前向きになれると思うんですよね、一旦でも生活費が入れば。それが何をするのも我慢する。それは“お父さんが殺されたからだよ”って。“希望の大学に行きたい”、“そんなお金はないよ”って。なんで殺されたうえで色々な夢を失わないといけないのか。その辺がおかしい」

■捜査を飛躍的に進めるために…求める「DNA捜査の法制化」




 事件の発生からちょうど25年の2024年11月13日、高羽さんは、名古屋市西区の商業施設で犯人の似顔絵入りのチラシを配り、情報提供を呼びかけた。


2024年10月には、捜査の進展を期待し、若手の捜査員に現場の自宅を案内した。犯人逮捕につながる手掛かりを求め、動き続けている。

高羽悟さん:
「これが犯人の血でしょうと判明して、当時の担当の刑事さんに聞いたらそのとおりだと」


そんな高羽さんが今、期待を寄せているのが「DNA」だ。

高羽さん:
「(DNAは)究極の個人情報ですから、扱いは慎重にしないといけないとは重々わかるんですけど。被害者としては、少しでも活用してもらって、1件でも2件でも犯人が捕まればいいなと思うんですけど、なかなか難しいですよね」

現在も、警察の捜査で「DNA型鑑定」が活用されている。身体的特徴や病気に関する情報を含まない部分のDNA型の特徴を分析し、個人を高い精度で“識別”する。


高羽さんら「宙の会」は、“識別”だけでなく、最新技術を活用して、DNAから『年齢幅』や『病歴』などを導き出し、捜査に活用できるような法整備を求めている。

しかし、遺伝情報は究極の個人情報のため、慎重な扱いが不可欠で、非常にハードルが高いと言える。


高羽悟さん:
「抑止力になると思うんですけどね。少しずつでも生きている間に目途がつけられるようにやっていきたい。そういう意味では、奈美子の供養になるというか、そういうことはパワーになるというか。なんとか死ぬまで、奈美子の死が無駄にならないようにやっていきたい」

■“被害者遺族だからこそやれること” 歩み続けた家族の25年




 当時2歳で事件を目の当たりにした長男の航平さんは、24年11月に結婚した。相手の咲月(さつき)さんは、偶然にも、母・奈美子さんの親友の娘だった。


高羽悟さん:
「(事件から)24年も26年も自分の中では変わらなくて。2歳の子供を育てながらの25年ですから。奈美子とは血がつながっていなくて、本当の遺族は航平じゃないかと思った。航平から大人になったときに『お父さん、なんで一生懸命、犯人捜ししてくれなかったんだ』と言われたら、親として恥だと思って、そういうことがないようにやってきて。今回結婚で、やっと航平に対して責任がとれたのかなと」


事件の現場は時間が止まったままだが、高羽さん家族はこの25年間、前に向かって歩み続けてきた。

高羽悟さん:
「DNAだとか代執行制度は、被害者が訴えていかないと真実味がないし。被害者遺族だからやれるんですよね。私たちは遺族会に出て、泣いたり笑ったり怒ったりして色々な議論というか話をしてきて、その時その時でベストな選択してきたつもり。事件が解決しないと一区切りがつかないので、なんとかそれを生きている間にやりたいと思います」


2024年11月15日放送

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