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再犯者のうち約7割が無職…刑務所を出た人たちに必要な『居場所』過去の罪と向き合わせる更生支援など模索続く

東海テレビ / 2025年1月26日 21時0分

ニュースONE

 刑務所を出た後に罪を犯してしまう「再犯」の割合が半数近くに上っている。再犯者のうち、およそ7割が“無職”で、仕事などの居場所作りが必要不可欠だ。刑務所と民間企業が連携するなど、地道な更生支援が模索されている。

■半数近くが「再犯」の現状…仕事等の“居場所”を作る取り組み




 三重県津市にある三重刑務所で、企業が出向いて服役している受刑者に声をかける就職説明会が開かれた。

日本財団による「職親(しょくしん)プロジェクト」と呼ばれる社会復帰支援の一環で、建設会社など、地元の企業4社が参加した。採用したら、出所後すぐに、仕事と住まいを提供することになる。


職親プロジェクトは2013年に大阪府で始まり、三重県でも2024年3月に支部が立ち上がるなど、各地で広まっている。取り組みの一番の狙いが「再犯防止」だ。



男性受刑者:
「僕は殺人未遂と放火などの経験があるんですが、なかなか就職できなくて困ってるんですよ」


三重刑務所の井上済所長:
「出所後に仕事や住居がない、社会に居場所がない者の再犯率が、非常に高い現状があります」


日本で罪を犯して検挙された人のうち、半数近くが犯罪を繰り返している。さらに、再犯者のうち、無職だった人がおよそ7割で、再犯は“社会からの孤立”が原因だと言われている。

受刑者(50代):
「(仕事の重要性は)一番は生活じゃないですかね。何もなければ収入もないですし」

受刑者(30代):
「仕事が無いと再犯しちゃうのかなって不安もある」


再犯を防ぐには、「居場所づくり」も不可欠とされている。

■3人の受刑者受け入れる建設会社 社長「“世の中で役にたってる”ことを教えたい」




 三重県四日市市にある建設会社「善機工(ぜんきこう)」には、職親プロジェクトを通じて、この会社に就職した、元受刑者のタナカさん(54 仮名)がいる。


ここで働き始めて7年、“過去のこと”は同僚も知っているが、再び手を染めないように支えてくれている。

タナカさん:
「現場を任されていることが自分にとって一番有り難いですね。社長含め周りの人間もみんなわかってもらっているので、何も隠すことなく仕事に集中できるし、周りの目も気にしなくていいので助かっています」


タナカさんを受け入れた山下善弘社長(やました・よしひろ 39)は、「環境を変えることが再犯を防ぐ道」という考えを持っている。

善機工の山下善弘社長:
「出所後の環境はものすごく大きく左右されると思います。同じ環境に戻ってしまっても、また3カ月もしたら、刑務所の中で考えたことは薄れていってしまうのかなと」


その考えの背景は、「自身の経験」にあった。

山下社長は、地元で30人のメンバーを束ねる暴走族のリーダーをつとめ、17歳の時に傷害事件などで逮捕され、7カ月間を少年院で過ごした。

善機工の山下善弘社長:
「犯罪で収益を得てきた方は、僕もそうだけど、楽してお金が手に入るっていうのが身に染みてわかってるんで。お金ではないところですね、仲間やチームや周りの人がおってこそ、『自分が世の中で役にたってるんだ』というところを教えてあげたい」


現在は、タナカさんを含め、3人の元受刑者を受け入れている。否定せず、根気強く接しているが、受け入れ側に負担が無いわけではない。これまでに、トラブルは何度もあったという。


善機工の山下善弘社長:
「出張先でケンカをしてきたりとか。人の物をまた取ってしまったとか、社内でも色々ありましたね。(Qそういう時にどんな対応を?)真剣に向き合います。どこ行っても否定されたり、『そんな考えおかしい』と言われている中で、犯罪者だからというレッテルを貼るんじゃなくて、良い所を見てあげると、その分今まで(結果が)返ってきたかなと感じています」

■「高卒認定試験」の授業取り入れ再犯防止を…愛知の瀬戸少年院




 愛知県瀬戸市にある瀬戸少年院では、再犯防止の取り組みとして、外部から講師を招き「高卒認定試験合格」に向けた授業を行っている。


講師:
「何て読むの?このOから始まるやつ(owner)、何て読むの?」

少年:
「オウ…オウェー…オーナー?」

講師:
「正解!」


特殊車両を操縦するための職業訓練もあり、社会で生きていけるよう、学びの場が与えられている。

高卒認定試験に合格した少年:
「高校卒業できなかった自分が、大学受験ができる資格をもらったのが嬉しいのと、将来に希望が見えて。外国語を武器にして様々な人と関わったりとか、接客業がしたいです」


ただ、社会から求められるのは、職を手にすることではなく、根本から変わることだ。

■受講した43人全員が“再犯なし” 「論理的に考える力」養う訓練




 福岡市中央区にある「職親プロジェクト」本部。


傷害致死罪で10年の刑期を終え、2024年7月に仮出所したスズキさん(仮名)が、ここに通って訓練を受けている。


職親プロジェクト本部の原田公裕さん:
「『2+5=7』というのを数直線上に図で書いて」

元受刑者のスズキさん:
「ちょっと分からない。どういうふうに数直線を使うのかが分からない」

職親プロジェクト本部の原田公裕さん:
「『2+5=7』という簡単な事でも理屈を説明するのはものすごく難しいことなんだよ。そこを、今日はしっかり頭の中に作っていく学習になります」


スズキさんは数学を学んでいるわけではない。直感でわかることを、あえて論理的に考えさせる訓練で、「職親プロジェクト」本部で2019年から取り組みが始まった。

職親プロジェクト本部の原田公裕さん:
「直感的に物事を動いてやっているっていうのが多いですね。論理的思考力だったり、整理したり。生き辛さを抱えた人達には共通して落ちてる力なんですよね。脳の考え方を変えさせないと入っていかない」

抽象的な考えのまま行動してきた彼らに、問題を頭の中で整理させ、具体的に表現させていく。その上で、過去に罪を犯した場面での正しい対応を考える。


元受刑者のスズキさん:
「今回の事件のキッカケは、当時交際していた彼女から『被害者の男性から嫌がらせを受けているから助けて』と言われたことでしたが、当時の私は暴力を振るうとか金をもらう選択肢しか考えてなかったので」

職親プロジェクト本部の原田公裕さん:
「ここが繋がらないよね、なぜこの考え方にいったのでしょう?」

元受刑者のスズキさん:
「周りの環境が暴力が身近にあったので、トラブルが起きた時はそういう解決の仕方しか思いつかなかった」

職親プロジェクト本部の原田公裕さん:
「今大事なこと言ったね。あなたにとってこの考え方をすることは当時は普通だったんだよね。なんとなく自分の中でまとまらないよね、なんかわからないで。だから日頃、きちんと考え方を学ぶ場を作れていたら、人生も変わっていったんだろうと」

1回50分の授業を、合計24回。これまで受講した43人は、罪を繰り返していないという。

当たり前で単純な作業だが、間違った思考を根本から直すには、過去に犯した罪と改めて向き合うことが大事だ。


元受刑者のスズキさん:
「色んな方の物の見方や考えを吸収しながらやっていかないといけない。そこから視野が広くなった気がするので。自分の考えだけにとらわれないようになった気がする」

職親プロジェクト本部の原田公裕さん:
「別のルート・別の方法を考えることが出来たら、彼は再犯を犯さないし被害者を出さなかった。『別の見方をしていくことで物事は解決の道があるんだよ』ということを本人たちに気付かせるのがミソ」


「仕事」「環境」「思考の変化」、どれも再犯防止には欠かせないものだ。被害者が1人でも減る世の中に向け、地道な更生支援が模索されている。

2024年8月23日放送

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