【桟原将司連載#22】一番苦手だった岩村明憲さんを抑えた! 矢野さんからお褒めの言葉
東スポWEB / 2024年6月13日 11時9分
【桟原将司 ハナの剛腕道中(22)】2004年の8月22日、ヤクルト―阪神(神宮)は、先発した2年目左腕の三東洋さんがプロ初勝利、僕がプロ2セーブ目を記録するという特別な試合になりました。スコアだけ見れば7―3の4点差で勝利した普通の試合なのですが、僕的にはいろいろありましたね。
3点リードの7回から9回までの3イニングを試合終了まで投げ切って1失点。今の野球ではリードしている場面で終盤3回を投げてリードを守り切るというセーブシチュエーションなんてほぼないですよね。
点差ほど楽に抑えたってわけでもなかったんですよ。3点リードで7回に三東さんからバトンタッチして、そのイニングでは二死満塁のピンチを招いてしまい打席に古田敦也さん。本塁打で逆転というハラハラを味わいました。
5点差で迎えた9回なんて余裕やんと思うかもしれませんが、それはそれで僕にとって越えなければいけない壁もあったんです。プロ野球人生で僕が最も苦手にしていたバッターは誰かと言いますと、ヤクルトで中軸を担っていた岩村明憲さんなんです。詳しい対戦成績などは記憶していませんが、自分の感覚ではコンタクト率80%くらいで、ほぼほぼ全部いい当たりの印象です。
9回は1点を失って、4点差とされるも二死までこぎ着けていました。そこで打席には守備から古田さんに代わって2番手捕手として出場していた小野公誠さんです。次打者は岩村さんだったのですが、自分としては小野さんで何としても終わらせたいわけです。
岩村さんは結果的に打ち取っても、なんか抑えている感じが全くしないんですよね。めちゃくちゃいい当たりのセンターライナーとか。何を投げてもしっかりバットの芯で捉えられてしまうんです。完全に意識してしまっていたんでしょうね。
あの当時、セ・リーグには巨人に高橋由伸さん、阿部慎之助さん、広島には嶋重宣さんら左の好打者はたくさんいました。でも、岩村さんほど嫌なイメージはなかったんですね。僕の腕の振りはサイドスローよりは高くて、スリークオーターよりは低いくらいの位置。左打者をどう抑えるかが生命線なんですが、岩村さん以外はしっかり自分のボールを投げられたら抑えられるという感覚だったんですが…。
で、場面は戻って小野さんをどうしても抑えたいじゃないですか。そしたらフルカウントになってしまって、フォアボールを出したくないからど真ん中に投げたら三塁線へ二塁打ですよ。結局は岩村さんに回してしまったんですね。
最後、岩村さんを追い込んで矢野さんのサインは「インコース真っすぐ」でした。この時に投げたボールは本当に矢野さんのミットを構えたところにいきました。結果は見逃し三振でゲームセットです。
大体、怒られることの方が多かった矢野さんですが、この時はウイニングボールをマウンドまで運んできてくれて、ハイタッチする時に「今までの中で一番いい球やった」と褒めてくれました。その矢野さんのひと言が本当にうれしくて今でも覚えていますね。ゲームセットを迎えた瞬間のあの矢野さんの独特な本当にうれしそうな笑顔を見るのが僕は好きでしたね。
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