シー・シェパード創設者 日本への身柄引き渡しに高いハードル セレブが反対運動

ポール・ワトソン容疑者（ロイター）

反捕鯨団体「シー・シェパード（ＳＳ）」の創設者のポール・ワトソン容疑者（７３）がデンマーク自治領グリーンランドの警察に拘束され、日本への身柄引き渡しが検討されている中、セレブを巻き込んでの日本バッシングになってきた。

ワトソン容疑者は２１日、日本の捕鯨母船「関鯨丸」の操業を妨害するためにグリーンランド中心都市ヌークに船の給油などで立ち寄った際、身柄を拘束された。２０１０年にＳＳのメンバーが日本の調査捕鯨船団に酪酸入りの瓶を投げつけ、ケガをさせた事件の共犯で傷害と威力業務妨害で、海上保安庁からＩＣＰＯ（国際刑事警察機構）に国際手配されていた。

ただ、同容疑者は捜査の手が及ぶのは慣れたものだ。１２年には、コスタリカで妨害行為を働いた殺人未遂罪でドイツ当局に逮捕され、コスタリカに引き渡された後に日本への引き渡しが可能かどうか検討されたこともあったが、保釈中に保釈条件をあっさりと破って、フランスへ逃亡していた。

今回の逮捕でも「ポール・ワトソン船長財団」は「海洋生物と海を守るために人生を捧げてきた男を逮捕する不当な行為に反対し、日本に引き渡されるのを阻止してください。デンマークの評判に傷がつくことになる」との声明を発表した。

日本の捕鯨は国際的な批判にさらされ、１８年には国際捕鯨委員会から脱退し、翌年から日本近海で捕獲対象や数を制限しての商業捕鯨を再開していたばかりだ。「かつてのＳＳから受けたような執拗な妨害行為はなかったが、ワトソン容疑者は日本が本格的に商業捕鯨に乗り出すとの批判を訴えていた矢先の逮捕劇で、世界的な反捕鯨のキャンペーンを張ってくるでしょう」（永田町関係者）

ワトソン容疑者はセレブとのパイプが太く、名だたるハリウッド俳優を反捕鯨船に「エコ・ウォリアー（環境戦士）」として、乗り込ませてきた。今回の逮捕劇でも早速、仏女優のブリジット・バルドーが「勇気ある男を救うために何でもする」と訴えている。

ＳＳは「７３歳のワトソンが人権違反の日本に引き渡されれば、日本で生涯を終える」と国際的に批判の的となっている日本の人質司法にも矛先を向け、仏メディアは「マクロン大統領がデンマーク当局に日本に引き渡さないように働きかけている」と伝えた。

林芳正官房長官は「海上保安庁において、関係省庁と協議しながら適切に対応していくものと承知しております」と話したが、強硬に動けば国際的な批判にさらされることにもなりかねず、先行きは不透明な状況だ。