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【菊地敏幸連載#25】会議の場で…ベテランスカウトを怒らせた阪神球団幹部のひと言

東スポWEB / 2024年8月22日 11時9分

五十嵐(左から2人目)のあずかり知らぬところで…

【菊地敏幸 辣腕スカウトの虎眼力(25)】2000年代のある夏のお話です。夏の甲子園大会が終わった頃のスカウト会議で、ある球団幹部がベテランスカウトと衝突する事件が起こりました。

この時期になると当然、スカウト陣も指名リストをしっかり作ってきて「この選手はこうで、あの選手はこうだ」と議論になります。そこでその球団幹部はマニアックな野球雑誌を持ち出し、掲載されていた1997年ドラフトの評価リストを開いてこう話しました。

「ヤクルト2位指名の五十嵐亮太(千葉・敬愛学園高)が高評価になっていましたが、なぜこの選手がウチのリストにはなかったんですか?」

いやいや、その年の阪神のドラフト2位は誰だかご存じですかと。五十嵐と同じ関東圏、茨城・水戸商業高の井川慶なわけですよ。ウチのエースです。もちろん五十嵐は素晴らしい素材です。ただ、彼は北海道の留萌市生まれで、お母さんはヤクルトOBで後に監督にもなる若松勉さんの留萌中学の同窓でした。ヤクルトが裏でしっかり仕事をして指名につなげたんでしょう。

球団幹部の話を聞いたベテランスカウトはヘソを曲げましたね。「何言ってんだ。スカウトは毎日、汗水垂らしてこうして集めてきた情報をもとに資料を作成しているんだ。大体、こんなところでプロのスカウトを前にしてそんな雑誌を持ってくるのが非常識だろ!」って怒り心頭です。

球団幹部は「いや、私はそんなつもりはない」と説明してはいました。それでも各スカウトはいい気分ではなかったはずです。ただ、問題だったのはオフィシャルな会議で上司に反旗を翻した形になってしまった事実です。そのベテランスカウトは秋になると球団を離れることになってしまいました。

球団を去った当該の先輩スカウトは「菊地も俺と同じような系統だと思うから気をつけろよ」って言われた記憶があります。実際にこの時点から見て遠くない未来に、私もスカウト会議で怒りに任せて良くない態度をとってしまったこともあるんですが、それはまた別の機会にお話しします。

その球団幹部の方もしっかり話せば話を分かってくれる人物ではありました。私は実際にいい関係を構築できていましたから。ただ、球団幹部にもスカウトにもいろんな人が存在するわけです。あつれきが生まれることもあります。

元スポーツマン的な球団役員もいれば、経営手腕に特化した役員も存在します。適材適所でみんなが足りないところを補完し合い、組織としてチーム強化に努めるといえば簡単ですが、それは理想論です。会社員である球団の人間と、1年契約で結果勝負のスカウトでは相いれない部分もあることは確かです。

ちょうど2000年代の頃は阪神生え抜きの吉田義男監督から野村克也監督、星野仙一監督を招へいするなど変革期にありました。星野さんが監督、シニアディレクターとして手腕を発揮した時期にあり、他球団OBからスカウト部門の人材を採用し、それまでの仲間が退団ということもありました。

私は悔しかったです。それまでの阪神のスカウトはダメだと言われているようなものですから。暗黒時代を経て、今は指名した選手が活躍しチームが強くなってくれました。私は球団を離れた立場ですが、阪神はいつまでも強くあってほしいですね。

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