1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

創業90年超の食品サンプル老舗「株式会社岩崎」を直撃「おじさんだけの作業所ではありません」

東スポWEB / 2024年9月8日 10時8分

武井氏が掲げるビールもサンプルだ

チーズのとろけたピザに湯気が出てきそうな丼もの、注がれている最中のビール…。そんな飲食店の前に並んだ食品サンプルの数々に、食欲をそそられたことがある読者も多いのでは? 今回は食品サンプルの製作を長年手掛けてきた株式会社岩崎の営業企画室室長・武井秀夫氏を直撃。外食産業を支えてきた技術へのこだわりと、型にとらわれない挑戦の数々について話を聞いた。

1932年に創業し、商品サンプルを日本で初めて事業化した岩崎。当初ろうを使って製作していたサンプルは、約40年前から合成樹脂製にシフトした。現在は製作体験等を除いてろうはほとんど使われていない。

サンプルはにぎり寿司のような一部のジャンルを除いて、ほぼすべてが受注製品だという。個人店からの注文にも対応し、オリジナル料理を再現する。社としては3Dプリンターも所有しているが、ほとんどのサンプルは職人が手作業で製作したもの。年間約15万点のサンプルを人の手で世に送り出している。武井氏は「1点、2点ずつの注文が圧倒的に多いので、費用対効果の面でプリンターではまだ採算が合わないかと思います。サンプルはお店のための販促ツールであって、美術工芸品ではありません。予算の中で丁寧に対応するという点では分があるのでは」と分析。職人の“柔軟性”をアピールした。

ちなみに食品サンプルの相場は、1人前の料理で1万円程度。さらにリアルな造形を目指すと、その手間に合わせて価格が上がっていく。取材では工数が異なる2種のマルゲリータが並べて紹介されたが、チーズのとろけ具合や表面の質感の差を、知識のない記者でも強く感じることができた。

近年ではサンプルを使った小物やグッズを都内の店舗で販売。製作体験のワークショップも展開しているが、“手の内”を明かして良いのだろうか…? これに対し武井氏は「開き直りではないですが、作り方の動画はユーチューブで見切れないほど投稿されていますから。サンプルを知ってもらい、それが拡散につながるのなら」と笑顔でこちらの不安を一蹴した。

実際に食品サンプルグッズを販売すると、女性が購入者の圧倒的多数を占めていたという。「幼少期のおままごとの影響もあるかもしれませんね。サンプル作りにあこがれて入社を希望する女性も多いですし、工場における女性の割合も増えています。イメージされるようなおじさんだけの作業所ではありません」

さらにインバウンド観光客からの需要も増加。下駄に乗った寿司のような“ザ・日本食”のサンプルがお土産として人気を集めている。一方で海外進出を目指す中で、食品サンプル文化を伝えるということには苦労も。過去に東南アジアで展示会を行った際には、横に置いた値札をサンプル自体の価格と誤解する人がいたほか、海外の店舗に導入すると、店内でサンプルも販売していると勘違いされるケースがあったという。日本では当たり前のサンプルだが、まずはその前提から理解してもらう必要があるようだ。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください