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【菊地敏幸連載#36】「直感的に使える」実績も知名度もない上園啓史投手を獲得

東スポWEB / 2024年9月11日 11時8分

07年には新人王に輝いた上園

【菊地敏幸 辣腕スカウトの虎眼力(36)】今回は2006年ドラフトを振り返ってみようと思います。05年から07年までの3年間は大学・社会人と高校生ドラフトを分離で行った時代でした。いわゆる逆指名枠が希望枠と名称変更され、阪神は大阪ガスの小嶋達也投手を指名しています。ちなみにこの年限りで逆指名制度が廃止されています。

高校生では1巡目に高校生ナンバーワン野手の評価だった愛工大名電・堂上直倫内野手を指名するも抽選に外れ、長崎日大の野原将志内野手を獲得するに至りました。

希望枠の小嶋は石川・遊学館時代から光る存在でした。入学と同時に野球部が創設され、2年時に夏の甲子園に出場しベスト8にけん引。高校卒業時点で中日が獲得候補に挙げたほどの有望株でした。トヨタ自動車に入社し中日というラインもあったようですが、大阪出身ということもあったのでしょうか、小嶋は大阪ガスに就職しました。

ただ、小嶋は故障なども重なり社会人時代は主立った成績を残せぬまま3年間を経て阪神に逆指名で入団。これは阪神が水面下で動いていたんだろうなということは、誰にでも想像できると思います。

とはいえ、社会人時代に伸び悩んだまま逆指名ドラ1の評価だと、どうしたものかとは思っていました。阪神のドラ1はそれでなくとも重圧がかかりますから。もっと楽な順位でじっくり育ててもよかったのでは…などと言っても今はどうにもなりませんが。

小嶋は入団5年目の11年に自己最多の36試合に登板し1勝2敗5ホールド、防御率3・72とプロとして戦力になってくれました。期待が大きかっただけに、活躍できたシーズンを過ごすことができ、本人も救われたことでしょう。

一方、高校ドラ1の野原は苦しみました。私も視察しましたがドラ1では重圧が大きかったことでしょう。地元・九州のソフトバンクが途中、リストから外したとの情報も聞こえてきていましたし、もう少し下位指名でじっくり育てればよかったのかもしれません。

このドラフトで私が担当し印象に残っているのは大学・社会人3巡目で獲得した武蔵大の上園啓史投手です。4年春のリーグ戦を前にしたオープン戦を視察に行った時のことです。対戦チームは東京六大学リーグの名門・明治。そのレギュラークラスを相手に内角を直球でドンドンえぐって、バットをバキバキ折るんですよ。マウンド度胸、テンポの良さが抜群でした。これはいけると思いました。

実際に話をしてみても直感的に「絶対にもう使える」と確信しました。ただ、武蔵大はレベルの高い投手が上園しか存在しませんでした。実際にリーグ戦が始まるとフル回転しなくてはいけなくなるので連投、連投で全力投球をしないんですよ。当時の上園自身には実績も知名度もないわけですから、菊地の目は確かなのかとなるわけです。この上園を何とか獲得したいと上司を説得し実際に指名に至りました。

上園は1年目の07年に17試合に投げ8勝5敗、防御率2・42の成績を残し新人王のタイトルに輝きました。長くは活躍できなかったですが、私は上園のプロ入りは正解だったと思っています。引退後は独立リーグの指導者などを経て、現在は米大リーグ・パドレスの駐日スカウトを務めています。今でも野球界に貢献してくれていると思うとうれしいですね。

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