【体操】橋本大輝 格別だったパリ五輪の団体金…求められた「エースの自覚」を拒絶した真意
東スポWEB / 2024年9月17日 7時8分
【取材の裏側 現場ノート】「〝エースの自覚〟みたいな言葉はあまり好きじゃないんですよ」
メダルラッシュに沸いたパリ五輪の閉幕から約1か月。多くのメダリストを取材させてもらったが、体操男子のエース・橋本大輝(セントラルスポーツ)の言葉は今でも脳裏に焼き付いている。
前回の東京五輪では個人総合と種目別鉄棒で金メダルを獲得するも、団体総合は銀メダル。リベンジに燃えるエースは、記者に「団体の金が一番うれしい。5人で取って、そのうれしさを5人で分かち合えるので。個人総合の金もうれしいけど、なんか1個物足りない。(内村)航平さんにも『一番難しいよ』と言われたからこそ『じゃあ取ってやる』という強い思いもある」と明かしていた。
そんな橋本への注目度は日を追うごとに高まるばかりだったが、当の本人は「結局みんなでやらなきゃいけない。団体戦は1人じゃ勝てないし、18演技そろえなければいけない。〝エースの自覚〟とかじゃなくて、自分が与えられた役割を果たすことが団体戦では必要だと思う」と冷静沈着。全員で戦うことの重要性を説いていた。
橋本だけでなく、他の選手も同じ気持ちだった。パリ五輪の団体総合決勝前夜(7月28日)には、主将の萱和磨(セントラルスポーツ)がミーティングで「絶対に僕は2番じゃ嫌だ」と声を詰まらせながらチームを鼓舞。リーダーの熱意を受け取った橋本は「絶対に明日、死ぬ気でやります」と涙を流したという。
迎えた決勝は最終種目の鉄棒を迎える段階で首位の中国と3・267点差だったものの、中国選手が2回落下。まさかの形で逆転に成功すると、最後は橋本が大きなミスなくまとめた。「みんなに助けられた金メダル。この4人がいなかったら絶対取れなかったし、僕もこの4人のおかげで最高の演技を出すことができた」としみじみ語った。
1人ではなくみんなで――。エースに依存しないチーム力の高さ、各選手の意識の高さが2大会ぶりの頂点取りにつながった。(五輪担当・中西崇太)
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