2011年女子杯準々決勝ドイツ戦「丸山桂里奈の投入」佐々木則夫監督の確固たる勝算
東スポWEB / 2024年10月10日 14時5分
【多事蹴論93】なでしこジャパンの“天然ストライカー”が救世主になった舞台裏とは――。2011年ドイツ女子W杯で佐々木則夫監督率いるなでしこジャパンは世界制覇を果たした。日本サッカー界初の世界王者という快挙のキッカケとなったのは準々決勝のドイツ戦。これまで未勝利のホスト国を相手に劇的な決勝ゴールを決めたのは現在バラエティーなどで活躍するFW丸山桂里奈だった。
1次リーグを2位で通過した日本は難敵ドイツと対戦。試合は0―0で延長戦に突入し、延長後半3分に投入された丸山はMF澤穂希からのスルーパスに反応し、右サイドから抜け出すと、スピードに乗ってゴール前に突入し、角度のない位置から右足一閃。4強入りを決めた。丸山はかつて本紙の取材に「行けるって思ったらゴールに入ってた。感覚ですよ」と語っていたが、この勝利をキッカケになでしこは上昇気流をつかんだ。
他にも実力派の選手がいる中、なぜ丸山だったのか。退任後、本紙インタビューに応じた佐々木氏は「実は丸山を直前までW杯メンバーに入れるつもりはなかった。スピードはあるけど、持久力が足りないし、途中から出ても連続した動きとかはベースがないとプレーできない。課題は与えていたけど、なかなかできなかった」という。
しかし同年3月の東日本大震災で所属する千葉の練習場が被災。チーム練習ができず、個人で走るトレーニングに取り組んだところ、課題だった持久力などが大幅に改善した。佐々木氏は「W杯前に千葉―浦和戦を見に行ったら丸山がすごく良くなった。90分間ボールに触り、連続して動けていた。それで米国遠征に連れていったらいい仕事をした」と振り返るように、土壇場でW杯メンバー入りをつかんだ。
そして迎えたドイツ戦。佐々木監督はなぜ最後に丸山を投入したのか。「コーチ時代にドイツ遠征に行って、途中から出た丸山が1ゴール1アシストを決めたことがあった。そのシーンが脳裏にあったので、丸山にそういうプレーが出てこないかなってことをイメージした」とし「角度のないところからのシュートは練習で結構入れていた。あの角度もフロックではない」と指摘。丸山の起用は確固たる“勝算”があったいう。
この劇的勝利をキッカケになでしこジャパンは快進撃。準決勝ではスウェーデンを相手に先制を許すもFW川澄奈穂美の2ゴールなどで逆転勝ちした。決勝ではドイツと同様に過去未勝利の米国を相手に大激闘。リードを許しながらも2度追い付き、PK戦の末に栄冠を手にした。現在はお茶の間をにぎわせている丸山の存在が日本サッカー界に「奇跡」をもたらすキッカケになったのは間違いない。 (敬称略)
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