神様ジーコ氏とブラジル代表「黄金の中盤」形成ファルカン氏 日本代表監督就任までの紆余曲折
東スポWEB / 2024年10月17日 14時10分
【多事蹴論94】日本代表監督に「ローマの鷹」が就任した舞台裏とは――。1993年10月、ハンス・オフト監督に率いられた日本代表はカタール・ドーハで開催された米国W杯アジア最終予選の最終イラク戦で試合終盤に失点し、2―2のドロー。つかみかけていた悲願のW杯出場権を獲得できず、98年フランスW杯でのリベンジを誓っていた。
当時、日本代表を担当する強化委員会の委員長(現技術委員長)だった川淵氏は、W杯まであと一歩に迫ったオフト監督の手腕を高く評価。続投させる方針だったが、他の強化委員の意見は違ったという。「(委員の一人)セルジオ(越後氏)が『世界のひのき舞台を目指すならW杯を経験した監督が必要だ』と主張したんだ。まあ、そういう考えもあるなと…。強化委員会として意見をまとめ、それで代表監督を交代することになった」と振り返る。
W杯アジア最終予選に敗退したこともあってオフト監督は潔く退任したが、ここから新たな日本代表監督探しが始まったという。最初に指揮官候補として浮上したのは元フランス代表監督のミシェル・イダルゴ氏だ。日本サッカー協会は少ないツテを頼ってイダルゴ氏との接触に成功。川淵氏は「早速(監督を)お願いします、と言ったら『日本なんかにサッカーがあるのか?』とあっさりと断られたんだ」。取り付くしまもなかった。厳しい現実にがくぜんとしたという。
次の候補に挙がったのが元ブラジル代表監督で世界的な名将として知られていたテレ・サンターナ氏だ。断られるのを覚悟で交渉を進めると、意外にも「日本に行ってもいい」と返事が届いた。しかし、サンターナ氏が要求してきたのは総額10億円にも及ぶ高額報酬だった。自身の年俸に加えて子飼いコーチの人件費も含まれていた。川淵氏も「当然サッカー協会にそんなお金はないよ。サンターナは値切り交渉も一切しないということだった。すぐに断念したよ」という。
続いて候補となったのは現役時代にジーコ氏らとともにブラジル代表で「黄金の中盤」を形成していたパウロ・ロベルト・ファルカン氏。イタリア1部ローマに所属し“ローマの鷹”として知られた元スター選手で引退後はブラジル代表監督も務めた。川淵氏は「そんな有名人が来るのかって思っていたけど『日本でやる気がある』と。代表監督の年俸予算は最大で1億円だったけど、予算内に収まった」。
紆余曲折を経て誕生したファルカンジャパンは94年春に始動。選手の若返りに取り組み、MF前園真聖やFW城彰二、MF岩本輝雄らを抜てきした。しかし大幅な選手入れ替えと急な南米路線への変更もあってチームは機能せず、同年10月に開催された広島アジア大会の準々決勝で宿敵の韓国に敗退し、解任されてしまった。 (敬称略)
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