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〝該当者なし〟の沢村賞 現場の主力投手は基準緩和に否定的「簡単な賞ではないからこそ価値がある」

東スポWEB / 2024年10月29日 5時5分

沢村賞「該当者なし」の理由について説明する堀内委員長(中央)

2024年の沢村賞選考委員会と選考結果記者発表が28日に都内のホテルで行われ、19年以来5年ぶり6度目となる「該当者なし」となった。旧来の先発完投型から投手起用は分業制が一般的となった昨今。完投数やイニング数に関する従来の選考基準を満たす難易度は実質的に高くなったため、球界関係者や有識者、ファンの間では基準の緩和を訴える声も出ているが、当事者である投手たちからは意外にも「現状のままでОK」の声が噴出している。

激論が交わされるも結論は出なかった。選考会議は難航を極めたことで時間を要し、予定されていた発表会見の時刻を大幅に過ぎて登壇した堀内委員長は「結論から申しますと、今年はたくさんの選手の名前が出てきましたけれども『帯に短したすきに長し』で非常に難しい選考でございました。いろいろな意見が出ましたが一本化することができませんでした。ですから今年は『該当者なし』にさせていただきます」と発表した。

有力候補には当初の段階で巨人の菅野と戸郷、DeNA・東、ソフトバンク・有原、日本ハム・伊藤の5人の名前がクローズアップ。最終的には戸郷と有原の2選手にまで絞り込まれた。しかしながら堀内委員長は「(選考基準は)7項目あるが、(両選手とも満たしているのは)3項目か4項目くらいの成績。投手優位の時代に、残念ですけどもうちょっと成績が上がってほしかったなというのがあります」と不選出の理由を明かした。

一方で、投手の分業制が当然となった現代のプロ野球界において、完投数やイニング数などの選考項目のクリアは困難を極めることも事実。堀内委員長も「本当は変えたくないんですけれども、数字が出てこないとなると、やっぱり完投数やイニング数とかっていうのは少し考えなきゃいけない」と将来的な項目変更の必要性について言及した。それでも「今のところはまだ時期的にちょっと違うかなと。これは僕1人で決められるものじゃありませんから、時期を見てそういう話し合いになる可能性はあります」と続け、早期見直しについては否定した。

この日の発表を受けて早速、ファンや球界関係者の中からは「選考基準を緩和するべきでは」との指摘も出ているが、当事者である投手たちは実際にどう受け止めているのか。12球団のある主力投手の1人は「個人的な意見」とした上で「ハードルを下げるべきではないと思う」と基準緩和に否定的な意見を出した。

「沢村賞は1つや2つの成績が秀でていれば獲れるような簡単な賞ではないからこそ価値がある。難しいとはいえ決して非現実的な基準ではないし、もしハードルを下げてしまえば沢村賞の価値そのものも変わってしまうように感じる。そう思ってる選手は自分だけじゃないとは思いますけどね」(前出投手)

こうした主張は多少の差異こそあれども、球界内で「一流」と称される主力投手の〝総意〟に近い考えのようだ。

実際にこの日の会議に出席した委員で現役通算223勝の工藤公康氏も「難しい部分があると思うが、できないわけではないと思う」と言及。1947年の創設以来77年の歴史を誇る沢村賞は今後も不変を貫くのか、それとも時代の変化に即した対応を見せるのか――。

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