【宮崎祐樹連載#17】同じ外野でライバルの先輩たちが、僕のために新井二軍監督に抗議
東スポWEB / 2024年11月20日 11時5分
【宮崎祐樹連載 オリのゴリBsを知り過ぎた男(17)】プロ2年目となった2012年、5月に初めて出場選手登録され一軍の試合を経験することができました。1年目のスタートからずっと歯車がかみ合わず、一部の指導者の方々ともソリが合わないストレスフルな状況が続きました。それでも、このシーズンはプロ野球選手としてようやく動き始めました。
二軍での出場もままならない三軍スタートという厳しい立場でのシーズンインではありました。ところが先輩選手の故障もあり二軍での出場機会を得ると、結果も伴い3割を超える打率を残すことができました。
そんなある日、岡田彰布監督が二軍戦を視察。「あれ、宮崎か? 調子ええやんか。何で(一軍に)推薦せえへんのよ」というひと言で、すぐに一軍出場のチャンスをいただく流れになりました。
一軍にいた期間は1週間足らずでした。4試合で9打席に立って1四球を選んだだけ。無安打、5三振と結果を出せず再び二軍落ちです。これは自分の力不足で当然だったと思います。ただ、一軍にいた期間に水口栄二打撃コーチから初めて指導を受けたことが僕にとって影響大でした。
水口さんは僕のスイングを見て「いいリストしてるな。それ、変えるなよ。そんなん、お前みたいにリスト使えるバッターはプロにもそうおらんぞ」と手首の強さ、使い方を褒めてもらいました。これはプロに入って「否定」され続けてきた僕にとっては、初めて「肯定」してもらった瞬間でした。
実力不足は分かってはいます。ただ、そうやっていい部分をストレートに表現してもらえると自信が湧いてくるじゃないですか。せっかくいただいた一軍出場のチャンスをモノにはできませんでしたが、水口さんの指導を受けることができて貴重な時間を過ごすことができました。
そして、二軍落ちしたタイミングでの全体ミーティングでのことでした。新井宏昌二軍監督から「今回、宮崎が一軍に上がったけど、こっちが推薦したわけではないから」との発言がありました。
偶然、岡田監督が二軍戦を視察に来たタイミングで僕が活躍した。それが、たまたま目に留まったことは事実です。それでも、みんなの前で二軍首脳陣から推薦したわけではない、つまり実力ではないと表現されたら、僕も一人の若手として立つ瀬がないなとは思ってしまいました。
そういうことがあるから、他のみんなもしっかりアピールしてほしいという話なら分かりますが…。
するとチームメートの竹原直隆さん、赤田将吾さんが怒って新井二軍監督に抗議してくれたんです。「何で2年目の若手選手の前でそんなことを言うんですか? 推薦してないとか、それは違うでしょ。そんなんじゃ若手が潰れてしまうでしょ」。同じ外野のライバルである先輩が、そんなふうに言ってくれたのはうれしかったですね。
竹原さんは右の強打者。赤田さんは西武時代に松坂大輔さんと同期入団のスイッチヒッターでスピードとパンチ力が武器の選手でした。僕が評価されていない方がライバル選手には有利なはずなのに、フェアな立場で僕をかばってくれたかっこいい先輩です。今でも感謝です。自分もそういう人間でありたいなと思いました。
そんなこんなで、僕の二軍生活はここからも続いていきます。これまでは悪いことが多かったですが、ここからはいいことも起こっていきます。
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