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坂口征二vs前田日明 鼓膜破れ、差し歯は飛んでも“不穏試合”ではなかった! 取材記者が全証言

東スポWEB / 2024年11月24日 10時4分

そして11月24日、札幌で坂口と前田は特別試合で対峙する。

坂口は「一世一代の勝負」と気合が入っていた。前田のアキレス腱固めを、そのまま立ち上がりトーホールドで切り返し、ワキ固めは力で阻止する。コーナーに詰めて張り手を見舞うと前田がエキサイト。坂口をコーナーに放って、すぐさま大車輪キックを叩き込む。倒れた坂口は顔面に強烈な蹴りを浴びた。これで坂口の鼓膜が破れた。

場外にエスケープした坂口は、ものすごい形相で前田をにらみつける。坂口がエプロンに上がると前田はハイキックを連打する(写真)。

場外からすきを見て前田の足を引っ張った坂口は、左足を鉄柱に2度叩きつけた。リングに戻り、前田をボディースラムの体勢からコーナーに逆さづり。ストンピングを連打し、顔を踏みつけた。前田の差し歯が飛んだ。

坂口は制止する柴田勝久レフェリーを突き飛ばし、9分55秒、反則負けが宣言された。「反則で逃げるのか!」。前田が叫んだ。10人ほどの若手が両者を引き離した。

試合後、坂口は「スッキリしたよ。最初に一発いいのをもらってカッときて、あとは何をしたか覚えていない。でも全力を出して戦った。機会があればまたやりたい」と言えば、前田も「いい試合だった。2人ともコンディションがよかったし、最後はちょっと不満だったが、あとはいい試合ができたと思う。ブロディなんか来なくてもよかったんじゃないか」と納得の表情。

取材した吉武保則記者は「アンドレVSブロディのテレホンカードは、幻の対決となっただけに高値がついたと話題になりました。私は使い切って捨ててしまいましたが…。アッ、試合ですか?」と小ボケをかましてから、「(ブロディ欠場の)負のイメージを払拭しようと攻め合ってた。最後は2人とも満足そうな顔をしていた」と語る。

「でも…」と話を続けた吉武記者は、「坂口VS前田のベストマッチは翌年の〝旅館破壊〟(87年1月23日、熊本・水俣市)です。坂口さんが畳に寝転び、前田に『どっからでも取ってみい』と叫んでた。極められるのか、お前に?というホンネでしょう。高田(伸彦=後の延彦)らに止められて動けない前田は、悔しまぎれに蹴るフリだけしてました。顔でも蹴るのかとみんな思ったはずですが、理性ある行動でホントよかった」と明かす。

「(どっからでも蹴ってみい?)私の目の前で起きたことだったので一部始終見てました。(それは)よく言われる間違いなんですよ。正確には取ってみいだった。坂口さんはベロンベロンで横たわっていて、前田も泥酔してたけど、さすがにベロベロの大先輩に蹴りを入れるわけにはいかないと思ったのでは…。高田を振り切ることもできただろうけど、行かなかった。いや、行けなかったというのが本当のところでしょう。行ったら坂口さんに逆に極められるかもしれない。それに、武藤(敬司)をボコボコにしたうえに坂口さんまでボコボコにするわけにもいかなかったでしょうし」

吉武記者は札幌の一戦を差し置いて、そう番外戦を振り返った。とはいえ、坂口VS前田の一戦は〝眠れる荒鷲〟の復活で〝坂口最強説〟も浮上。坂口の株が爆上がりになった好勝負だった(敬称略)。

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