【吉田秀彦連載#19】03年ヴァンダレイ・シウバと対戦中に実感「俺が楽しいんだから観客も楽しいんだな」
東スポWEB / 2025年1月8日 16時4分
【波瀾万丈 吉田秀彦物語(19)】2003年11月9日、東京ドームで行われたPRIDEミドル級GP準決勝。絶対王者のヴァンダレイ・シウバと相まみえました。
戦う前は、やりたくはなかった。「何で、あんなすごいのと」という気持ちでしたから。でも入場曲がかかって花道を歩くと「やらなきゃ、やられる」とスイッチが入りましたね。リングに上がると、相手は目が血走っていて、両手を組んでクルクル回している。「こいつ、いってるな」。そう感じたのもつかの間、ゴングが鳴りました。
戦ってみて…1ラウンド(R)にテークダウンして、いきなりグラウンドに入れました。相手は防御もすごいから「投げてパウンドでぶん殴るしかないな」。そう思って、上からがんがん打ち込みました。グラウンドでパンチを浴びて痛かったけど、そこまで「強い」ということは感じませんでした。
2Rに入ると、ヴァンダレイは自分の柔道衣をつかんで殴って蹴ってくる。襟をつかまれてパンチを飛ばしてきました。もちろん、得意のヒザ蹴りとハイキックも。今となってみると、試合中に感じていたのは「楽しい」ということでした。東京ドームの観客が盛り上がっているのも肌で感じられた。「俺が楽しいんだから観客も楽しいんだな」。それがわかったんです。いわゆる「かみ合った試合」でした。
ただ戦っている間はポイントがどうなっているか、全然わからなかった。覚えているのは一発いいパンチが入り、自分がキレて「どうにか当ててやろう」と思ったことです。でも…やっぱり当たりませんよね(笑い)。
それでも一発だけいいパンチが入った。相手がふらついているのもわかりました。「ここでいかなきゃ」。そう思ったが、相手も打ちにくると考えてしまい、いけなかったのが痛かった。試合は2R15分戦って判定0―3で負けました。一つ言えるのはヴァンダレイ・シウバとの戦いは楽しかった。「かみ合えば、柔道でもこういう怪物とも渡り合えるんだな」。心からそう思えました。
柔道では負けて評価されることはありません。負けたら終わり。でもヴァンダレイとの試合中には「ヨシダコール」が起こった。自分は聞こえていませんでしたが(笑い)観客も自分の戦いに共感してくれた。それがプロとアマチュアの違い、格闘技と柔道の違いでした。観客を熱狂させられれば、それでありなんです。ある意味、プロレスの魅力ってそこなんだろうとも感じました。
この試合で自分は大きな満足感を得ました。ドン・フライ、田村潔司、そしてヴァンダレイ・シウバと強敵を相手に戦い、ようやく自分もPRIDEの選手になれた。総合格闘技の世界でも認められたと思いましたね。
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