【吉田秀彦連載#20】ヴァンダレイはもう1回戦いたいと思わせてくれる唯一の相手
東スポWEB / 2025年1月9日 16時9分
【波瀾万丈 吉田秀彦物語(20)】2003年11月のPRIDEミドル級GP準決勝でヴァンダレイ・シウバに敗れました。格闘技で初黒星。相手の打撃で口の中は血だらけになり、試合後の控室で6針縫う羽目になりました。
試合中はセコンドの高阪剛から「いくな!」と普段とは真逆の指示がありました(笑い)。「無理だ、止められない!」と前に出た結果ですから仕方がない。再戦? 思うワケないでしょう(笑い)。「1人1試合でいいや」と考えていましたし、自分も年齢を重ねて30代半ば。無理ができる年ではない。「やれても40歳までだな」と思っていましたから。
ところが…05年に2度目のPRIDEミドル級GPが開催され、自分は開幕戦(4月23日、大阪ドーム)で再びヴァンダレイ・シウバと戦うことになります。
この際も、やる前は「嫌だな」と思っていましたが、自分が戦って面白い相手と思えたのは、後にも先にもヴァンダレイ・シウバが一番です。実際に2戦目では自分のパンチがヴァンダレイにけっこう当たりました。ヴァンダレイのパンチも「ガードしておけば、何とかなる」と感じていましたし「勝てるんじゃないか」と思って戦っていましたね。
ヴァンダレイと1ラウンド(R)からボコボコに殴り合ってグラウンドでも攻め込みました。ガードしていない頭にたくさん傷ができたけど、自分も投げ技が決まって倒せた。寝技ではヒザ蹴りもくらい、もう無我夢中で3Rを戦い切りました。どちらが勝ったかわからない。判定で最初に名前を呼ばれたんで「もしかして、勝ったんじゃね?」と(笑い)。それは勘違いで1―1から3人目のジャッジは相手を支持し、判定1―2の僅差で敗れました。
本当は盛り上げて勝つのが一番いいけれど、終わった後の充実感はこの試合が一番ありました。体的にもきつかったですね。ヴァンダレイと殴り合った試合後、病院でCTスキャン検査して異常がなかったので、ホテルに戻りました。そうしたら、天井がグルグル回っている。「ヤバい」と思ったら、おう吐。「このまま、俺は死ぬかもしれない」。そう思って、別のホテルに宿泊していた妻を呼び出し、ずっと傍らについていてもらいました。
実は、戦っていて「つまらないな」と、感じる試合もけっこうあったんです。かみ合わず「この試合は一体、どうやって盛り上げればいいんだ?」と、わからなくなることもありましたから。そう思うよりは「ヴァンダレイと3回目を戦いたい」と感じていました。結局、3度目の試合は実現しませんでしたが、ヴァンダレイ・シウバは「もう1回戦いたい」と思わせてくれる唯一の相手でした。
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