【佐藤優コラム】石破首相の外交戦略は冴えている 米国追従の価値観外交から現実主義にシフト
東スポWEB / 2025年2月6日 11時38分
1月20日にドナルド・トランプ氏は、米国大統領に就任して以降、グリーンランド購入、パナマ運河奪還の意図を表明し、メキシコ、カナダに25%、中国に10%の関税をかけた(メキシコ、カナダへの関税発動は一時停止)。
国際社会のゲームのルールが急激に変化している。ひとことで言うと大国が露骨にエゴを発揮する新帝国主義の時代が到来した。
この状況を石破茂首相はよくわかっている。1月24日に通常国会が召集され、石破首相が衆参両院で初めての施政方針演説を行った。野党もマスメディアもこの演説には新味がないとか具体策がないと批判している。野党の仕事は政権を批判することだから仕方ないとしても、石破首相を批判する記者たちが施政方針演説をきちんと読んでいるとは思えない。
石破首相の外交戦略はアメリカ追従の価値観外交から現実主義(リアリズム)にシフトしつつある。それが顕著に認められるのが対中国外交だ。演説で石破首相はこう述べた。
<中国との関係では、懸案や意見の相違につき、主張すべきことは主張する、その上で、協力できる分野では協力していく、そうした現実的な外交を行ってまいります。価値を共有する同盟国・同志国との確固たる連携を大前提とした上で、中国の安定的発展が地域全体の利益となるよう、習近平主席とも確認した、「戦略的互恵関係」の包括的推進、「建設的かつ安定的な関係」の構築という大きな方向性に基づき、今後も首脳間を含むあらゆるレベルで中国との意思疎通を図ってまいります>
これは民主主義や人権などの価値観によって中国を包囲するという価値観外交とは明らかに異なるアプローチだ。従来の外交との整合性をつける上でのレトリック(修辞)として<価値を共有する同盟国・同志国との確固たる連携を大前提とした上で>という留保をつけているが、趣旨は<習近平主席とも確認した、「戦略的互恵関係」の包括的推進、「建設的かつ安定的な関係」の構築という大きな方向性>だ。
アメリカとの深刻な軋轢を起こさないという閾値内で、日本は中国との政治と経済の両面において共存共栄を図っていくということだ。この方針を明示したことで、中国との経済関係が日本にとっての生命線と考えている財界の共感を石破首相は得た。
石破首相の外交センスは冴えている。近未来に石破首相が訪中し、日中の本格的な戦略的提携に向けた話し合いを習近平国家主席と行うことになると思う。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
経済戦争渦中の「石破首相訪米」は危険な賭けに 安倍元首相がトランプ氏と築いた関係は再現できない
東洋経済オンライン / 2025年2月5日 16時30分
-
大統領就任演説で見せた「トランプ節」。注目の初日に「中国問題」はどう扱われたか
トウシル / 2025年1月23日 7時30分
-
外相演説案、対米が政権の最優先 中国と協力連携増やす努力する
共同通信 / 2025年1月21日 16時16分
-
「石破政権は中国にどっぷり浸かりすぎ」石川和男が日本の対中外交に警鐘
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2025年1月18日 9時0分
-
トランプ第2次政権が来週発足。中国はどう対するか。注目すべき三つのポイント
トウシル / 2025年1月16日 7時30分
ランキング
-
1元スタイリストの男、架空取引へ出資持ちかけ5000万円詐取容疑…5年で30億だまし取ったか
読売新聞 / 2025年2月6日 8時49分
-
226歳ホストの男逮捕…28歳女性客に車内で暴行し約8万円など奪った疑い「現金は自分のもの」と一部否認
東海テレビ / 2025年2月6日 7時13分
-
3八潮道路陥没でトラック運転席発見か…2本目のスロープ近くに農業用水路露出、撤去へ
読売新聞 / 2025年2月5日 23時47分
-
4【速報】切断遺体の遺棄事件 容疑者とみられる男 死亡後に被害者のキャッシュカードで“ATMから金引き出す様子”防犯カメラに映る 大阪・東大阪市の山中
MBSニュース / 2025年2月6日 0時2分
-
5隣の車線で水道管の工事中…名古屋で道路が“陥没” 深さ1mほどで乗用車の前輪がはまり動かせない状態に
東海テレビ / 2025年2月6日 11時31分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください