続々登場も高価なフォルダブルスマホ、普及拡大は2022年ごろ?
LIMO / 2019年3月6日 20時20分
続々登場も高価なフォルダブルスマホ、普及拡大は2022年ごろ?
タブレットやノートPCサイズの投入予想も
2月25~28日に世界最大の通信機器見本市「MWC(Mobile World Congress)2019」がスペイン・バルセロナで開催されたことにあわせ、スマートフォン各社から折りたたみ可能なフォルダブルスマホが相次いで発表された。これまでにないフォームファクターを可能にするディスプレーやヒンジ、カバーフィルムといった新部材の需要拡大が見込まれるため、今後の普及に期待がかかる。ただし、いずれも非常に高価で、誰もが手に取りやすい値ごろ感を実現するには少し時間がかかりそうだ。
サムスンは7.3インチで22万円
韓国のサムスン電子は、同社初となるフォルダブルスマホ「Galaxy Fold」を4月に発売する。価格は1980ドル(約22万円)。「2011年にサムスンが最初にフレキシブル(曲げられる)ディスプレーの試作品を発表してから8年以上かけて開発した素材、エンジニアリング、ディスプレーの革新をまとめた」と述べた。
Galaxy Foldは、メーン画面に7.3インチでアスペクト(縦横)比4.2対3のQXGAフォルダブル有機ELディスプレー「Infinity Flex」、カバー画面に4.6インチで21対9のHD有機ELディスプレーを搭載。フォルダブル有機ELディスプレーは内折りに折り曲げることができ、開くとメーン画面で最大3つのアプリを同時に操作できる。Infinity Flexは、新ポリマー層の開発によって、既存のフレキシブル有機ELディスプレーよりも約50%薄くした。
カメラは、ディスプレーのない背面に3つ(1600万画素ウルトラワイド、1200万画素広角、1200万画素光学ズーム)、カバー面に1000万画素のセルフィー、メーン画面に1000万画素のセルフィーと800万画素のRGB深度と、計6つを搭載した。折りたたんだ際の厚みは公表していない。
メモリーは、DRAMが12GB(LPDDR4x)、NANDが512GBで、マイクロSDスロットは搭載していない。電池の容量は4380mAhで、7nmプロセスを採用した64ビットOctaコアプロセッサーを搭載した。
ファーウェイは8インチで28.9万円、5Gにも対応
中国ファーウェイもフォルダブルスマホ「Mate X」を発表した。フォルダブル端末の発表は、中国のロヨル、サムスンに次いで世界3番目になったが、ファーウェイは「フォルダブルで5G対応」という点では世界に先んじた。
Mate Xは、Galaxy Foldと全く異なるフォルムでフォルダブルを実現した。7.3インチの画面が真ん中で折れ曲がって(内折り)半分になるGalaxy Foldに対し、Mate Xは画面の2/3程度で外折りに曲がる構造にした。この構造をFalcon Wingデザインと名付けた。
画面サイズは、開いた状態で8インチとGalaxy Foldより大きく、折り曲げた状態では表が6.38インチ、裏が6.6インチ。表の6.38インチ画面の左にライカと開発したカメラが配置された形になる。ちなみに、Galaxy Foldは開いた状態で画面にカメラ部分のノッチがあるが、Mate Xはディスプレーにかからないエッジ部にカメラを配したため、8インチ全面にわたってフラットな画面を楽しむことができる。
5G対応として、自社グループ企業(ファブレス半導体メーカーのハイシリコン)が設計した7nmマルチモード5Gチップセット「Balong 5000」およびCPU「Kirin980」を搭載。DRAMは8GB、NANDは512GB、バッテリーは2つで計4500mAhをそれぞれ搭載した。価格は2299ユーロ(約28.9万円)で、サムスンよりも高い。19年半ばに発売予定だ。このMate Xの8インチフォルダブル有機ELディスプレーは中国のBOEが量産供給することになっている。
シャオミー、オッポ、モトローラも
このほか、中国スマホブランドのシャオミーとオッポ、米モトローラもフォルダブルスマホを開発中だ。
シャオミーは、1月初旬に同社の幹部が3つに折れるスマホを操作する動画をネット上にアップした。画面サイズや発売時期などには触れていないが、画面を3つに折ると、非常にコンパクトなスマホとして操作できる様子を投稿した。
また、オッポもフォルダブルスマホの映像を投稿した。見た目はMate Xによく似ており、同様に画面の2/3程度で折り曲げることができ、折りたたむと画面の横にカメラがある形をしている。発売時期などについては明らかにしていない。
モトローラは、かつて人気を博した携帯電話「RAZR」ブランドの新型機としてフォルダブルスマホの開発を進めていることを明らかにしている。サムスンのようにディスプレーを内折りにするタイプと、シャオミーの開発品のように3つ折りにするタイプを開発しており、まず内折りタイプを市場投入する見込み。このディスプレーを量産供給するのは台湾AUOだと見られており、AUOの彭双浪CEOは供給先には言及していないものの、フォルダブル有機ELディスプレーを19年内に量産供給すると述べている。
普及には有機ELディスプレーのコストダウンが必須
このように新機種の開発発表が相次ぎ、今後の普及拡大が期待されるが、普及の最大のネックとなるのが価格だ。すでに開発者モデルとして販売しているロヨルの「FlexPai」は128GB品が1588ドル、256GB品が1759ドル。モトローラのフォルダブルスマホも1500ドル程度になると予測されている。いずれも20万円前後と高額であり、この背景にはフォルダブル有機ELディスプレーがまだきわめて高額なことがある。
調査会社DSCC(Display Supply Chain Consultants)の見立てでは、サムスンの7.3インチのフォルダブル有機ELディスプレーの価格は、現在ハイエンドスマホに搭載されている6.2インチのフレキシブル有機ELディスプレーに対して、19年時点で2.5倍の170ドル程度になるという。今後、フォルダブル有機ELディスプレーの歩留まり向上と部材コストダウンによって、22年に100ドル程度まで下落すれば、フォルダブルスマホの価格は1000ドル程度にまで下がってくると想定しており、このあたりが普及拡大時期の目安になるのではないかとみている。
ただし、フォルダブル有機ELディスプレーの技術革新がさらに進めば、20年には13インチのタブレットサイズ、21年には17.3インチのノートPCサイズの投入が見込まれるといい、フォルダブルパソコンなどの新商品が登場してくる可能性が高い。フォルダブルスマホの登場をきっかけに、ディスプレー搭載電子機器のフォームファクターが大きく変わっていくことになりそうだ。
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