日銀による追加緩和の可能性は? 変化する海外・国内の環境
LIMO / 2019年3月7日 19時20分
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日銀による追加緩和の可能性は? 変化する海外・国内の環境
「柏原延行」のMarket View 2019年3月6日
皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。
最近、寒いこともあり、ここ2週連続で週末はワンタンを作りました。たっぷりと中身(餡)を詰め込み、かつ皮が破れない包み方の試行錯誤を繰り返しています。包み方で、大きく食感が変わるところが面白いです。
さて、今週の記事のポイントは以下の通りです。
わが国の10年国債金利の動きをみると、今年に入り、マイナス圏で推移することが多くなっており、これは一部の市場参加者による日銀追加緩和に対する期待の表れである可能性がある(図表1ご参照)。
日銀は、イールドカーブコントロールと資産買入れなどの現在の枠組みでの金融政策を淡々と実行中である。特に、国債保有残高の増加額については、持久力のある金融政策を意識していると思われ、2018年は「約80兆円」というめどを大幅に下回った。
「①ハト派的スタンスに転換している海外中銀の影響」、「②物価安定目標の達成時期が不透明であること」、「③本年は参議院選挙、消費税の引き上げなどの重要イベントがあることから、経済成長・物価の下ぶれを防止する必要性が高いこと」などから、日銀による追加緩和の可能性にも目配りしたい。ただし、日銀としては、円高の進展などへの対応手段として、金融緩和を温存したいという意向は強いと考える。
足元では上昇しているものの、わが国の10年国債利回り(以下、長期金利)は、今年に入り、マイナス圏で推移することが多くなっており、これは一部の市場参加者による日銀追加緩和に対する期待の表れである可能性があると考えています。
図表1:日本10年国債利回り
2018年3月1日~2019年3月4日:日次
拡大する(/mwimgs/1/0/-/img_10e57dfc3af5b40b92bdd73396de474890965.jpg)
出所:ブルームバーグのデータを基にアセットマネジメントOneが作成
現在、日銀が採用している主要な金融政策は、イールドカーブコントロール(含む長期金利のゼロ%程度への誘導)と、国債、ETF(ETFを経由したわが国株式)の買入れです。
長期金利については、図表1で、狭いレンジに誘導されていることがお分かりいただけるので、買入れについて整理します。
まず、国債については、「保有残高の増加額年間約80兆円をめど」 として買入れを行っていますが、2018年の増加額は37.6兆円となっています。2019年に入っても、1~2月の増加額は、(2018年の11.4 兆円に対して)9.7兆円に留まっており、足元までの数字を見る限り、2019年も国債買入れは持久力のある金融政策の観点から抑制的に行われると考えたほうがよさそうです。
次に、ETFについては、「年間約6兆円に相当するペースで増加するよう買入れ」を行いますが、「資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動」します。2018年は、株価の下落局面で買入れ額を増加させた結果、6兆円を超える買入れを行い、2019年も株価動向次第で金額が上下に変動するものと思われます。
このように、日銀は、既に決定済の金融政策を、淡々と継続していると考えています。
しかしながら、ここにきて、現在の金融政策を、一層緩和的に変更する必要があるのではないかと思われる材料が出てきていると考えます。
まず、海外の中央銀行では、ハト派スタンス(景気への配慮を重視し、金融緩和に前向きなスタンス)への転換が目立ってきています。
たとえば、「①米国:利上げ休止とバランスシート縮小の早期停止の示唆、②中国:預金準備率引き下げ、③欧州:ドラギ欧州中央銀行総裁の成長リスクが下方に移行したという発言やプラート同理事のフォワード・ガイダンス修正の可能性への言及、④豪州:豪中銀のロウ総裁による従来の利上げ志向から中立姿勢への転換示唆、⑤インド:インド中銀の1年半ぶりの利下げ」など、各国の中央銀行は、経済の下ぶれリスクに警戒感を強め、ハト派的スタンスが鮮明になっています。
次に、わが国の経済などの状況を考えてみましょう。
日銀が2019年1月に発表した経済・物価情勢の展望レポートで発表された「消費者物価指数(除く生鮮食品)に関する政策委員見通しの中央値」は、昨年10月の同レポートと比較して、2019年度も2020年度も下方修正されました。次の展望レポートは、4月に発表されますが、この時には、2021年度の見通しも発表されると思われ、2021年度でも物価安定の目標2%が達成できない見通しになった場合、現在の金融政策を淡々と実行するだけでは、日銀に対する風当たりが強くなる可能性があります。
最後に、2019年は参議院選挙、消費税の引き上げなどの重要イベントがあることから、経済成長・物価の下ぶれを防止する必要性が高いことは、皆様がご承知の通りです。
現状、今年の前半に、日銀が追加緩和することはメインシナリオではありませんが、一定の目配りが必要であると考えます。ただし、日銀としては、円高の進展などへの対応手段として、金融緩和を温存したいという意向は強いと考えます。
(2019年3月5日 9:30頃執筆)
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