ビジネスを「再定義」する経営〜事業短命化への処方箋
LIMO / 2019年3月10日 21時15分
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ビジネスを「再定義」する経営〜事業短命化への処方箋
成長し続けるビジネスの仕組みである「ストックビジネス※」についてお伝えしていく本シリーズ。今回は、事業の寿命を延ばすポイントを紹介します。
※ストックビジネスとは「連続性があり、時間経過とともに収益が積み上がるタイプのビジネスモデル」のことです。
商品サービスの寿命は短くなる一方
「10年後のことはわからない」と口にするものの、かつては事業が軌道に乗るとその先20年は安定成長を見込めました。
でも今は違います。以前は、新しいサービスを作ろうとすれば、提供方法や調達方法、決裁方法などの構築に時間もかかり参入障壁にもなりましたが、今では何でも安く便利に組み合わせて使えるようになったことで参入障壁が劇的に低くなったのです。
その結果、商品サービスの寿命が昔が20年なら、今ではその半分になったのではないかと思うのです。つまり、同じ商品・サービスが10年以上右肩上がりの成長曲線を描けるとは思えなくなって来ました。社長仲間で話すと、みな同じように悩んでいます。
事実、私の提供しているサービスの一つにレンタルオフィスがありますが、もともとは気長に20年~30年以上はやれた事業の一つです。しかし、3年ほど前に業界を代表する2社が事業譲渡しました。つい数年前まで会社案内に業界1位とも書いていた会社がです。
そしてご存じのように米国発のWework(ウィーワーク)が昨年日本で急拡大して、コワーキングスペースという新しいオフィス賃貸事業が主流となるような環境に一変したのです。
今やこういう現実があちこちで起こっています。私たちの働ける期間がどんどん延びていく一方で、商品サービスの寿命が10年縮むという厳しい現実。そんな中で、どうすれば安心して仕事を楽しめるのでしょうか。
「事業の短命化」という現実に立ち向かうには
たとえば、30代で起業して引退が80歳(笑えない事実)とすれば、生涯1つのスキルで幸せに終えるなどという甘い夢はなくなってしまいました。
その代わり、経営者は自分で作った事業を、自分で作り変えて行くスキルが必要になりました。私が会社を継続的に成長させられる経営者になるための「ストックビジネスアカデミー(http://otaketakahiro.com/academy)」で教えているのはこの対処方法です。
端的に言って、事業が短命になっている現実に立ち向かうには、事業を「再定義」する能力が必要です。
今ある事業や商品サービスを「再定義」して新しい価値を付加していくのですが、ポイントは「本質的な価値」を見極めることと、「長期的な視点」で成長市場に出口を作ることです。現在の商品サービスの本質的な価値を再認識しながら、その周辺で起こっている長期的な課題を見つけて「再定義」するのです。
貸し会議室事業を「再定義」すると?
私が手掛けて最近成功した例があるのでご説明します。
アットビジネスセンターというブランドで手掛けている貸し会議室事業があります。競合も増える中で、このスペースを違う使い方で新しいサービスを提供することはできないものかと考えていました。
実は同じようなことを考えている同業他社も過去にはいろいろ試していたのですが、これといって上手くいったところはありませんでした。一時的な仕事場所にしたり、近隣女子社員のお弁当を食べる場所にしたり、自習室にしたり、スペースを活かすアイデアを試していたのです。
いよいよアイデアも出尽くした時に、ストック思考のワークシートを使って考えてみました。すると長期的視点の項目(世の中のトレンドを社会、業界、地域に絞り込んで考える)の中に「WEB会議難民」というキーワードが浮かんできました。
世界的にはWEB会議を利用するビジネスパーソンが爆発的に増えています。日本も同じです。場所にとらわれず打ち合わせが可能なWEB会議は、テレワークには必要不可欠なツールとなってきました。
一方で、カフェでは携帯電話と同じようにWEB会議は禁止の方向に進んでいます。実際にカフェでなんとかやってみようとしても、店員の目、お客の目、うるさいBGMと障害だらけです。
「ここではやめて下さい」と言われた方も多いと思います。まさにWEB会議難民の避難場所が必要です。
2018年にはJR東日本と東京メトロにより、駅構内でブース型のWEB会議場所の実証実験が開始されていますが、ブース型は狭いし価格も高い。この不具合を解決するために、既存の資産である今の貸し会議室を「再定義」しました。
それが「ひとり会議室」。オープンな空間を共用する方式を採用すれば、大きな会議室を相席で利用することで30分100円、以降は200円という破格の値段で提供が可能です。
そして生まれた新サービス「ひとり会議室」は、利用後調査結果でも満足と答えた方が95%以上という結果になりました。これでまた貸し会議室というストックビジネスの永続期間が延びたわけです。
長期的視点を利用して既存事業を「再定義」するストック思考によって、ストックビジネスを永続させる。このスキルこそ短命化する事業への処方箋です。
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