三つ子の次男を死なせた母親は他人事じゃない! 過酷な多胎児の子育て環境
LIMO / 2019年3月21日 18時20分
三つ子の次男を死なせた母親は他人事じゃない! 過酷な多胎児の子育て環境
先日、あまりにも痛ましく、胸を締め付けられるニュースが飛び込んできました。生後11カ月の次男の泣き声にいら立ち、床にたたきつけて死なせたとして、愛知県に住む次男の母親に傷害致死罪で懲役3年6カ月の実刑判決が言い渡されました。なお、弁護側は控訴する方針です。
報道によると、今回の事件の判決理由は「無抵抗、無防備の被害者を畳の上に2回たたきつける態様は、危険性が高く悪質」だったというもの。しかし不妊治療を経て三つ子を授かったというこの母親は、当時次男を含めた三つ子をワンオペ育児しており、うつ病の状態でした。また同居をする夫(三つ子の父親)は産後、育休を取得していましたが、事件当時は仕事復帰をしていたそうです。
この母親に対しては、かつて子育てを経験した人、そして現在子育て中の人からは「情状酌量の余地があるだろう」「父親は何も問われないのか?」と同情的な声が集まっています。今回の事件について、育児をしている人も、していない人にも考えてみてほしいことについてまとめました。
そもそも多胎児についての情報があまりにも少ない
排卵誘発剤や体外受精などの不妊治療によって、双子以上の多胎児の出生数が増加しているのは、すでに世界的に周知の事実となっています。日本では不妊治療が始まった1983年から多胎児の数は急上昇。ここ数年で少子化により、出産総数自体は減少しているにも関わらず、多胎児の数はほぼ横ばいとなっています。
このように多胎児の数は増加しているにも関わらず、多胎児を取り巻く育児環境が改善されているとは言えない現実があります。出産リスクや成長スピードなどに関する情報の少なさ、多胎児に特化した支援の乏しさを指摘する声も少なくありません。実情に行政がまったく追いついていないのです。
またこうした多胎児に関する情報の少なさが、親を追い詰めてしまうことがあります。実際に経験しなければその辛さがわからないため、相談先も限られてしまいます。また第三者から見れば「育児が一気に終わる」「お揃いの服を着て可愛い」「にぎやかで楽しそう」と楽観視される側面も強いため、共感の少なさから「子育てが辛いと思う自分がおかしいのではないか」と、親が罪悪感を抱え込んでしまうリスクが高くなります。
おせっかいなほどの行政サポートの実現を
また、精神的にも経済的にも負担の大きい多胎児家庭。現在の日本社会では、収入のために父親が懸命に働き、なかなか家事育児のサポートができなかった点については責めきれない部分もあると感じました。
しかし子どもたちの育児の担い手が母親一人となれば、その疲弊は想像を絶します。今回の事件でも、母親は1日24回のミルクをあげ、睡眠時間は1時間程度だったそう。母親本人の資質や性格の問題ではなく、人間のキャパシティにおいて三つ子をワンオペで育児するというのは確実に無理があるでしょう。
たとえ地域の育児サークルやサポート教室などが開催されていたとしても、乳児を2人、3人と抱えての外出はあまりにも過重労働です。またそんな外出をする時間があったら、家で少しでも睡眠を取りたいと思うのは、育児経験者ならわかるでしょう。これは育児に限らないことですが、そもそものエネルギーがなければ、外部にSOSさえ発信できないことが往々にしてあります。
そのため多胎児家庭には、自ら情報を取りに行ったり外出したりしなくてもいいように、定期的かつ頻繁な家庭訪問、ベビーシッターや一時保育の無料利用といった行政支援が、早急に実現されるべきではないでしょうか。
助けの求め方がわからなくなっている
今回の事件では、多くの母親が「自分もこの三つ子のお母さんのようになっていたかもしれない」と感じたことでしょう。現状では子育て負担のほとんどが母親だけにのしかかっている日本社会。多くの母親が、精神的にも肉体的にも負担の限界に達するギリギリのところで踏みとどまっているのです。
その負担が限界に達する前に、私たちは誰に、そしてどのように助けを求めたらいいのか。さまざまな事情で夫や両親、友達にも頼れない場合には、どのような助けの選択肢があるのかといった切実な問いが、子育てをするすべての母親に突き付けられたような気がしました。
今回の事件は、三つ子の母親個人の問題ではなく、日本全体の問題。今後もこのような悲しい事件が起きないよう、母親だけに負担を押し付けない、より建設的で多角的な子育ての解決策を進めていくことが急務となるでしょう。
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