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最終赤字予想の吉野家HD、「値上げしない」は限界か

LIMO / 2019年3月30日 12時0分

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最終赤字予想の吉野家HD、「値上げしない」は限界か

2019年に120周年を迎えた牛丼チェーンの「吉野家」。同チェーンを展開している吉野家ホールディングス(吉野家HD)は、業績面で厳しい状況に置かれています。安くておいしい、温かい食事がいただけると定評のある吉野家ですが、今後において値上げはあるのでしょうか。業績資料などを基に見ていきます。

売上高好調でも収益が苦しいワケとは

2019年1月10日に発表された2018年Q3累計(3-8月期)決算に公表された2019年2月期通期の業績予想は、(親会社株主に帰属する)当期純損益11億円の赤字が見込まれています。

年間売上高2000億円を誇る外食チェーンが赤字というだけでも驚きですが、吉野家HDは増収にもかかわらず赤字を余儀なくされています。

主な原因として、原価率の上昇や人件費の高騰が挙げられます。吉野家HDだけではなく、他の国内外食チェーンにおいても大きな課題となっています。

今後吉野家HDは、もはや構造問題といってもよい人件費高騰を乗り越えて、復活を果たす事ができるのでしょうか。

売上高も増えるが、販管費もまた増える

吉野家HDの2018年3-11月期の売上高は、1500億円と前年同期比+2%増となりました。しかし営業損失は5億6200万円、純損益は15億5800万円の赤字です。店舗撤退などによる減損損失の発生や、人件費の高騰が響きました。

吉野家HDに限らず、直営店主体の上場外食チェーンの多くは増収基調にあります。「すき家」や「なか卯」などを展開するゼンショーホールディングスや「松屋」で有名な松屋フーズホールディングスなども、足元の「売上高」は好調です。

一方で、牛丼・牛めしチェーン店には限りませんが、事業運営にパートやアルバイトなどの人手を多く必要とする企業であれば、人件費の高騰により、販売管理費は圧迫されます。

人件費関連には採用や教育などの費用も含まれますが、その増加には時給額の上昇が大きく影響を与えています。実際の時給がどの程度で推移しているのか、東京都の最低賃金(時給)の推移を見てみましょう。

東京都の最低賃金は10年前の約30%増に

下記が、東京都の最低賃金(時給)の1998年(平成10年度)以降5年毎の推移と2018年度(平成30年度)賃金水準です。

平成10年度(1998年度):692円

平成15年度(2003年度):708円

平成20年度(2008年度):766円

平成25年度(2013年度):869円

平成29年度(2017年度):958円

平成30年度(2018年度):985円

さて、年度ごとに見ていくと、平成12年度(2000年度)に703円となって以降、平成21年度(2009年度)の791円まで700円台を維持していました。

ところが、平成22年度(2010年度)に821円と800円台に突入し、平成27年度(2015年度)には907円、さらに平成29年度には958円へと上昇しています。

最低賃金は10年間で、約30%増加しています。ざっくりといえば、企業が支払うアルバイト代は、10年前に比べて3割上昇しているともいえるのです。

値上げがしにくいメニュー構成

企業努力で追いつかないコスト増は、価格に転嫁するのが健全な経営判断といえます。しかし、現実はそうたやすくはありません。

吉野家は2014年の消費税増税もありに、牛丼並盛を280円から300円へ値上げし、その年の12月には300円から380円へとさらなる値上げを断行しました。その結果、客数の大幅な減少を招きました。

「人件費が上昇しているので、値上げは当然だろう」という声もあろうかと思います。

しかし、鳥貴族は2017年に一律280円商品を298円に値上げし、客離れが発生。その後も業績の悪化が続いています。外食店にとって、値上げは鬼門であることに違いありません。その中でも単品および単一価格の店舗の場合、値上げのインパクトが大きくなるため、吉野家や鳥貴族は不利な一面を有しています。

外食チェーンのビジネスモデルは限界か

これまでほとんどの外食チェーンは、社員店長の下に低コストのパートや学生アルバイト、というビジネスモデルで多店舗展開を行ってきました。学生にとって外食店は重要なアルバイト先の1つであり、外食店にとっても学生は重要な人材の供給源でした。

しかし少子高齢化でアルバイトの絶対数が減少していることに加え、最低賃金の上昇や深夜における「ワンオペバイト」などのアルバイトのイメージも悪化しています。もはや、低コストでアルバイトが採用できない時代です。

今後は、セルフレジの導入を始め、様々な形で店舗スタッフの負担軽減を行うことで省人化も進めていくことができるでしょう。また、多くの外食チェーン店では外国人労働者を積極的に採用しています。

外国人労働者を取り入れながらこのままのビジネスモデルで突き進むのか、新たな一手に出るのか、はたまた値上げするのか。日本の外食産業の将来を占う上でも、同社の価格政策は注目を浴びるのではないでしょうか。

【参考資料】

吉野家HD「2019年2月期第2四半期決算説明会」

厚生労働省 東京労働局「東京都最低賃金改正経過一覧」(https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/var/rev0/0146/8467/2017824143445.pdf)

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