夫に頼れる「家庭最優先」の国、ニュージーランドの出産・家事・育児
LIMO / 2019年4月19日 20時15分
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夫に頼れる「家庭最優先」の国、ニュージーランドの出産・家事・育児
「カップル」――ニュージーランドで暮らしていると、これは社会における1つの単位だと感じます。たとえば、カップルのうちの片方がパーティーなどの集まりに招待されれば、相方が招待されたも同じこと。2人そろって参加するのが通例です。
カップルでの行動は外出時に限りません。日常生活においても、「二人三脚」は変わらないのです。家事でも、出産でも、子育てでも、子どもの教育でも、同じようにカップルが一緒に取り組むのがニュージーランド流といえるでしょう。
「キーウィ・ハズバンド」は我が家のスーパーマン?
ニュージーランドといえば、鳥のキーウィを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。キーウィには「飛べない」以外にも面白い特徴があります。オスが卵を温め、ヒナをかえすのです。
一方でニュージーランド人男性はどうかといいますと、これまた多くが料理や掃除などの家事全般を苦もなくやってのけます。こんな風に家庭的な男性たちを、キーウィのオスが持つ習性になぞらえ、「キーウィ・ハズバンド」と呼んでいます。
キーウィ・ハズバンドが生まれたのは、共働きが一般的で、家庭内でこの仕事は男性がやるべき、あの仕事は女性がやるべき、というくくりがとてもゆるいからかもしれません。反対に、女性がちょっとした大工仕事など男性の仕事と考えられがちことをこなす姿もよく見受けられます。
特に妊婦にとって、キーウィ・ハズバンドの存在は大きなものです。たとえば筆者の場合、仕事を終えて疲れて帰った時に、よく夕食を作ってもらいました。高校を卒業すると1人暮らしを始めるので、男性も料理のイロハがわかっているのです。あれこれ指図しなくても、食事がテーブルに並ぶのはことのほかありがたかったです。
定期健診も「両親学級」もカップルで
家庭内の役割分担があまり明確ではないとはいえ、子どもを産むのは女性にしかできません。だからといって、妊娠・出産・子育てを女性にまかせっきりというのでは、キーウィ・ハズバンドの名がすたるというもの。彼らは子どもに関すること全般にも積極的に携わります。
たとえば妊娠時の定期健診。男性が付き添うことも珍しくありません。おなかの子どもが少しずつ成長していくのに興味津々です。妊婦の調子が万全かどうかも気にします。
初産の時に通う、いわゆる「母親学級」も同じこと。母親だけでなく父親も一緒というのが一般的なので、むしろ「両親学級」といったほうが適切かもしれません。筆者も夫連れで参加した口です。
父母共に参加することを意識しているのか、開かれる時間は仕事や夕食を終えてからの夜でした。2人だけで過ごす時間は出産予定日までと限られていますから、大きなおなかを抱えているものの、ちょっとしたデート気分で参加しました。
こうして妊娠期間中から出産・育児に至るまでの過程を2人で共に学ぶことで、カップルとしての結束が生まれます。女性も、パートナーが一緒にいてくれれば、安心感があります。
妊娠・出産はうれしいことではありますが、カップルにとり、ある意味新たなチャレンジともいえます。一緒になってから今まで何事も二人三脚でこなしてきたのですから、妊娠・出産も足並みをそろえて臨みたいと思うのは自然の流れでしょう。両親学級はそんなカップルをサポートしてくれます。
産まなくても、男性は分娩室で大活躍
健診や両親学級に男性が熱心に付き添うのには、大前提として「出産の立ち会い」があるからといえます。これは父親になるための「洗礼」のようなものです。
「陣痛が始まった」と連絡が入ると、仕事を中断して病院にかけつけます。遠征試合に出かけているプロスポーツ選手が子どもの出産に間に合うように海外から急いで帰国したなどという話もよく聞かれます。
男性は分娩室でパートナーの出産を終始サポートします。筆者の夫もうろたえることもなく、積極的に「参加」。筆者が望むお産にできるだけ近づけるよう、体をさすり、好きな音楽をかけ、食べたいというものを用意し、よくやっているよ」と励まし、いつも手の届くところにいてくれました。
出産に立ち会う父親にとり最も大切な「儀式」が、生まれた赤ちゃんのへその緒を切ることです。チョキンと切った瞬間、父親としての喜び、誇り、責任がむくむくとわいてくるそうです。
子どもが生まれてからも、カップルが二人三脚であることに変わりはありません。共に子育てに勤しみ、子どもとの関係を築きます。子どもの面倒を見るにあたって、片方ができないことはもう一方がやるというふうにお互いをカバーし、協力し合います。これは子どもが巣立つまで続きます。
家庭最優先の国では、主夫も普通
子どもが小さいうちは手がかかるので、共働きをいったん中止し、片親のみが働き手となるケースも少なくありません。母親が家庭に残るというケースが多いですが、父親が「主夫」になることも珍しくありません。特に母親の収入が父親の収入を上回る場合はなおのことです。
「男性だから」「女性だから」というくくりがゆるい習慣が幸いしています。なので、誰も主夫を見下すようなことはありません。
ニュージーランドでカップルが二人三脚で子育てができるのは、社会のあり方のおかげです。もちろん、産休をカップルで分け合えたりするなど、法律による助けもあります。しかし規則が決まっていないところで、「家庭最優先」という社会通念が大いに物をいいます。
家庭と家族は、カップルのどちらにもとっても同じだけ大切なものです。片方に任せればいいというものではありません。2人が共に慈しみ、手をかけ、守るものなのです。
ニュージーランドは多民族国家ですが、この認識は、性別は言うまでもなく、社会的地位や経済状態、宗教、習慣などを超えた国民の共通認識です。家庭を最優先に考える社会が、カップルの「二人三脚」を後押しします。
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