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大低迷のコンビニ株価、一気に社会問題化した24時間営業の是非

LIMO / 2019年4月12日 21時15分

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大低迷のコンビニ株価、一気に社会問題化した24時間営業の是非

岐路に立つ株式市場の主力株

コンビニ株低迷、大手3社は連日の年初来安値更新も

コンビニ各社の株価が低迷しています。4月11日は久々に反発したものの、前日(4月10日)には大手3社が揃って連日の年初来安値更新となる低調ぶりでした。

2018年12月末(終値)と4月11日(終値)を比較すると、最大手のセブン&アイ・ホールディングスが▲18%下落、業界2位のユニー・ファミリーマートホールディングスが▲20%下落、業界3位のローソンが▲14%下落、業界4位のミニストップが▲13%下落となっています。この間、日経平均株価とTOPIXはいずれも+8%上昇しましたので、それだけコンビニ株の不振が際立っていると言えましょう。

このコンビニ各社の株価低迷は、今年10月からの消費増税(現在の8%→10%へ)による景気悪化を織り込んでいるという見解があります。なるほど、“株価はファンダメンタルズ実態から半年先行する”とよく言われます。これが正しいかどうかは議論がありますが、増税による10月からの個人消費低迷を半年前から織り込むとすれば、現在の株価低迷は納得できないわけではありません。

ただ、他の小売株も同様に、あるいは、それ以上に低迷しているはずです。しかしながら、百貨店、専門小売店、家電量販店などでコンビニ株ほどの低調を確認することはできません。

確かに、個別企業で見れば、三越伊勢丹ホールディングス(▲13%下落)やビックカメラ(▲15%下落)のようにコンビニ各社と同等の株価低迷を強いられているものもあります(上記と同じ期間)。

ただ、三越伊勢丹ホールディングス以外の百貨店株は市場平均並みのパフォーマンスであり、ビックカメラ以外の家電量販店株も同様です。つまり、全社が大きく下落したコンビニ株とは決定的な違いがあるのです。こうした点からも、小売株の中においてコンビニ株への売り圧力が圧倒的に大きいのは明白です。

やはり、コンビニ株の低迷には、消費増税の影響のみではなく、コンビニ業界固有の要因があると考えるのが自然でしょう。

セブン&アイHD、ユニー・ファミリーマートHD、ローソンおよびTOPIXの過去3カ月の推移

(/mwimgs/b/e/-/img_bea175b433e67c9d67e7b128c8aa8b5886477.jpg)

拡大する(/mwimgs/b/e/-/img_bea175b433e67c9d67e7b128c8aa8b5886477.jpg)

コンビニ各社の株価低迷の最大要因は「24時間営業見直し問題」

ところで、年初からのコンビニ各社の株価を見ると、3月上旬から急速にパフォーマンスが悪化していることが分かります。特に、最大手のセブン&アイHDでこの傾向が顕著です。

ここでお気付きになった人も多いでしょう。そうです、コンビニ各社の株価低迷の最大要因は、一連の「24時間営業見直し問題」にあると考えられます。

この「24時間営業見直し問題」を簡単に振り返ると、東大阪市のセブン・イレブン(東大阪南上小阪店)が、人手不足のため2月から深夜営業を休止したところ、本部から違約金を請求されたことでオーナー側との意見対立が深刻化したことに端を発します。

その後、コンビニの24時間営業の持続に対する議論が一気に高まり、また、その議論がファミリーマートやローソンなど他のコンビニにも波及しました。この混乱の責任を取る形でセブン・イレブンは社長交代を実施し、経済産業省がコンビニ各社から聞き取り調査を行うなど、ある種の社会問題へと発展しました。

現在、コンビニ各社とも24時間営業の見直し議論を本格化していますが、まだ何も決まっておらず、明確な方向性すら出せないというのが現状です。

さて、この24時間営業見直し問題に関しては、一般消費者と株主を含む投資家では、考え方に大きな違いがあると推測されます。多くの一般消費者は、“別に24時間営業でなくてもいい”、“営業時間短縮やむなし”という考え方なのではないでしょうか。少なくとも、“24時間営業を絶対に維持”と考える人は少数派だと思われます。

しかし、金融市場の投資家(株主含む)は、“24時間営業を絶対に維持”とは主張しないものの、24時間営業を止めることによる業績への影響を強く懸念していると考えられます。

国内コンビニ事業は各社にとって最大の収益源

なぜでしょうか。

その最大の理由は、各社とも国内コンビニ事業が大きな収益源となっているからです。具体的に、先日発表されたセブン&アイ・ホールディングスの2019年2月期決算を見てみましょう。同社の営業利益は約4,116億円となり、過去最高を記録しました。

その内訳は、国内CVSが2,467億円(構成比60%)、海外CVSが923億円(同22%)、金融事業が529億円(同13%)、スーパーストア事業が212億円(同5%)、その他131億円(同3%)、連結調整▲145億円でした。海外コンビニ事業も徐々に伸びているとはいえ、依然として国内コンビニ事業が稼ぎ頭です。

これは、数字に多少の違いはあれども、ユニー・ファミリーマートホールディングスやローソンも全く同じ構造です。

営業時間短縮の影響は簡単には試算できない

では、24時間営業が見直され、営業時間短縮が本格化すると、国内コンビニ事業の収益は悪化するのでしょうか? もちろん、その短縮時間や実施地域にもよりますが、各社とも正確には把握できていないと思われます。だからこそ、各社とも店舗限定の試験的な時間短縮などに踏み切っているのでしょう。

ご存じの通り、現在のコンビニは、ただ単に商品を販売するだけではなく、様々な業務を手掛けています。そのため、たとえば、真夜中の営業時間を休止した場合、その間の人件費を要しない等という、単純な試算が通用しないのです。実際、その場合でも、店舗の運営コストに大きな違いはないと考えられます。そのため、営業時間短縮による売上減少の影響は予想以上に大きくなるという見解があるのも事実です。

コンビニ株の下落は早期の問題解決を促す資本市場からの「催促」

こうした複雑な国内コンビニ事業に関しては、金融市場の投資家も十分理解しているはずです。多くの投資家が最も懸念していることは、“24時間営業の見直しで収益が悪化する”という単純で短絡的なものではなく、この問題による混乱が長期化することではないでしょうか。

3月上旬からの厳しい株価下落は、“収益の柱である国内コンビニ事業が抱える営業時間短縮問題を早く解決し、明確な方向性を示せ”という資本市場からの「催促」と見るのが自然だと思われます。逆に言えば、この問題の解決が長引けば長引くほど、株価回復も遅れるということでしょう。

コンビニ事業だけでなく、コンビニ各社の株価も大きな岐路に立っていると言えそうです。

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