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介護士不足には外国人より介護保険料値上げで対応すべき

LIMO / 2019年4月28日 20時20分

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介護士不足には外国人より介護保険料値上げで対応すべき

「やりがい搾取」を放置する?

介護士の不足を解消するためには、外国人介護士を受け入れるよりも、日本人介護士の給料を引き上げるべきで、そのためには介護保険料を値上げすべきだ、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は説きます。

介護士不足は介護士の給料が安いから

物の値段は需要と供給の一致するところに決まります。この値段を「均衡価格」と呼びます。労働力の価格である賃金も同様で、労働力の需要と供給が一致するように決まるはずです。これを「均衡賃金」と呼びましょう。

前回の拙稿『最低賃金の引き上げで「情報弱者」を救おう(https://limo.media/articles/-/10685)』では、均衡賃金を提示すれば労働力不足という問題は起きないはずだ、と説きました。つまり、「労働力不足なのは、雇い主が均衡賃金以下の時給で募集広告を出しているからだ」ということであり、それはつまり、「労働力不足が生じているのは雇い主が均衡賃金を正しく理解していないからだ」というわけですね。

しかし、介護士の場合は事情が異なります。政府から支給される予算が決まっているので、均衡賃金を下回った水準であることを知りながらも、それ以上の賃金が提示できないのです。

原因は介護保険料が安すぎること

介護士が不足していますから、介護を必要としている人でも介護が受けられていない人がいます。これは政府としての義務を果たせていない、ということですから問題です。そしてその原因は、その政府に対して我々が払っている介護保険料が安すぎることにあるのです。

ここで今ひとつ重要なことは、均衡賃金以下の給料でも働いている介護士が存在している、ということです。彼らの多くは、おそらく自分たちの賃金が低すぎることを認識しながらも、他人の役に立つというやりがいを感じられるがゆえに介護士を続けているのでしょう。

この状態は、政府が介護士を「やりがい搾取」しているということになります。そしてその原因は、繰り返しになりますが、その政府に対して我々が払っている介護保険料が安すぎることにあるのです。

介護サービスの質を下げる、外国人を受け入れる等の選択肢はあるが・・・

選択肢の一つとして、介護サービスの質を下げることが考えられます。たとえば入浴回数は必要最低限にとどめる、といったことを徹底するわけです。

運が良くて介護が受けられる人と、運が悪くて介護が受けられない人が存在している現状は望ましいものではないので、介護サービスの総量は変えずに、一人当たりが受けられる介護サービスの量を減らして介護サービスが受けられる人数を増やそう、というわけですね。

そうすれば、介護が受けられない人は減るでしょう。介護保険料の値上げも不要ですから、国民は安堵するかもしれません。しかし、介護士の給料は上がりませんから、「やりがい搾取」は続きます。

外国人介護士を受け入れる、という選択肢もあるでしょう。もちろん、日本人介護士より低い給料ということでは日本人介護士の給料がさらに下がってしまいかねませんから、日本人並みの給料で、という前提です。

この場合には、介護を受ける人々は満足するでしょうし、介護保険料の値上げも小幅で済むかもしれません。介護士の人数は増えますが、一人当たりの人件費は上がりませんから。しかし、介護士の「やりがい搾取」は続きます。

「やりがい搾取」を止めるには、日本人介護士の給料を上げる必要

重労働で、かつハラスメントを受けたりするなど労働環境が悪いのに、給料が一般の労働者よりも安い、ということが介護士不足の主因だ、ということだと筆者は理解しています。

労働環境を変えるという選択肢もあるのでしょうし、もしかすると必要性の薄い介護サービスが提供されているケースもあるのかもしれませんが、筆者は介護の現場を知りませんので、無責任なことは言えません。本稿では労働環境の悪さに見合った給料を支払うことで介護士不足の問題を解決する、という方向で考えたいと思います。

そうなると、相当大幅な介護保険料の値上げが必要となるかもしれません。今よりも高い給料を、今よりも多くの介護士に支払うわけですから。しかも、今後団塊の世代が後期高齢者になって要介護者が増えていくことも見込まれます。

つまり、我々は比較的大幅な介護保険料の引き上げを覚悟する必要がある、ということですね。もちろん、決して嬉しい話ではありませんが、仕方ないでしょう。さすがに良識ある日本国民は断らないだろう、と筆者は信じています。

それを断るということは、「我々は介護保険料の値上げは拒否する。その結果として、介護を受けられない人が増えようと、介護士の「やりがい搾取」が続こうと、それは我々の知ったことではない」ということなので。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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