地方に生まれたのはハンデ!? 都会人が知らない教育・文化格差
LIMO / 2019年4月17日 11時45分
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地方に生まれたのはハンデ!? 都会人が知らない教育・文化格差
ビジネス、今日のひとネタ
東京など都市部の大学への過度な学生の集中と、それに対する政府の対策が話題となっています。教育に関しての充実した施設が都市部に多く地方に少ないことが大きな原因となっていますが、政府が決定的な対策を打てていないのが現状です。
しかし、地域格差の問題は教育面にとどまりません。たとえば、文化と触れるきっかけを与えてくれる、地方の大きな書店が閉店してしまうというニュースが最近も反響を呼びました。
この記事では、都市部に住む人には意外なほど知られていない、教育や文化の面でも確実にある「地域格差」について見ていきます。
教育面での深刻な格差
まずは、地域格差問題において大きく取り上げられることが多い、教育に関する格差です。
大学について見ると、東京など都市部の大学が人気を上げ続ける一方で、地方での大学では定員割れとなるところもあり、教育の地域格差として大きな問題となっています。政府は東京の私立大学の定員を減らすことを促すなど、さまざまな対策をとっていますが、地方の大学にも多くの学生が集まるようにするための決定打にはなっていません。
では、なぜ多くの学生は、都市部の大学に行きたいのでしょうか? 教育や卒業後という面から見ると、やはり都市部のほうが学びやすい環境であり、また企業なども集中していて就職するにも有利だからというのはあるのではないでしょうか。
たとえば、大学図書館の蔵書数ランキング上位は、都市部の国立大学と東京・京都の私立大学に限られていますし、企業数も東京・大阪・愛知の三都府県だけで全国の約25%までにのぼります。
私立小学校は東京に全国の4分の1が集中
また、幼少期からの教育に関しても、都市部のほうが発達しています。
たとえば、教育環境などの点で公立より恵まれていることも多い私立小学校は、全体の約25%が東京に集中しています。たとえば地方から都市部に出てきた学生が、大学卒業以降も都市部で暮らし続けるとすると、自分の子どもにも幼いころから教育を受けさせやすいというのはあるでしょう。
教育に限っても、このように「都市部に住みたくなる理由」はあるようです。
地方の大型書店の閉店
紀伊國屋書店弘前店は、2019年3月26日に「閉店のお知らせ」を店内に貼り出し、5月6日に閉店することを発表しました。東北初の紀伊國屋書店として1983年に開店したこの店舗は、他県からもお客さんが足を運ぶような大きな店舗だったのですが、ネット書店の発達なども影響してか、売上が伸び悩んでしまったようです。
書店は全国的に見ても、閉店が続いてしまっているのが現状です。しかし、同店のような他県からも足を運んでもらえる品揃えの多い書店が失われるということは、近くの小さな書店に足を運ぶ人が増えるかもしれない一方で、よりネットへの移行を加速させるかもしれません。
「地方に生まれた」という理由だけで、本に触れるきっかけが少なくなってしまうとすれば、非常に残念なことです。
地方から都会に出てきた人は
北海道・釧路の高校から東京大学に進学し、文学研究者として活躍している阿部幸大さんは、『現代ビジネス』の「『底辺校』出身の田舎者が、東大に入って絶望した理由」という記事にて、
「田舎では貧富にかかわらず、人々は教育や文化に触れることはできない」
「書店には本もそろってない」
など、地方では教育や文化に触れるきっかけ自体が限られている状況だと吐露しています。また、
「大学レベルの教育を受け、文化的にも豊かな人生を送れたかもしれない田舎の子供たちの多くが、その選択肢さえ与えられないまま生涯を過ごすことを強いられている」
とも語っています。
ネット上では、この記事に対して、同郷とみられる人たちからも「表現が大げさではないか」という指摘があったりもしましたが、格差が広がることで、「知るきっかけ」自体が失われて、さらに大きな格差になってしまうということが実際に起こってしまっているというのです。
地域格差問題は経済問題にとどまらない
こうした点については、地方から出てきた一般人からも、
「東京のほうが人脈が広がる」
「娯楽が多いから楽しい」
といった、さまざまな面での都会の良さを伝える声が上がっています。
地方と都市の格差が広がることによって失われてしまうものは「機会の平等」です。仮に教育を受けられる場所・文化に触れられる場所があっても、利用する人が少なく、収入が少なければ、そうした場所はつぶれてしまいます。それによって、さらに格差が拡大していくという悪循環に陥ってしまいます。
真っ先に「見直し」の対象に
以前であれば、地方でも財政的に余裕のある自治体では、教育や文化の部分にも公的な支援が多くなされていましたが、現在、多くの自治体では、人口減少と高齢化が進むことによって、財政がさらに苦しくなっています。もはや右肩上がりで経済が伸びていく時代ではなく、長期的にも、税収が減る一方で、医療費や高齢化対策費は増えていかざるを得ないとみられています。
こうして自治体財政が苦しくなっている中では、教育や文化などの「短期的にわかりやすく利益を生まない部分」には、ますますお金をかけづらくなります。それどころか、真っ先に「見直し」の対象に選ばれてしまいます。
しかし、この悪循環を止めなければ、ただ「地方に生まれた」というだけで、子どもたちがさまざまなものに触れる機会すら奪われてしまいます。都市部に住む人たちを含め、こうした現状をまず認識しつつ、より多くの知恵を集めていく以外に、方法はないのかもしれません。
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