5Gスマホは市場回復のカンフル剤となるか
LIMO / 2019年4月23日 20時20分
5Gスマホは市場回復のカンフル剤となるか
アップルはクアルコムと和解、20年の対応機種投入にめど
日本国内でも携帯電話事業者に対し、5G(第5世代通信)の割り当て(アロケーション)が行われたが、世界各国では一足早く5Gの商用サービスが動き出した。スマートフォンでも5G対応機種が各社から発売されており、盛り上がりを見せている。端末ベースでは2020年から本格的に普及するとみられ、市場回復のカンフル剤として期待が高まっている。中国では補助金政策がカギを握るとされているほか、アップルはクアルコムとの和解を決断し、20年に対応機種を市場投入するめどをつけた。19年を底にして、スマホ市場は20年から再びプラス成長の軌道を描くことができるか、注目されるところだ。
日本でも20年から本格運用
19年に入り、米国および韓国で5Gの商用サービスがスタートした。今後も各国で商用サービスが動き出すとみられ、計測器メーカー大手のキーサイト・テクノロジーによれば、83カ国・200の事業者が5Gの商用化に取り組んでおり、うち48カ国・90の事業者が22年より前に5Gサービスを立ち上げる見込みだ。日本でも今年開催予定のラグビーワールドカップでプレ商用サービスが動き出し、20年の東京五輪で本格運用が始まる見通しだ。
こうした動きに伴い、スマホ各社も5G対応機種を続々と発表している。ファーウェイはフォルダブル端末で5G対応の「Mate X」を19年2月に発表したほか、シャオミーも製品を発表。OppoやVivoも製品投入を予告している。サムスンも「Galaxy S10 5G」でサポートを開始する。
アップルはインテルと決別
一方のアップルは、これまで5G対応の遅れを指摘されていた。アップルは近年、モデム部のベースバンドプロセッサーをインテルから調達していたが、開発競争で後手に回り、20年の5G対応にも黄信号が灯っていた。
アップルは長年、クアルコムからモデムの調達を行っていたが、特許訴訟を巡る対立関係からインテルに調達先を切り替えた経緯がある。そのなかで、アップルは4月16日にクアルコムとの和解を発表。6年間のライセンス契約で合意するという急転直下の展開となり、5Gモデムの調達にめどをつけた。
これにより、20年のiPhone新機種は5G対応の確度が一気に高まった。アップルは19年に前年比で1割近いスマホの台数減が見込まれており、5G対応を機に販売台数の回復を図っていきたい考えだ。クアルコムとの和解によって、インテルは唯一のモデム供給先を失うことになり、アップルとクアルコムの和解の公表と同じタイミングで、5Gモデムからの撤退を発表した。
5Gモデムの供給メーカーとしては、クアルコムが業界をリードする。内製メーカーとしてはファーウェイ、サムスン電子が名を連ねるが、純粋な外販ベンダーではクアルコムしか選択肢がないのが現状だ。メディアテックは19年には間に合わず、20年にずれ込む見通しだ。
導入インパクトの大きいミリ波だが……
現状で、商用サービスがスタートした5Gは6GHz以下の周波数帯、いわゆる「サブ6」だ。今後は、28GHz/39GHzなどの「ミリ波」領域の商用化が焦点となるが、特徴の1つである直進性などが課題となり、克服しなければならない点も多い。
ミリ波の導入はハードウエアの観点ではアンテナ部の高度化や、ミリ波モジュールの追加搭載などプラス要素が大きい。ただ、現状で導入を予定しているのは日本、韓国、米国の3カ国で、中国はサブ6対応にとどまっている。FWA(Fixed Wireless Access=固定無線アクセス)など限定的なアプリケーションで導入が進んでいるものの、今後スマホのような携帯端末で導入が本当に進むのかどうか、懐疑的な見方も多い。
中国補助金政策などで20年は1億台超えも
中国では5Gの導入を受け、携帯電話事業者に対する補助金政策が打ち出される公算が強まっている。購入者負担が3000元前後となるような補助金設定を打ち出すとみられ、停滞していた中国スマホ市場を活性化する役割が期待されている。
19年の世界全体に占める5G対応スマホの出荷台数見通しは、全体の1%にも満たない1000万台程度とみられているが、補助金の効果が出てくる20年には1.2億台と、全体の1割弱を占める可能性が出てきた。スマホ市場全体の台数も18年、19年と2年連続でマイナス成長となる見通しだが、20年は5Gが一定の効果を果たして、プラス成長に転じる見通しだ。
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