社会人の「いい借金」と「悪い借金」 父が娘に伝えたいお金の話(2)
LIMO / 2019年4月30日 20時45分
社会人の「いい借金」と「悪い借金」 父が娘に伝えたいお金の話(2)
娘よ、もうそろそろ会社に慣れてきたかな。何、まだ研修中で配属も決まっていない!? そうか、ゴールデンウィーク後に正式配属になるのかな。金融の世界では、今年の10連休は戦々恐々なのだが......。
30年間積み立て預金をした大富豪
今から30年以上前になるが、お父さんが会社に入ったころは定期預金の金利が5~6%もあったんだ。当時はバブル前夜で、日本経済が“戦後”から完全復活をとげ、ラストスパートをかけ始めていた時期に重なるな。給料も毎年上がるし、お金を定期預金に入れておけば誰もが自然に資産形成ができた時代だった。
今は大変だ。世界的に低金利になって、預金や国債の利息ではほとんどお金が増えない状況が続くだろう。いつか君も家族を持つかもしれないし、家を買ったり、子供の教育費を負担したりとかいろいろ入り用になる。そういった時、お金がないと困ったことになる。
社会人になったばかりのお前のことだからなかなか分からないと思うが、10年、15年はあっという間に経つものさ。30代前半ともなると、会社では管理職になる同期も出てくるだろう。起業する同僚もいるかもしれん。そして、持っている資産もじわじわ差が開いてくるのがその時期だ。
じゃあ、その資産を作っていくにはどうしたらいいだろう。いきなり投資へ向かうのもいいが、いかんせん元手がない。この間も言ったが、コツコツと給料天引きで積み立てていくのが、結局「急がば回れ」で確実に貯まっていく方法なんだよ。
若くして、車だファッションだ外食だ、と威勢がいいのはいいが、ウサギと亀の寓話と一緒で、結局最後は亀が勝つことになっている。1971年に日本マクドナルドを設立した大富豪の藤田田(ふじたでん)さんは、30年間積み立て預金を続けて1億円貯めたそうだ。お前も、このことを見習ってほしい。
ビジネスには借金がつきものだが
たしか先日は借金についても話したな。そう、個人間の借金はなかなか難しいって話だった。ただ、残念ながらこの世の中では借金なしではビジネスができないことも分かってほしい。
たとえば、君にすばらしいビジネスのアイデアがあったとしよう。究極のダイエット食品だ。それを飲むだけで1週間で体重が5キロ落ち、しかも痩せたい部分だけに効くスグレものだ。
では、その製品を製造して販売するためには、どうすればいい? そう、このダイエット食品を世に出すには、工場で生産しなければならない。つまり、工場を用意するだけのお金がいるわけだ。
さあ、ここでお金がないとどうなる。このアイデアをあきらめるか、借金して工場を建てるしかない。そうなると、誰に借りるかは置いておいて、お金がない君は金策に走り回らないといけないわけだ。最近は外注で商品を作ることもできるだろうが、それとて金を払わないと業者は作ってはくれない。
このように大なり小なり、ビジネスは何事も借金から始まることを知っておいてほしい。
「いい借金」と「悪い借金」
では「悪い借金」ってなんだろう。「悪い借金」とは返せる見込みがないのに借りてしまう借金や、高利の借金のことだ。
さっきのダイエット食品も、最初は売り上げ好調でも、ずっと売り上げが倍々ゲームで伸びていくわけではない。もし、倍々ゲームで伸びていくことを前提で借金をして、工場を増設したり人を雇ったり、はたまた広告宣伝費をかけすぎた挙句、売り上げや利益が落ちてくると、どうなるか。いままで楽に返せていた借金が、途端に返済できなくなるってことだ。
借金を順調に返しているうちは、銀行や金融業者も黙っているが、1回でも返済が滞ると黙ってはいない。返せないとなると、個人資産の差し押さえや自己破産さえも覚悟しなければならない。もっとも、究極のダイエット食品のようなアイデアでポン!と金を貸してくれるところは、ほとんどないだろうけれど(苦笑)。
だから、ビジネスを始めるときは安易に金を借りるのではなく、まず自己資金の範囲でスタートすることを勧めるよ。借金するにしても、そのビジネスの利益の中から返せる範囲でとどめておくべきだ。毎月の返済額が10万円だとすると、最低10万円の利益が出てないと借金は返せない。分かるよな。
こんな話をしていると、その昔銀行員時代に担当していた某駅前の小さな美容院のことを思い出す。そこの若主人はコツコツ預金を積み立てながら、銀行から借りた借金を着実に返済してくれていた。30歳前で自宅も店も構え、たいした若者だと思っていた。
この間そのお店のホームページを初めて見たら、今では関東圏に20店舗以上展開し、東京ガールズコレクションにまで参加する企業になっている。借金をしっかり返して信用を得て企業規模を拡大し、資産もしっかり残しているのだろう。つまり、彼は「いい借金」をしたということになる。
信用 × 勤勉 × 時間、結局これが資産形成の基本なんだ。
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