新時代・令和には日経平均株価の見直しが必須〜”日本代表”が揃わない株価指数
LIMO / 2019年5月1日 20時15分
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新時代・令和には日経平均株価の見直しが必須〜”日本代表”が揃わない株価指数
平成の「日本株低迷」は大きな誤解
平成の30年間、日本の株式市場はどう動いたと思いますか? 多くの人は、”日本株は低迷した”、”日本株の回復の鈍さが目立った”、”日本株の出遅れが目立った”といったネガティブな印象を持っていると推察します。
実はこの認識、数字上では正しいように見えますが、大きな誤解とも言えるのです。
平成の30年間における日経平均株価とNYダウを振り返る
「平成」が始まった1989年1月末と直近の価格(4月23日終値)について、日経平均株価と米国のダウ工業株30種平均(通称:NYダウ)を比較してみましょう。
<日経平均株価>
1989年1月末:31,581円→2019年4月23日:22,259円(▲30%下落)
最高値:38,957円、最安値:6,994円
<米国NYダウ>
1989年1月末:2,342ドル→2019年4月22日:26,656ドル(+11.4倍へ上昇)
最高値:26,952ドル、最安値:2,232ドル
改めて、驚くべき大差がついたことが分かります。この結果だけを見ても、日本株の低迷を証明するに十分と言えましょう。これはNYダウとの比較ですが、他の先進国株式(英国、ドイツ等)や中国を除く新興国株式(香港、インド、ブラジル等)でも、概ね似たような結果になります。
実は東証の時価総額はバブル期を上回る過去最高記録!
一方、株式市場の「実力」を表す時価総額では違った結果となります。東証1部の時価総額は、2018年1月に約682兆円を記録し、バブル期(1989年12月の約590兆円)を上回りました。ちなみに、現在の時価総額はピークから約▲12%減少した約600兆円ですが、それでもバブル期を上回っています。
重要なことなのでもう一度言います。
平成の日本株式市場はバブル期を超えて、過去最高の時価総額を記録しました。今現在もバブル期を超える水準にあります。ちなみに、国別の株式時価総額では、米国が断トツの1位ですが、日本は第3位。しかも、第2位の中国とは拮抗しています。日本の株式市場は今も世界有数の規模なのです。
新規上場銘柄が増加したのは東証だけではない、他国市場も同様
この事実に対して、“平成の30年間で、上場企業が大幅に増えたのだから当然だ”という意見があると思います。確かに時価総額増大の大きな一因ですが、他国の株式市場も同じように新規上場が相次いでいます。日本に限ったことではありません。
また、“大阪証券取引所と統合した影響だろう”という見方もあるでしょう。しかし、2013年7月に統合した時点で、大証“単独”上場銘柄のインパクトは極めて限定的でしたから、大きな理由にはなりません。
バブル期を超えた時価総額と過去最高値に遠く及ばない日経平均株価の乖離
それでは、30年前に付けた最高値から大きく下落したままの日経平均株価との違いは何なのでしょうか。平成が終わろうとしている今、一体、日本株は回復したのでしょうか、それとも、低迷したままなのでしょうか?
結論から言うと、「日経平均株価」という株価指数に大きな問題があります。誤解を恐れずに言えば、日本株の実態を的確に表さない欠陥指数なのです。これをNYダウとの違いから見てみましょう。
ダイナミックかつ臨機応変に構成銘柄を入れ替えて上昇し続けるNYダウ
上昇トレンドが続くNYダウは、頻繁に構成銘柄の入れ替えを行っていることが特徴です。しかも、その時々に合わせて、勢いのある銘柄や、いわゆる“旬”の銘柄を新たに組み入れています。
逆に言うと、業績悪化が続く企業、成長が見込めなくなった企業、市場からの注目度が大きく低下した企業は容赦なく除外されます。直近では、AT&Tが除外されてアップルが新規採用となり(2015年3月)、GEが除外されてウォルグリーン・ブーツ・アライアンスが採用となりました(2018年6月)。
このように、わずか30銘柄の構成ポートフォリオをかなり大胆に入れ替えており、平成の30年間(1989年1月~)で25銘柄の入れ替えが実施されました。その中には、AT&Tのように除外→採用→除外となった銘柄もあります(買収後の社名変更含む)。
こうした構成銘柄の入れ替えに対しては、連続性という観点から異論や批判が少なからずあることは事実です。しかし、常に米国を“代表”する株価指数を堅持するという、強い姿勢も感じられます。こうしたダイナミズムは、米国株式市場の強みと言えましょう。
また、NYダウほど活発ではありませんが、他国の株価指数も銘柄の入れ替えを臨機応変に行っています。
構成銘柄の入れ替えに対して非常に保守的な日経平均株価
一方の日経平均株価はどうでしょうか?
日経平均株価も毎年秋に定期的な見直しを実施していますが、入れ替えなしという年が少なくありません。また、入れ替えたとしても、合併や経営統合に伴う消滅や経営破綻による上場廃止等に伴うものが多く、積極的に“旬”の銘柄を採用する動きは全く見られないのが実情です。
直近では、経営不振のパイオニアが上場廃止となったことに伴い、オムロン(6645)が新規採用となったのが良い例です。パイオニアのような銘柄がその時点まで構成銘柄だったことに驚きを禁じ得ません。
構成銘柄の入れ替えに対して、非常に慎重な、いや、慎重過ぎる株価指数であることは間違いないでしょう。これは、連続性や比較可能性などを重視した結果と推察されます
任天堂、日本電産、オリエンタルランド等は日経平均株価の対象外
もちろん、日経平均株価は東証1部上場銘柄を対象にするなどの選考基準があるため、大昔の大証単独上場銘柄が組み入れられなかった等の経緯は理解できます。
しかし、そういう経緯を考慮しても、任天堂(7974)、日本電産(6594)、村田製作所(6981)、キーエンス(6861)、オリエンタルランド(4661)、小野薬品工業(4528)、ユニ・チャーム(8113)、SMC(6273)、シマノ(7309)、ニトリホールディングス(9843)などの“日本代表”が組み入れられていないことに違和感を覚える人も多いはずです。
一方で、具体的な銘柄名への言及は控えますが、現在の225銘柄の中には、時価総額で1,000億円未満、持続的な成長が見込めない、今後の業界内再編で消滅危機にある、などの銘柄が決して少なくありません。
残念ながら「日本の株価=日経平均株価」は国内外の共通認識
このように日経平均株価は、良くも悪くも変化を好まない保守的な株価指数です。しかしながら、国内のみならず、課外でも「日本株の値動き=日経平均株価」は完全に定着しています。
残念ながら、平成30年間における日経平均株価の動きを見ると、“日本株は低迷した”“失われた30年間”と受け止められても仕方ないと言えましょう。
「令和」の時代は、日経平均株価を日本株の実態を的確に表すよう見直すべき
しかし、NYダウのようにダイナミックに構成銘柄を入れ替えることで、日経平均株価は日本株の実態をより的確に表すことが可能となります。
「令和」という新たな時代では、時価総額でバブル期を上回った日本株の実態を、世界に向けて的確に発信していくことが求められます。それを実現する1つの施策として、「日経平均株価」という株価指数の算出を根本的に見直すことは十分検討に値しましょう。
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