貯蓄に無関心な30代・40代、4.3人に1人が「貯蓄ゼロ」
LIMO / 2019年5月1日 20時20分
![貯蓄に無関心な30代・40代、4.3人に1人が「貯蓄ゼロ」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_10909_0-small.jpg)
貯蓄に無関心な30代・40代、4.3人に1人が「貯蓄ゼロ」
ビジネス、今日のひとネタ
SMBCコンシューマーファイナンス株式会社は、2019年1月7日~9日の3日間、「30代・40代の金銭感覚についての意識調査2019」をインターネットリサーチで実施し、1000名の集計結果を公開しました。それによると、「貯蓄ゼロ円」の人が23.1%にものぼりました。
さらに、この数字は2018年より5ポイントも増加していることから、「貯蓄に関しての意識」が変わってきていることがうかがえます。一体、どうしてこのように貯蓄ゼロの人が増えているのでしょうか。
日本人の貯蓄感覚
貯蓄とは元来、食料に関しての言葉だったのはご存じでしょうか。しかし、貨幣経済になり、その形は変わっていきました。ただ、貯めるものがお金になったとしても、「将来の生活に備える」という目的は変わりません。
また、日本人は古くから自然災害に何度も遭う生活を送っていました。そのため、「備える」ということを意識する国民性があったのか、OECDの調査によると、消費社会として隆盛を極めた「バブル経済」当時でも、日本人の「家計貯蓄率」は主要先進国の中でもトップ層にいました。貯蓄を好む国民性であったといえるかもしれません。
バブル期の前後を過ごしたみなさんは、当時、貯蓄されていた覚えはあるでしょうか。
貯蓄はできないのか、しないのか
日本ファイナンシャルプランナーズ協会の廣田士郎氏によると、貯蓄を成し得るには、2つの前提が必要だといいます。その2つとは、「貯蓄に振り向けられるだけの生活余裕分」と、「貯蓄に振り向ける意思」です。
ではここで、日本人の収入推移を見てみましょう。国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、500万円近くあった民間平均給与は、バブル崩壊後は右肩下がりで減少しました。さらに、2008年のリーマンショックによって大きく減少してしまい、2009年には約400万円まで落ち込みました。
しかし、第二次安倍内閣が発足してから1年経った2013年ごろから、平均給与は上昇に転じました。女性の給与に限って見れば、2018年の数字は統計を取り始めた1978年以降で一番高い287万円となっています。
「民間給与実態統計調査」を年代別にさらに細かく見ると、30代の前半・後半、40代前半・後半でばらつきはありますが、傾向としてはおおむね増えています。つまり、30代・40代に限っても「収入は増えているのに、貯蓄ゼロの人が増えている」といえます。そうすると、30代・40代において、貯蓄を成し得る2つの前提のうちの「貯蓄に振り向ける意思」が弱まっているということも考えられます。
貯蓄に無関心な人たち
ではなぜ、「貯蓄に振り向ける意思」が弱まっているのでしょうか。それは主に「貯蓄に無関心な人」が増えているからではないかと考えられます(もちろん「貯蓄したくてもできない人」もいますが、そうした人は、前述の貯蓄の2つの前提の1つ目「貯蓄に向ける生活余裕がない」という点がクリアできていないため、ここでは除外して後ほど少し詳しく述べます)。
たとえば「貯蓄に無関心な人」についていえば、貯蓄をする大きな理由として、子育てなどがあります。しかし、現在は非婚化や晩婚化が進み、結婚および子育てに関わらない人も増えています。
また、貯蓄が必要な大きな消費に対して関心が弱くなっている現状もあるでしょう。観光庁の発表によると、旅行にかける1人当たりの費用は増加している一方で、旅行自体に行く人数は減少傾向にあるといいます。また、総務省によると持ち家世帯率も減少しており、30代を見てみると、1988年には50%あった持ち家率も、現在では35%まで落ち込んでいます。
ここには給与水準的に「貯蓄したくてもできない人たち」も含まれますが、貯蓄をそれほどせず、大きな買い物もせず、どちらかといえば「その日を楽しもうと生きる人たち」が増えてきているといえるかもしれません。
貯蓄をしないことに対して世間の声は?
こうした傾向について、貯蓄を人生設計の基本と考える人たちからは、
「貯蓄がないと老後やっていけないぞ」
「何かあったときどうするの?」
「マジで人生設計とか考えてないの?」
といった不安視する声が上がっています。一方、貯蓄を行っていない人たちからは、
「貯金をする余裕がない」
といった悲痛な声が見られました。
ついでにいえば、平均給与は上がっていても、収入に関しては、業種によっても大きく違います。たとえば、先の「民間給与実態統計調査」によると、ガスや電気などエネルギーインフラ系の企業や金融関連企業は平均給与も高いのですが、小売業やサービス業、宿泊業、飲食サービス業はそれらと比べると平均給与が低い傾向があります。また正規雇用が減り、非正規雇用が増えていることからも、平均給与は上がっていても、労働者全員の給与が一律に上がっているわけではありません。当然ながら、貯金をする余裕のある人ばかりではないということです。
これらさまざまな理由で、お金を貯蓄に振り向ける意思が弱まっていると考えられます。
「貯蓄しない人」は増えるのか?
現在の40代後半は「団塊ジュニア世代」と呼ばれる世代に該当します。「団塊ジュニア世代」は人数も多く、子供時代に日本の経済成長と共に成長してきたことから、消費を好む傾向にあります。一方で、30代中盤から40代中盤の「ポスト団塊ジュニア世代」以降は、将来への不安から、消費には消極的な傾向が強くなっているといわれます。
さらにいえば、いま30代前半を迎えている「さとり世代」(20代後半も含む)は、リーマンショック後の不安定などを経験していることから、安定した生活を求めて、より貯蓄を好む傾向にあるといいます。30代・40代と一口に言っても、貯蓄や消費に対する考え方は大きく異なるようです。
経済状況を考えると、貯蓄する人が増えることは順当ともいえますが、一方で、貯蓄ばかりで消費が進まなければ、経済が発展していくことが難しくなります。上記のように、「貯蓄」と「消費」の傾向は、世代によっても違っていますが、あなたはどちらをより大切にしていますか?
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