令和こそ!夫婦別姓実現なるか 離婚して実感した夫婦同姓の闇
LIMO / 2019年4月30日 19時15分
令和こそ!夫婦別姓実現なるか 離婚して実感した夫婦同姓の闇
2019年3月、大手ソフトウエア会社「サイボウズ㈱」の青野慶久社長が、夫婦別姓を選択できない戸籍法の違憲性について国を訴えました。これに対し東京地裁は「請求棄却」、つまり「合憲」と判決を下しました。働く女性が増えた現在、戸籍上は夫婦同姓にしながら旧姓で仕事を続ける女性も増えています。または、籍を入れずに「事実婚」をしている夫婦もいます。
筆者は今まで深く考えてきませんでしたが、いざ自分が離婚を経験して「夫婦同姓」であるが故の苦しさ、辛さを経験し、「姓を選択できていたら・・・」と思うようになりました。結婚時に姓を選択できないのはなぜなのか。令和こそ、選択的夫婦別姓制度が導入されるのでしょうか。
姓が変わった、それだけで増える心の傷
「結婚したら、配偶者の姓を名乗る」
結婚と同時に配偶者親族の所有物になるみたいで筆者は嫌でしたが、仕方のないことと思い夫の姓を名乗っていました。結婚後に就職した会社では、夫の姓で呼ばれていました。その後事情があり離婚しましたが、上司に相談すると
「旧姓になるんだよね? じゃあ社内文書で報告させてもらうから。いいよね?」と言われ、承諾するしかありませんでした。
もちろん、離婚しても元夫の姓を使用する「婚氏続称」は法律で認められています。しかし「配偶者親族の所有物になるみたい」と初めから思っていたわけですから、これは望んでいません。また子どももまだ幼かったので、「姓を変えるなら、今!」という気持ちが強かったのです。
社内文書が回った日は、逃げ出したい気持ちになりました。様々な視線にさらされ、旧姓で呼ぼうと努力してもらっているので頭を下げながら仕事をしました。
また、銀行口座やクレジットカード、保険証などの姓の変更の手続きは煩雑なものです。結婚した時はまだ、良かったんですけどね・・・。
幼子も抱えていたので「さあ、これから頑張って働かなければ!」と思っている時に、仕事を休んで役所へ行かなければならず、仕方のないこととはいえ気持ちが塞ぎました。これとは別に、子どもの親権変更の手続きも同時にこなします。
その後何カ月かして休憩中、同僚の男性社員から「離婚しました!」と個別で報告を受けました。彼も色々大変だったようですが、彼の場合の離婚報告は雑談の一部でした。
『同じ離婚でも姓が変わらない離婚ってこんなものなんだ・・・』彼に失礼かもしれませんが、彼の離婚報告には一種の明るさも含まれているように感じました。
仕方のないこと・・・それでも、社内文書で離婚を報告されたのはつらいものでした。
なぜ姓を選択できないのか
民放750条では「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫または妻の氏を称する」と規定しています。これに対し15年、事実婚の夫婦らが「結婚時にどちらかの姓を名乗ることを強制され、精神的苦痛を受けた」として国を訴えています。しかし最高裁は、「国会で論じられるべきだ」として「合憲」との判決を下しています。
一方、上述した青野社長の判決報道をよく見てみますと「民法上同姓となっても、戸籍上の姓が選べないのは平等権に反する」との訴えのようです。
15年の訴えでは、「現状、女性側に姓の変更を強制することになっており、これは男女平等に反するのではないか」という訴えが強調されたようです。しかし民放750条そのものは男性側が姓を変えてもOKというものなので、「合憲」との判決でした。そして今回の青野社長の訴えですが、「では民法上では夫婦同姓になるとしても、戸籍上では姓の選択がなされるべきだ」というものでした。しかしこれも退けられるかたちとなりました。
現在まで内閣府は、旧姓の通称としての使用拡大を勧めています。17年に公表された「旧姓使用の状況に関する調査(http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/pdf/mname_h28_gaiyo.pdf)」によると、調査票に回答した企業のうち49%は旧姓使用を認めているということです。
しかしこれは、15年に訴えられた「精神的苦痛」を何ら解決しません。選択的夫婦別姓を実現するためには、やはり民法の改正が必要なのでしょう。1996年に民法改正案に盛り込まれ国会で議論されましたが、現在に至っても実現していません。
姓に影響される日本人のアイデンティティーと子ども
内閣府の世論調査によると、「選択的夫婦別氏制度」について賛成が43%、反対が29%と賛成が上回っています。
筆者はその後、再婚しました。同時にまた夫の姓を名乗っています。これで3回姓を変更したことになりますが、「私」は未婚の時から今に至るまで連続した存在です。もちろん名前は変わっていませんが、年齢を重ねるとともに名前で呼ばれることも減ってきます。姓がアイデンティティーの一部であると断言できるほど、日本社会での姓は重要な役割を果たしています。
そして我が子も、姓を2回変更しています。私自身のことは自分で決めたので、何とでも飲み込むことができます。しかし子どもにとっては、たまったものではないでしょう。これについては本当に申し訳なく思っていますし、また説明も難しいものでした。
「夫婦別姓」、実現するのはとても難しそうです。しかし令和では世論においてもたくさん議論され、国会を動かす波になったら…そう思っています。
参考資料:
「世論調査報告書平成29年12月調査」(内閣府)
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