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家にまっすぐ帰らない「フラリーマン」を待つ「ワンオペ妻」のいら立ち

LIMO / 2019年5月5日 19時45分

家にまっすぐ帰らない「フラリーマン」を待つ「ワンオペ妻」のいら立ち

家にまっすぐ帰らない「フラリーマン」を待つ「ワンオペ妻」のいら立ち

「働き方改革」によって、残業への風当たりが強まっています。以前なら、深夜までついていたオフィスの照明や空調が、一定の時間になると消される会社さえあります。

厚生労働省は「働き方改革特設サイト」を設けており、残業の削減などに焦点を当てた施策は、国をあげたものになっています。サイト内では、その目指すところは企業の生産性の向上によって「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」に対応することだと書かれています。そのためには、誰もが働きやすい環境を整えること、男性の育児参加比率を高めることが大切……ということになるのでしょうか。

とはいえ、適切な業務量の設定、時間管理に迫られる管理職の負担、育児中の社員が休んだときの対応など、「残業をなくせば全て解決」というわけにはいかないのが現実。また、育児・家事の負担が女性に過重にかかっている現状は、男性社員の残業時間削減によって解決するかと言えば、事態はそれほどシンプルではありません。

退勤後の寄り道スポット「コンビニ」「本屋」「居酒屋」が人気

「うちの夫、昔より残業時間は減ったし、退社時に“これから帰る”という連絡をくれるのはいいけど、そこからが長いの。会社から自宅は50分のはずなのに、なぜか1時間半以上かかることがあって。こちらは、帰宅時間を逆算して家族そろってご飯を食べられるように夕飯を食卓に並べてるのに、子どもが“お腹が空いた”ってギャーギャー泣くのが苦痛。こちらも仕事で疲れているからイライラしちゃって。いったい何してるのやら」

こう語るのは、働きながら子育てをする女性Aさん。

今年の初めにSMBCコンシューマーファイナンスが行った「30代・40代の金銭感覚についての意識調査2019」によれば、「仕事が終わってもまっすぐ帰宅はせず、ブラブラ寄り道をしながら帰ることがある」と回答した男性は、54.1%。女性は43.7%という結果になっています。

一方で、「家事(または家事・育児)の負担は自分に過度に集中していると思うか」という回答に対して76.0%の女性が「非常にそう思う」「そう思う」と回答。男女の一定数が寄り道経験はあるものの、家事や育児の負担は女性側にのしかかっているようです。

ちなみに、同調査によれば寄り道をする男性242人の寄り道先として多かった場所は以下の通りです。

【仕事が終わった後、ブラブラ寄り道しながら帰るとき、どこに寄ることが多いか】

1位・・・コンビニ(59.9%)
2位・・・本屋(31.8%)
3位・・・居酒屋・バー(19.4%)
4位・・・家電量販店(18.2%)
5位・・・ファーストフード店(16.9%)

6位以降は、「パチンコ・スロット店」「カフェ・喫茶店」「ネットカフェ・漫画喫茶」などが続いています。

この少ないデータだけで断定することはできませんが、「定時で会社をあがったら、まっすぐ家に帰るのはもったいない」というマインドを持っている男性は一定数いると仮定できるのではないでしょうか。

バブル期の「夫婦像」に苦しめられる今の子育て夫婦

日本がバブルに沸いた88年、栄養ドリンクのCM内で使われた「5時から男」という言葉が流行語となりました。

仕事仲間は、場合によっては自分の家族よりも濃密なつながりがあるもうひとつの家族のようなもので、仕事後は夜の街で飲み歩き、接待費で高級な和食を食べ、連れだって女性がいる店に行き、男性同士の絆を深める……。残業がない日は、5時からが楽しい。家庭は妻に任せておけばいい。

筆者が営業職として働いていた2000年代も、そのような意識を引きずる男性社員は多くいました。

その後、出産して「子どもと一緒に夫を待つ」という体験を通じ、男性たちが「これも仕事」と飲み歩く間、当時、幼い子どもを育てていた妻たちが味わっていたかもしれない家庭での閉塞感を想像せずにはいられませんでした。

2年前の「炎上CM」が教えてくれたことは?

その頃から世論はずいぶん変わり、男性の退勤後の過ごし方への眼差しは少しずつ厳しくなっています。

2年前、ある企業のCMが大炎上したのは記憶に新しいところです。今は起訴中の俳優・新井浩文被告が朝のゴミ出しを担当する子育て中の父親を演じ、子どもの誕生日に早く仕事を切り上げたにも関わらず、上司に怒られた後輩を元気づけるために1杯ひっかけて、妻の不機嫌を背に風呂に入るというストーリーでした。

そのCMが「がんばるお父さんへのムービー」と銘打たれたところが、育児や家事を一手に担う女性たちの逆りんに触れる結果となりました。

今の子育て世代の多くは、家事・育児・PTA活動やパートを担っていた専業主婦の母親と、仕事だけをしていた父親の後姿を見て育っています。仮に自分が育った家庭が自分の基準となるのだとしたら、多くの男性にとっては、普段家にいない男親の後姿から学んだ「家庭生活術」が乏しいケースもあるでしょう。

前出の炎上CMの中でも「あの頃の親父とは、かけ離れた自分がいる」「親父が与えてくれたものを俺は与えられているのか」という主人公の自問自答が心の声として流れていました。かつての父親たちによって軽んじられていた家庭生活の価値を、周りの声や社会の声を参考にしながらもう一度査定する作業は思いのほか難しいようです。

おわりに

帰り道、コンビニや本屋で立ち読みをして、居酒屋で1杯だけ飲んで帰る男性に対し、「昔と比べればそんなのかわいいものよ。いつも頑張ってるんだからそれぐらい許してあげて」と言う人がいるかもしれません。

とはいえ、夜は子育て中の家庭にとって次から次へと注文やトラブルが降り注ぐ目の回るような忙しさ。もう1人サポートする大人がいることで、ずいぶん負担は軽減し、家族のイライラや子どもの不安が消え、笑顔が増えるケースも多くあるのではないでしょうか。

親と子どもが笑顔でいることの価値と手段をきちんと認識できるようになったとき、そして子を育てる者同士が手を差し伸べあうことの重要性を悟ったとき、「働き方改革」の成果はゆっくりと表れていくのかもしれません。

【参考】
「働き方改革」の実現に向けて(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html)( 厚生労働省)
30代・40代の金銭感覚についての意識調査2019(http://www.smbc-cf.com/news/datas/chousa_190306.pdf)(SMBCコンシューマーファイナンス調べ)

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