「3人も女を産んで、どうするの?」義母からの圧力で悩み続けた母の悲劇
LIMO / 2019年5月24日 10時45分
「3人も女を産んで、どうするの?」義母からの圧力で悩み続けた母の悲劇
あえて子どもを産まないことを選択する女性も増えてきた昨今、「女性は結婚したら、子どもを産まなければならない。子孫を残すのが当然!性別は男に限る」という思想は、現代に生きる人間にとってかなり古めかしいもののようにも感じます。
しかし筆者の祖母がそうであったように、未だ女性=子孫製造機というような考えを持っている人がいることも事実です。母が味わった苦悩、そしてなぜ今、娘である筆者に過去の辛い経験を吐露するに至ったのか、その心理に迫ります。
■子どもは3人産んだ…しかし全員女児だった
筆者の母は、27歳の時に父とお見合い結婚をしました。母は銀行員としてバリバリ仕事をしており、キャリアアップを目指していましたが、祖母からの強い要望により、結婚してすぐに子作りを開始し、妊娠しました。
実は当時、祖母は産婦人科でベテラン助産師として幅を利かせていました。そのため妊娠中の食べ物や過ごし方についても、いろいろと干渉されていたそうです。
そして母は、助産師として祖母が立ち会う中、無事に女児を産み落としました。
祖母は孫の誕生を喜んだのもつかの間、女児だったことに不満を漏らし、もう一人子どもを作るよう要望しました。
そして、年子で生まれた第二子も女児。このときも祖母は助産師として出産に立ち会っていますが、実の孫の誕生にも関わらず、あまり喜んでいる雰囲気ではなかったようです。
その後も男児の誕生を希望する祖母からの圧力は続き、2度目の出産から2年後…母は3人目子どもを産みました。性別は…またも女児。これまで同様、出産に立ち会っていた祖母は、分娩台に横になっている母に驚きの言葉を投げかけます。
「3人も女を産んで、どうするの?」
■3人目を産んだあと、不妊手術をさせられた母
祖母からの心無い言葉にショックを受けつつも、3回目の出産を無事に終え、ベッドで休んでいた母にさらなる悲劇が待ち受けていたのです。
病室に入ってきた主治医と祖母から、あろう事か“不妊手術“を勧められたのです。不妊(避妊)手術とは、文字通り外科的手術によって、妊娠ができない体にすること。
母は男児を産めなかったという罪悪感から、その勧めに逆らうことができず、自らの希望という体で卵管結紮(らんかんけっさつ)という不妊手術を受けたのでした。
この信じられないエピソードは決して大昔の話ではなく、昭和から平成へ移り変わるの頃、約35年前の話なのです。
■孫ができたことをきっかけに、娘に話した辛い過去
三女出産時の悲しいエピソードを娘である筆者が知ることになるのは、その30年後のことでした。
筆者は母から話を聞くまで、母のお腹にある大きな縫い傷は三女を帝王切開で産んだときにできたものだろうと思い込んでいました。しかし実際には、三女は自然分娩かつ超安産で、母子とも健康な出産だったが、その後の不妊手術の跡だと言うのです。
諸々のエピソードを聞き、まずは母が子どもを産めない体だったという事実への素直な驚きが。その後、なぜ母は不妊手術を拒否しなかったのか…そもそも祖母はなぜ、健康な母の体に大きい傷を残してまで、不妊手術をさせたかったのか…得体の知らない怒りが沸々と湧き上がったのを覚えています。
さらになぜ今になって、過去の辛い経験を吐き出そうと思ったのかを母に聞いてみたところ、そのきっかけは、筆者の出産に母が立ち会ったことだったと言うのです。
母は筆者が産んだ子どもをはじめて抱いた時、「新しい命はなんて美しくて、すばらしいのだろう!」という気持ちがあふれ、そして「孫の誕生を喜ばない祖母なんて、いるはずがない!」と心の底から思えたそうです。
長年の間、自分が産んだ三姉妹は家にとって望まれない存在なので、自ら守るしかない!と育児に奮闘してきたそうです。しかし自身も孫を持つ立場になったことにより、きっと祖母も孫の誕生を喜び、愛情を持って接してくれていたのだろうと思えるようになったそうです。当時そのことに気付けなかったのは、心に余裕がなかったせいだと。
そんな想いがあふれ、長女である筆者に話を聞いてもらいたくなったとのこと。母は長年闘ってきたしがらみから開放され、晴れやかな顔をしているように見えました。
祖母は20年以上前に亡くなったので、今となっては当時の心境を聞くことはできませんが、祖母も孫の誕生を喜んでくれていたと思えたことは、母にとってその後の人生観をも左右する価値ある出来事だったのだろうと思えてなりません。
■男でも女でも関係ない!すべての命は歓迎されている
結婚後の子どもの有無や子どもの性別などについて、考え方は人それぞれ。そのため、時に信じられないような行為を目の当たりにしたり、実際にひどい経験したりするということもあるかもしれません。
しかし周りになんと言われようと、親さえ「この子は望まれて産まれて来たんだ!」という信念を持っていれば、どんな場面にも強い心で対峙することができるのではないでしょうか。
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