お客様視点と事業採算性をバランスする経営力〜まちに必要なものをつくるUDS中川社長に聞く
LIMO / 2019年6月6日 21時15分
![お客様視点と事業採算性をバランスする経営力〜まちに必要なものをつくるUDS中川社長に聞く](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_11277_0-small.jpg)
お客様視点と事業採算性をバランスする経営力〜まちに必要なものをつくるUDS中川社長に聞く
ストックビジネスの本質(第2話)
最近銀座にできた話題の「MUJI HOTEL GINZA」をご存じですか? 無印良品のブランドを冠したこのホテルは、私が尊敬する経営者である中川敬文社長のUDS株式会社が企画・設計・運営・経営しています。
前回(https://limo.media/articles/-/11276)に続き、日本で最初にコーポラティブハウスを仕掛け、現在ではホテルの運営までを手がけるようになった同社の中川敬文社長へのインタビューを通して、ストックビジネスのエッセンスをお届けします。
第2話の今回は、目黒「CLASKA」と「キッザニア東京」立ち上げにおけるクリエイティブ力と事業推進力についてお聞きしました。
目黒の複合施設「CLASKA」大成功の要因
大竹:中川さんがUDSの転換のきっかけとなったという、目黒の複合施設「CLASKA」についてお聞きしたいと思います。
中川:昭和40年代に建てられたホテルをリノベーションするかたちで、2003年9月に目黒で「CLASKA」がオープンしました。
![](https://limo.ismcdn.jp/mwimgs/1/a/-/img_1a91669b4eb93542ffe68469bd95c1f9115449.jpg)
CLASKA(UDSウェブサイトより)
大竹:あれは、当時かなり話題になりましたが、不動産としてはあまり立地がよくないですよね。
中川:はい、バスしか通らないところで、山手線の目黒駅からも2kmくらいあるので普通は歩かないですし、私鉄の最寄駅でも徒歩10分はかかるという物件でした。
大竹:なかなか厳しいですね。
中川:立地が悪くてダメになってしまった物件でしたから、集客の核となる強力な何か特徴がないといけないと考えていました。
大竹:なるほど………。
中川:そこで、ホテルのロビーにDJブースを設置したり、ギャラリーを作るなどのアートを絡めたプランニングをしていきました。実は、CLASKA(クラスカ)は、クリエイターがどう「暮らすか?」というダジャレなんですよ。
大竹:そうなんですか(笑) それにしてもホテルのリノベーションはお金がかかりそうですね。
中川:ロビーと客室9室にはお金をかけましたが、残りは前の客室のままの状態で、あとはクリエイター達に「好きにしていいよ!」「原状復帰もなし!」といったら面白がって、お友達価格で色々とやってくれました。
大竹:それは面白い、原状復帰なしは「DIY賃貸」の先駆けですね。それにしても、外観も内装も古さを感じないのはすごい。
中川: 当時、かなりエポックメイキングで、目黒通りにヒトが集まりすぎてパニックになって警察の方にもお世話になったりしましたが、今考えると「コワーキングオフィス」だったり、ペットサロン併設で「ペットOKのカフェ」など、現在では当たり前になっていることの先駆けとなるモノが詰まっていました。
大竹:そのあたりは、創業者で現会長の梶原(文生)さんの得意領域ですね。
中川:そうですね、このクリエイティブの力はすごいと思います。現在ではここで養われたオペレーションが会社としてはメイン事業です。
「キッザニア東京」立ち上げを推進した調整力
大竹:話は少し変わりますが、私の中では中川さんは「キッザニア東京を作った人」というイメージとマネジメントのプロと認識していますが、そのあたりのことも聞かせてください。
中川:あれは2004年頃でしたが、元々メキシコ発のビジネスで、日本側にも事業主体となる会社が既にあって、一部出資もされている状態でした。
大竹:どのような流れで参画されたんですか?
中川:出資をして筆頭株主の立場で事業に携わり、個人的には取締役として会社に加わりお手伝いが始まりました。実務としてはUDSで内装設計、スポンサー開発、パビリオン企画を行いました。
大竹:メキシコ発祥のビジネスモデルといいながらも、今のキッザニア東京とはまったく別物だったと何かで見た覚えがあります。
中川:考え方みたいなものは既にあって、実際に動いていたビジネスでしたが、メキシコはブルーワーカーの仕事体験が多いのでペンキを塗る体験など日本とはまったく中身が違いました。
それに日本では超大手企業を対象としたスポンサー探しとそれに伴う職業体験のコンテンツ開発という誰もやったことのない様々な調整作業など、今思ってもかなり大変でしたね。
大竹:それは、中川さんが本領発揮する領域ですね。その調整力が、フロー事業中心から稀に見るストック事業を基盤に持つクリエイト集団に転換できた原動力であることは間違いないと思います。
まとめ
ストックビジネスというと安定的な事業というイメージが強くなり、定額収入にすることがゴールではないかと間違えて理解される場合があります。
しかし、ストックビジネスに定額収入が多いのは、提供する価値が継続するから定額がフィットしただけなのです。それよりも継続する価値の提供、時間がたっても劣化しない価値の提供、お客様が他では得られない価値を提供し続けることこそが大切で、「お客様の期待を超える価値とそれが維持できる仕組みを意識し続ける経営者のマインド」が最も大切です。
中川社長の手がけたサービスはクリエイティブな分野にも関わらず運営が続くのは、お客様視点と事業採算性をバランスする経営感覚のなせる業、学ぶべき点が多いお話でした。
次回はその中川社長が考える未来の話をお届けします。
<第1話はこちら(https://limo.media/articles/-/11276)>
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