口臭、体臭、きつい香水がツラい…でも臭いの不快感は伝えにくい
LIMO / 2019年5月24日 20時15分
口臭、体臭、きつい香水がツラい…でも臭いの不快感は伝えにくい
1年前の今頃、最も大きく取り扱われていた社会ニュースは何だったか覚えていますか?
それは、日本大学アメリカンフットボール部による悪質タックル問題です。詳細は省略しますが、当時の監督とコーチが選手へ暗黙の指示を行ったパワハラ問題として報道されました。日大アメフト部の監督・コーチの記者会見(釈明会見)はNHKが生中継するほどの過熱ぶりでした。
あれから1年経ちましたが、スポーツ界でのパワハラ問題は一向に後を絶たないのが現状です。しかし、これはスポーツ界に限ったことではありません。
ハラスメント被害者が声を上げるようになっているが・・・
現代社会には数多くのハラスメント(嫌がらせ)が溢れており、ハラスメントの時代とも言われています。代表的なのが、セクハラ(セクシャルハラスメント)とパワハラ(パワーハラスメント)です。この2つは、冒頭で記したスポーツ界だけでなく、政治経済界(昨年の財務省事務次官のセクハラ問題など)や一般社会でも毎年のように大きな社会問題が起きています。
こうしたセクハラやパワハラに関しては、従前から日本社会に蔓延していたと考えられます。しかし、近年になってからは、ハラスメントを受けた側が泣き寝入りすることなく、堂々と被害の声を上げるようになりました。その結果、こうしたハラスメントが社会問題として認められ、いや、一歩進んで、ある種の犯罪として意識されるようになったと言えましょう。
いずれにせよ、ハラスメントを受けた人は勇気を出して訴えることが必要ですし、少なくとも以前に比べれば、そういう土壌が整ってきたのは確かです。
一方で、なかなか声を上げることができない類のハラスメントもあります。
その一つが、スメルハラスメント(スメハラ)、とりわけ、職場におけるスメハラではないでしょうか。スメハラは「臭い(匂い)のハラスメント」を指しますが、最近ではテレビの情報番組でも取り上げられるなど、徐々に“問題視”されるようになってきました。
では、スメハラとは具体的にはどういう臭い(匂い)のことなのでしょうか?
スメハラでは、「口臭」「体臭(主に加齢臭)」「香水」の3つが代表的な臭い(匂い)とされます。こうしたスメハラを経験した人は、決して少なくないはずです。いや、経験どころか、現に毎日“被害”に遭っている人もいるでしょう。職場、飲食店、電車やタクシーの中などでスメハラの被害は起きていると考えられます。
スメハラを言い出しにくい理由は?
ところが、当事者に対して堂々と苦情を訴えることができる人はどれだけいるでしょうか? 特に、口臭と体臭に関しては、“あなたの口臭、何とかなりませんか?”“あなたの体臭、気になって気分が悪くなるんです”といった類の苦情を当事者に直接言うのは、実際には簡単ではありません。
こうしたスメハラを減らすことはできるのでしょうか? スメハラをセクハラやパワハラと比較すると、いくつか大きな違いがあることがわかります。
まず、スメハラの定義を定めることが困難です。どのような臭い(匂い)がハラスメントに該当するのか、明確な基準がないため、セクハラやパワハラのようにガイドラインを設けるのは難しいと言えます。強いて言えば、強い香水を控えることくらいですが、これも明確な定義がないのが実情です。
また、香水に関して言えば、同じ香水でも“いい香りだ”と感じる人がいる一方で、“嫌な香りだ”と感じる人もいます。スメハラと感じる人と感じない人との温度差が大きいのも特徴です。
次に挙げられるのは、スメハラを与える人(匂いを発する人)の意識の問題です。これは、セクハラやパワハラにも該当することですが、それ以上に意識が希薄と言えそうです。その最大の理由は、自分の臭い(口臭、体臭)は自分では分からないという点にあります。
例えば、“〇〇さんの口臭は耐えられないな、何とかしてほしい”と苦痛に感じている△△さんが、別の人から“△△さんの口臭はひどいよね”と思われているかもしれません。また、香水の匂いも、つけてしばらくすると自分では分からなくなるようです。
スメハラを訴えた人がハラスメント加害者になるリスクも
さらに、スメハラを訴えた人が、逆にハラスメントを与える人になってしまうケースがあり得ます。一般に、口臭や体臭を非難することは、当事者の人格そのものを否定することになりかねないからです。ある日、突然に自らの口臭や体臭を非難されたら、その人は当惑するはずです。
そして、もし、その人が精神的に落ち込んだりした場合、“あなたの口が臭い”と言い放った人が逆にハラスメントを与えたと非難される可能性もあります。
徐々に認識され始めてきたスメハラを、大きな社会問題にならないようにするためには、企業側でも何らかの対応が求められます。たとえば、洗面所にさり気なくマウスウオッシュ液を置くとか、オフィスに無臭の芳香剤を置くなど、やり方は様々あるはずです。
しかし、最後はやっぱり一人一人の心掛け・エチケットに頼らざるを得ません。自分自身が発する“臭い(匂い)”について一度考えてみることが必要です。もしかしたら、スメハラに無頓着な人こそ、スメハラの加害者になっているかもしれません。
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