イビデン、新光電気の国内FC基板2社、大型投資を敢行
LIMO / 2019年5月28日 20時40分
イビデン、新光電気の国内FC基板2社、大型投資を敢行
主要顧客インテルから強い引き合い、PKG構造変化で商機拡大
フリップチップ(FC)パッケージ基板を手がけるイビデンと新光電気工業の国内2社が、過去に例のない大型投資を敢行しようとしている。半導体・電子部品業界はメモリー市況の悪化や米中貿易摩擦の影響で、軟調傾向から抜け出せていないが、主要顧客の1社であるインテルからの強烈な増産要請などを受けて、生産能力の大幅な増強に踏み切っている。
イビデンは単年で過去最高の755億円投資
CPUなどを実装するFC基板は従来国内メーカーのシェアが高く、基板業界のなかでも依然として日系優位の構図が続いている。パソコンなどクライアント分野ではオーストリアのAT&S、台湾・韓国系など海外メーカーも一定のシェアを有しているが、サーバー向けなどの高多層品分野においては国内2社の寡占状態にあると言って良い状況だ。
その2社がここにきて、相次いで大型投資を発表している。イビデンは2019年度(20年3月期)設備投資金額のうち、パッケージ基板やプリント配線板で構成される電子部門に755億円を計画、単年度としては過去最高の投資額となる見込みだ。
同社は18年11月段階で、全社ベースの19年度設備投資額を650億円と想定しており、うち7割を電子部門に充てるとしていた。今回、これを900億円に引き上げており、電子部門には755億円を投じる構え。
増額の主な理由は、主要顧客からの前倒し要請によるもので、製品立ち上げ期間の短縮に応えるためのものだという。同社は18年11月、19~21年度の3カ年で総額700億円を投じて、パッケージ基板の生産能力を5割(層数換算)引き上げる投資計画を公表済み。今回、この投資を19年度により集中させるスケジュールになったとみられる。
当初計画では主力拠点の大垣中央事業場 第2棟および大垣事業場(ともに岐阜県)に生産設備を導入し、20年度後半から本格量産する計画であったが、今回大型投資の検収タイミングが20年1~3月に集中するとしており、生産開始時期は前倒しになったもようだ。
新光電気は4カ年で540億円投資
新光電気も18年度から着手しているFC基板の生産体制強化に向けた設備投資金額を増額する。18年度から21年度までの4カ年で540億円を投じ、FC基板の生産能力を約4割増強する。
同社は18年4月に、18~19年度の2カ年で215億円を投じ、FC基板の生産能力を2割増強する投資計画を公表。今回これを21年度までの4カ年計画として改めて公表した。実際に19年度のFC基板向けの投資金額は、従来計画に対して増額修正されているという。
設備導入が予定されているのは、高丘工場(長野県中野市)。同工場はもともと、半導体用リードフレームやガラス端子などを主軸に生産していたが、13年度にJ棟と呼ばれる新棟を建設し、半導体パッケージ基板の生産も手がけるようになっていた。
AMDの攻勢も一部影響か
大型投資に至った背景として指摘されているのが、最大顧客のインテルの動向だ。同社は20年から10nm世代を用いたサーバー用CPU「Cascade Lake」を市場投入する。従来に比べて、パッケージ基板の層数が増えることに加え、ハイパースケーラーなどクラウド顧客がこのCPUを核とした次世代型データセンターの大型投資計画を練っているとされている。
別の見方として、競合する米AMDの動きもインテルの増産要請につながっていると指摘する向きもある。同社はサーバー用CPU「EPYC」で台湾TSMCの7nm世代を採用したことで、サーバー市場でのシェア拡大が期待されており、現行CPUが14nm世代止まりのインテルにプレッシャーをかけている。競合企業との微細化ギャップを埋めるべく、10nm製品の投入を急いでいる面もあるようだ。
次世代パッケージ登場も1つの契機に
加えて、インテルは今後、サーバー市場を中心に、異種チップを組み合わせた次世代パッケージ品の投入を強めてくるとみられている。同社の独自の2.5D技術として「EMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)」を開発しており、今後のサーバー市場の主力製品と位置づけている。EMIBはCPUと異種チップ(FPGAなど)を同一基板上にSide by Sideで実装し、基板内に埋め込んだシリコンブリッジで接続するというもの。層数が増えることに加え、パッケージ基板サイズも大型化することから、基板メーカーに対する負荷も増えており、昨今の大型投資につながっている。
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