入社3年で辞める、辛抱強くない若者は不幸になるのか
LIMO / 2019年5月31日 11時10分
入社3年で辞める、辛抱強くない若者は不幸になるのか
6月も目の前ですが、街中でもリクルートスーツを着た学生を目にします。厳しい就職活動を経て、晴れて希望の企業に入社しても3年以内に辞めてしまう人もいるというのが現実です。就職希望者と採用側のミスマッチとして片づけてしまうこともできますが、果たして理由はそれだけでしょうか。そして3年で辞めた若者は不幸になってしまうのでしょうか。終身雇用の維持が難しいという声が企業から出る中で、現場がどうすればよいのかについても考えていきたいと思います。
第一希望の金融機関を3年「目」で辞めた
私自身は大学卒業後、新卒として入社した国内金融機関を3年目に辞めました。「3年目」とはいっても、正確には丸2年間を終えて、ちょっとというタイミングです。実質的には丸2年とでもいった方が正確かもしれません。
自分自身では社会人になって必死の数年間だったので、「もう十分働いた」という感覚はありましたが、周りではそうではなかったようです。
実際、転職をすることを親に告げると驚いていました。厳しい就職活動を経て、自分の親の世代からすると誰もが知る金融機関ということで、「もったいない」というような反応でした。
また、知り合いで大企業に長く勤務し、独立した経営者からは、「大企業にいることをもっと活用すべき」とのアドバイスもありました。2、3年では短すぎるというコメントです。
自分でいろいろ考えた末に辞めたものの、親を含めて知り合いなどの話から、当時は「もったいなかったのかなぁ」と思ったのは事実です。
マーケット関連の仕事なら国内金融機関である必要はない
大学卒業後に入社した金融機関で最初に配属されたのはマーケット関連の部署でした。同期の間でもあこがれの部署だったように思います。
金融機関の支店や支社といった現場が重要であることは言うまでもないですが、マーケット部門はまた営業の現場とは異なった雰囲気があり、希望者が多かったように思います。
ルーティン作業には飽きを感じつつも、投資判断を伴うシーンでは「こんなに大きなお金が自分の目の前を通っていく」という興奮を抑えられずにいました。
しかし、しばらくすると、「この仕事は別に日本の金融機関にいなくてもできるのではないか」と思うようになりました。
マーケット関連の仕事では必要なスキルは共通しており、社内特有なスキルというのは、投資パフォーマンスということにだけ限定すれば必要ないと思うようになりました。
こういう思考プロセスに陥ると、一生懸命に取り組んだ就職活動、そして入社した金融機関もあまり重要でなくなってきます。金融機関に対しては「ブランド」に魅かれる部分が大きかったのだなと気づくことになります。
3年で辞めてもマイナスではない
3年目で国内金融機関を辞め、外資系金融機関に転職したわけですが、新しい職場では、最初に勤務した会社での勤務経験が短いことによるマイナス面はあまりなかったように思います。
外資系金融機関には様々なキャリアの人は多いですが、銀行や証券、保険などの各業界のトップ企業出身者はそれなりにリスペクト(尊敬)をもって接してくれるという気は今でもします。
ただ、当時の自分としては「石の上にも3年」ということわざもあり、「3年はたっていないのだけれども」と引け目のように感じていたところはあります。自分では「3年も持たないなんて、辛抱強くないな」と思うところもありました。
最初の会社を去る際に先輩に「お前なんて、とっとと失敗してしまえ」というのは今でも覚えています。この言葉を聞いたときに、こんな先輩がいる会社もどうなのかなと思ったものです。これだけは嫌な記憶として今でも覚えています。
外資系では足を引っ張られないように気を付ける
外資系企業では、よく言ってしまうと「実力主義」、また同じ内容をやや言葉を変えていえば、「年齢に関係なく結果を出した人物が偉い」という側面があり、若くして入社した同じ仕事の若者の足を引っ張ろうとする人はいます。
国内大手金融機関や会計士事務所、また海外のビジネススクールを卒業して晴れて入社した外資系企業に、数年の実務経験しかない若者が同じ職種で入社してくるというのを快く思わない人もいるものです。
私が転職した企業の職場の平均勤続年数はざっくり3年。これは平均なので、3年よりも短い人もいますし、長い人は10年を超えて在籍している人もいます。つまり、成功すれば長くいれるものの、そうでない場合には意外と3年未満でも会社を去っていっています。その意味でも先にいる先輩はピリピリとするのです。
外資系金融機関は年収も高いことからあこがれる人はいますが、勤続年数が短いことを考えれば、長く居続ける自信のない人にとっては、あまり居心地の良い環境ではないといえるでしょう。
最初の勤務先でのネットワークは今も健在
新卒で入社した企業からその後に転職を繰り返していくことは世代によってはあまり好感が持たれないということもあると思います。
しかし、新卒で入社した会社が大きな会社であれば、同期のネットワークもあるでしょうし、配属先の先輩や上司とのつながりも残っていることが多いというのも事実です。
実は、現在でも最初に入社した国内の金融機関の同期とは仕事の話も相談できます。あらためて思うのは同期が多い会社に入るというのは新卒で就職先を決めるときには重視してもよい要素かなと社会人になって思います。
また、当時の上司はその後出世して役員になっている人もいますし、転職をした企業で出世している人もいます。そういう人たちも会ってくれ、仕事の話にまで広がることもあります。
3年で辞めるは前向きな転職になる時代か
3年で辞めるということは、「辛抱の足りない若者が転職を繰り返していく…」というような文脈でも語られることも多いです。
しかし、終身雇用の維持も難しいという企業側の声も大きくなる中、会社に新しく入ってくる者、会社から出ていく者の扱い方に関して、職場を含めて見直していくべきタイミングになっているともいえるのではないでしょうか。
終身雇用が今後じわじわと崩れていく中で、「入社3年で転職」というのは当たり前になっていくかもしれません。それも後ろ向きの転職というよりは、雇用がさらに流動化するという意味での前向きの転職です。終身雇用の在り方が壊れていくのだとすれば、転職経験がないということ自体が、採用する企業側からむしろ「なぜ」と問いかけられるような時代へと進んでいくのかもしれません。
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