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消費増税を強行するリスクのほうが1年待つリスクより大きい

LIMO / 2019年6月2日 20時20分

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消費増税を強行するリスクのほうが1年待つリスクより大きい

消費増税を強行するのは危険だが、増税を1年待つことのリスクは小さいのだから、待つべきだと、久留米大学商学部の塚崎公義教授は主張します。

10年待て、と言いたいが・・・

筆者は、日本の財政は破綻しないと考えていますので、緊縮財政を焦るべきではないと思います。筆者が財政は破綻しないと考えている理由については、拙稿『財政赤字は巨額でも、日本の財政は破綻しない(https://limo.media/articles/-/3395)』をご参照いただければ幸いです。

もっとも、MMT(Modern Monetary Theory、現代金融理論)ほど能天気ではないので、リスクなく増税できるなら増税すべきだとは思いますが、増税を先送りするリスクは小さいので、増税するリスクと慎重に比較すべきでしょう。

その意味では、10年待ってから増税すべきだと思います。10年待っても政府の借金が数十兆円増えるだけですから、現在の借金残高1100兆円と比べれば「誤差の範囲」でしょう。

一方で、10年待てば今より増税しやすくなると思います。少子高齢化による労働力不足が深刻化するため、「増税して景気が悪化しても失業者が増えないから、気楽に増税できる」ようになるからです。

もっとも、「10年待て」などと言うと緊縮財政派を説得することはできませんから、本稿は今少し現実的に「1年待て」と主張することにしましょう。「1年待って様子を見て、増税のリスクが小さそうだったら、その時に増税すれば良いではないか」ということですね。

1年待つことのリスクはほとんどゼロ

消費増税を延期すると税収は数兆円減るのでしょうが、増税のインパクトを緩和するための諸政策も中止されるでしょうから、差し引きの財政赤字はそれほど増えないでしょう。

一歩譲って数兆円の増税分がそっくり消えるとしても、現在1100兆円ある政府の借金が数兆円増減するだけですから、まさに「誤差の範囲」でしょう。

これをもって「日本政府の財政破綻の可能性が増し、投資家からの信頼に傷がつく」などと主張するのは「海の水を一口飲んだら海の水が減る」と主張するのと同じことです。正しいけれども説得力が乏しいでしょう。

一方で、増税の強行はリスクが大きい

増税を強行して、仮にそれが景気の後退時期と重なるとすれば、景気の後退を深刻なものとしてしまい、かなり大胆な景気対策を講じる必要が出てくるはずです。

景気が悪化する時には「売れないから作らない、だから雇わない、雇われないから収入がなく、物が買えない」といった悪循環に陥るわけで、そんな悪循環を増税で増幅してしまう愚は厳に避けるべきでしょう。

景気が後退する可能性としては、すでに生じている米中貿易戦争等の影響が国内の景気を後退させる可能性に加えて、今後米中摩擦が一層激化していく可能性についても考慮する必要があるでしょう。

国内の景気の現状と先行きは、判断が分かれるところ

国内の景気関連の数字は、年明けと共に急激に悪化しています。1月から4月までの輸出が大幅に減っていること、米中貿易戦争の影響を懸念した企業が投資等を手控えていることなどが要因なのでしょう。

このまま国内の景気が悪化して行くのか、一時的な経済指標の悪化にとどまって景気は回復を続けるのか、専門家の間でも見方が大きく分かれています。

ちなみに、ESPフォーキャストというアンケート調査によると、専門家の間では「景気は現時点では拡大を続けているけれども1年以内に下降に転じる」という見方が若干優勢なようです。

筆者自身はいまだに、景気は回復を続ける可能性の方が高そうだと考えていますが、それでも数カ月前と比べると自信が大きく揺らいでいることは疑いありません。もしかすると既に景気は後退し始めているかもしれないと感じている今日この頃です。

そうだとすれば、1年待って様子を見て、「国内の景気が比較的強く、消費税を増税しても景気が後退しない、あるいは失業が増えない」と確信できるようになれば、その時に増税するという方が遥かに安全です。

米中冷戦の行方も見極めたい

米中貿易戦争は、覇権争いに発展し、米中冷戦の様相を見せています。互いに譲らずに意地を張り続けた場合に、どのような影響が世界経済および日本経済に及ぶのか、現時点で予測するのは容易ではありません。

そうであれば、「1年待って、米中冷戦の日本経済への影響がある程度予測できるようになった段階で、改めて消費増税の可否を検討する」方が遥かに安全でしょう。

米中冷戦以外にも、米国や欧州の景気自体にも黄信号が点滅しているという見方も広がりつつあります。米国等で比較的リスクの高い債務が増えていることも、景気が悪化した場合の影響を読みにくくしています。そうであれば、ますます1年待つことのメリットが大きいことになります。

増税して同額を景気対策に用いるという選択肢も

もっとも、増税するのか否かが決まらないと現場は混乱するでしょう。そこで、「増税は決定した上で、1年間は増税分と同額の所得税減税を実施する」といった選択肢も検討されるべきでしょう。

消費税減税よりは子ども手当等々の方が少子化対策として望ましいとは思いますが、本稿では敢えて「何らかの景気対策」と記すだけにしておきましょう。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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