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あなたがたとえ優秀でも「年収が低い」理由

LIMO / 2019年6月9日 11時45分

あなたがたとえ優秀でも「年収が低い」理由

あなたがたとえ優秀でも「年収が低い」理由

自分の中で「仕事の型」を築く

 働く上で多くの人が気になるのが「年収」だが、その数字は何がどうなって決まってくるのか。『どんな会社でも結果を出せる! 最強の「仕事の型」』の著者で、コンサルタントとして活躍する村井庸介さんは、「年収は『優秀さ』だけでは決まりません」と話す。

 この記事では、自身も豊富な転職経験を持つ村井さんが、同書をふまえて、年収は何によって決まるのか、どんな職種だと年収が高くなるのか、そして転職するにしても会社にとどまるにしても「うまくいく人」の思考のテクニックを解説する。

よくある「年収アップ」広告の不思議

「年収が800万円以上の転職を目指すあなた」「年収200万円UP」といった転職を促す広告を、Webや電車の中吊り、タクシー内CMなど、さまざまなシーンで見るようになりました。

 ただこれは、ふと考えると不思議な話です。転職した時点で、その人が急に優秀になるとは考えにくいでしょう。「労働市場」という言葉もあるぐらいですから、その人が「仕事で発揮する価値」と「年収」は一見、比例しそうです。しかし、実際のところ世間では、外資系投資銀行で働く新入社員の年収が、大手製造業の30代エース社員より高いといったことを多々見かけます。

「年収だけで仕事を選ぶべきではない」という考えもありますが、家族をきちんと養っていきたい、あるいは年収を上げて人生での経験を増やしたいという動機は決して悪いものではなく、むしろ健全なものだと私は考えます。また、人生のどこの段階にいるかによっても、仕事や家族の優先順位は変わるでしょう。

 実際に私も、転職の際に「夢」を狙って年収を200万円下げた途端に生活に困ったこともあれば、年収を倍にしたこともあります。ついでにいえば、事業開発・組織人事のコンサルタントとして独立して以降も、仕事上で同じサービスを提供しても、企業によって「支払いたい額」が異なるものです。なぜ、このようなことが起きるのでしょうか?

 実は年収に関しては、思ったほど「自身の優秀さ」では決まりません。私自身、計7回の転職、累計500名の就職活動支援、そしてコンサルタントとしてさまざまな企業の優秀な方と時間を過ごした経験から、「年収は、業界と職種でほとんど決まってしまう」という考えに至りました。では、なぜそうなるのか、それぞれ理由を見ていきましょう。

年収1000万を超える企業の特徴

 東洋経済新報社が毎年発表する「年収ランキング」を見ると、総合商社、M&Aアドバイザー、投資会社、テレビ局、システム会社などが「年収1000万円を超える企業」として登場します。これらの業界に特徴的なのは、企業経営に必要な「人・モノ・カネ」のうち、モノをほとんど必要とせずにビジネスが成立することです。そしてこれらの業種は、レストランや小売のように「ある程度、値段に上限や値下げ圧力がある業界」とは異なり、値段の上限も上げやすいのが特徴です。

 そのほか、免許が必要となる業種や特許などで守られている業界や会社も、ライバルの参入が少なく、業界内の競争も他業界と比べれば厳しくないことが特徴としてあります。

 これらの業種は会社が利益を保ちやすく、結果として競争力の源泉である「人」に報酬を支払いやすくなるといった構造があります。つまり、どの業界にいるかで、会社が社員に払える「余力」は決まってしまいます。そのため、あなたの年収は、あなたの優秀さ以上に、「どの業界で仕事しているか」で左右されてしまうのです。

 しかし、一見、儲かりにくいと思われる業界でも、独自のビジネスモデルやポジショニングを取ることで高収益を保っている企業もあります。一例を挙げると、京都を中心とした関西系の製造業は、世界でも高いシェアを誇る製品を持ち、利益が悪いと思われる製造業の中でも高い利益水準を保っている企業が多くあります。

 ここまでは、「業界や会社のビジネス構造が、年収の大枠を決めてしまう」というお話をしてきました。では、「職種」はどのように年収に影響してくるのでしょうか?

「お金に近い職種」ほど高報酬になりやすい

 一般には、「営業」や「マーケティング」といった職種のほうが、管理部門より年収が高いといわれます。その違いは、「お金との距離の近さ」にあります。

 一番わかりやすいのは営業職です。彼らが「売る」ことで会社に収入がもたらされ、人の給与などの支払いあてることができます。圧倒的な実力を持つマーケティング部門が社内にあれば、営業よりも彼らが高い報酬を得ることもあるでしょう。これらの職種は、会社に収入をもたらせる距離にいるので、多少は高い年収を支払っても、それ以上のお金を回収できるのです。

 また、一見すると報酬が低い管理部門の中でも、「財務」は給与が高くなる傾向があります。というのも、彼らは資金調達を通じて企業活動の資金を確保します。また、コスト削減活動などを通じてお金の確保もしやすい立場です。さらにはM&Aで会社の成長に寄与することもできます。結果、営業職と同様に高い報酬を支払ったとしても、会社により多くの資金をもたらしてくれるのです。

 一方、私もかつて務めた「人事」は、企業の競争力の源泉となる「人」に関わる重要な職種の割に、報酬が上がりにくい職種でした。人事の業務は、たとえば採用ひとつとっても求人やシステムに費用がかかり、かつ入社した人が成功するまでの時間とお金がかかり、しかもそうして採った人が成功するとは限りません。そのため、会社としても思い切って給与を出しづらいという動機が働いてしまいがちです。

 どの職種・職務も、会社にとって欠かせないものではありながらも、結果として報酬は、「お金との距離の近さ」で差がついてしまうことが多いのです。

 では、もしあなたが年収を上げたいと思ったときには、どうすればよいのでしょうか?

年収を上げたければ、現職で結果を出すことにこだわる

 ここまで業界・職種の話をしてきたので、「転職」という言葉が頭に浮かんでいた方々が多いかと思います。しかし、「年収を上げたい」という動機が強くなったときこそ、「現在の職場で結果を出すこと」に、いま一度こだわってみましょう。

 あなた自身がすでに大活躍をしていたら、他社や人材会社から魅力的な提案がきているはずですが、現状ではそうした声がかかっていないとします。そのような状態で、畑の違う業界、または職種に応募したとしても、他社からすると、ほかの応募者と比べて「あなたを採用する理由」は弱くなってしまいます。そうしたとき、あなたに仕事を任せてみたいと思える期待をつくるのが「いまの仕事での結果」なのです。

 とはいえ、これまでと同じことを繰り返していては結果も変わりません。ですので、自らが会社の未来を考えた時に感じる「問題」を、どのように解決したらよいのか、実行過程をどのように進めたらいいのかを踏まえて、会社に「提案」をしてみてください。

 この「提案」に沿って問題が解決されたとき、あなたは、社内で誰もやらなかった、あるいはできなかったことを成し遂げた唯一の人になり、かつ、他社から見ても「ユニークな実績」として目に映るようになります。

 転職が頭に浮かぶほどの方であれば、その職種での経験や知識はあるはず。提案の材料は社内に豊富にそろっているかと思います。では、その材料をどのように調理すればよいのか? 料理にも、一定の手順や型があるように、「提案」にも「型」が存在します。

問題解決型の「提案」の型

 私が大学卒業後に「仕事の基本」を叩き込んでいただいた野村総合研究所は、経営コンサルティングを行うシンクタンクとして、日本最大級の人員と売上規模を誇っていました。なぜ、そのようなことができたかというと、「GISOV」という問題解決の「提案の型」が口頭伝承され、脈々と受け継がれていたからです。GISOVはアルファベットそのままに「ジー・アイ・エス・オー・ブイ」と読みますが、この「型」によって、他社より高単価でもコンサルティングを受注し、問題を解決することでリピート受注もいただく、そんな好循環サイクルが生み出されていました。

 GISOVは、それぞれ次の5つの要素の頭文字をとったものになります。

G:Goal(ゴール:目的・目標)
I:Issue(イシュー:課題)
S:Solution(ソリューション:解決策)
O:Operation(オペレーション:実行計画)
V:Value(バリュー:付加価値)

 そもそも、あるべき未来像(Goal)がなければ、どんなに面白そうな企画でもその会社が取り組む理由はありません。そして、原因となる課題(Issue)を捉え、そのうえで解決策が練られていないことには、頑張った割には結果が出ないという状態に陥るリスクが高く、誰も挑戦したくありません。そして、解決策(Solution)を実行するのは人であり、そして時間もお金も必要となっていきます。それらの組み合わせが現実的なのか、その実行計画(Operation)が描けていないことには、「絵に描いた餅」といわれ、結局は誰も真剣には取り組めません。

 そして、この「提案」にあなたらしさが加わるのが「Value」です。一見、中身が似たような提案であったとしても、上司やお客さまが「なぜあなたに頼むのか」? そこには、あなたのキャリアやそこから生まれた価値観があるからこそなのです。

 たとえば、消費者向けのスマートフォンアプリを開発する会社と、金融機関向けシステムを開発する会社では、同じシステム会社でも文化や社員の価値観が違います。顧客視点で見ると、前者に銀行向けサービス、後者に一般消費者向けアプリの開発を依頼しないだろうというのは明らかでしょう。これは企業の例ですが、個人においても、「アイデアを生み出す数が特徴的な人」と「リスク管理が得意な人」では、依頼される仕事も変わるでしょう。これらが「Value」につながります。一人ひとりの人間が違うように、この「Value」も、突き詰めていけば唯一無二の存在になります。

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筆者の村井庸介氏の著書(画像をクリックするとAmazonのページにジャンプします)

あなたらしい提案が「オリジナルな結果」を生み、活躍の場を広げる

 このGISOVのそれぞれの要素が一気通貫し、連動することで、あなたに頼む「理由」が生まれ、提案が承認されます。そして、GISOVがそれぞれきちんと練られた提案は、オリジナルな結果へとつながっていきます。

 結果を出せば、社内での昇進の可能性も見えてきます。年収アップを動機とした転職を本気で考えるのは、そのタイミングでもよいのではないでしょうか。

 同じ会社内で、別の職種などにチャレンジすることもできれば、たとえば「経理がわかる営業」など、また他人にはない独自性を生み出し、結果としてあなたの年収だけでなく、活躍の場が広がっていくはずです。

 

■村井庸介(むらい・ようすけ)
 1st Penguin株式会社 代表、事業開発プロデューサー。クラフトビールや上場人材会社、ブロックチェーンサービスの事業および組織開発に携わる。大学卒業後は、野村総合研究所で通信・製造業の新規事業開発など戦略コンサルティングに携わる。その後、グリー、日本IBM等で戦略企画や人事、メガネスーパでは企業再生(事業開発職)など、計8社での就業を経て独立に至る。プライベートでは、NPO法人の教育事業「ベストキャリア」を通じて累計約500名の大学生の就職を支援。

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村井氏の著書:
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