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金価格が国内でも急騰、1981年以降の最高値に迫る背景は?

LIMO / 2019年6月28日 20時20分

金価格が国内でも急騰、1981年以降の最高値に迫る背景は?

金価格が国内でも急騰、1981年以降の最高値に迫る背景は?

金ショップ前に長蛇の列はできるか

海外市場で金価格が急騰、約6年1カ月ぶりの高値を付ける

金の価格が急騰しています。海外市場では6月25日に1,431ドル(1トロイオンス当たり、以下同)を付け、約6年1カ月ぶりの高値となりました(2013年5月14日に1,434ドル)。

金価格はFRBによる利上げ実施が続いた昨年8月に1,178ドルまで下落した後、利上げ実施の見送りを受けて今年2月には一時1,343ドルまで上昇していました。その後は短期調整したものの、6月に入ってから再び上昇し始めて、冒頭に記した高値に至った次第です。

昨年8月の安値から見ると、実に+21%超の上昇です。ただ、この1週間の上昇ピッチがやや急速だったため、6月26日は反落調整となりました。しかし、依然として1,400ドル超の高値圏にあります。

なお、海外価格はLBMA(London Bullion Market Association)のPM価格を指します。

急騰した最大要因はFRBによる利下げ実施への期待感

金価格が6年ぶりの高値を付けるまで急騰した背景として、1)FRBによる利下げ実施への強い期待感(ドル安懸念)、2)中近東のイラン情勢を始めとする地政学リスクの高まり、3)米中貿易摩擦問題の長期化に伴う世界景気減速懸念(リスクオフ)、などが挙げられます。

このうち、短期的に大きな押し上げ要因になっているのが、1)の利下げ観測でしょう。金の最大のデメリットは、金利が付かないことです。それゆえ、ここ3年間続いた利上げを柱とする米国の金融政策は、金にとって厳しい逆風だったことは間違いありません。

ところが、この半年間は利上げ実施が見送られ、さらに、ここにきて早期の利下げ実施の可能性が高まりました。ご存じの通り、まだ正式に利下げは行われていません。しかし、それを先取りする形で、利下げによる恩恵を最大限享受する金の価格が急騰し始めたわけです。

実際、6月の定例FOMCが終了した6月20日以降、金価格の上昇ピッチは急加速しています。

国内の金価格(円建て)も急騰、昨年8月から最大+17%超上昇

こうして海外市場で金価格が急騰している中、日本国内の金価格(円建て)はどう動いているでしょうか?

三菱マテリアルが日々公表する金の小売価格を見てみましょう。結論から言うと、国内価格も急騰しており、実質的な最高値に迫る勢いです。国内価格は海外価格と同様、昨年8月に4,554円(1g当たりの税込価格、以下同)の安値を付けた後、緩やかな上昇に転じ、今回6月25日には5,339円の高値を付けました。

(/mwimgs/1/7/-/img_175adaa1b0126e2563db54de381438b2255383.png)

拡大する(/mwimgs/1/7/-/img_175adaa1b0126e2563db54de381438b2255383.png)

(出所)ドル建て価格:LBMA、円建て価格:三菱マテリアル(税込み小売価格)


ただ、この間の上昇率は+17%超であり、海外価格の+21%を下回りました。これは、円高による影響(円換算時の目減り)です。むしろ、円高にもかかわらず、国内の金価格高騰が目立っているとも言えます。

現在の国内金価格は1981年以降の最高値に迫る水準へ

ちなみに、今回の高値5,339円は、2015年1月に付けた高値(5,392円)に迫る水準ですが、この時の高値は1981年以降の最高値でした。つまり、現在の国内金価格はこれに迫っているわけで、これだけを見ても足元の急騰ぶりが分かります。

なお、国内金価格の過去最高値は、当時のソ連によるアフガニスタン侵攻で国際情勢が緊迫化した1980年初頭の約6,500円(消費税無し)という、今振り返っても途方もない価格です。

円高にもかかわらず国内金価格は急騰、その要因は?

さて、海外の金価格(ドル建て)を国内価格(円建て)に算出する上で用いる為替レートは、直近で108円/ドル前後です。しかし、この為替レートは一時期に比べると円高であるため、円建て価格には不利に働きます。

実際、国内価格が1981年以降の最高値となった2015年1月の為替レートは118~119円/ドルでした。もちろん、この時の海外価格は約1,250ドルでしたから、今回は海外価格の上昇が円高デメリットを打ち消したと見ることはできます。

しかし、昨年8月以降の上昇率の差異(ドル建て+21%上昇、円建て+17%上昇、昨年8月よりも為替レートは4円の円高)を勘案すると、国内の金価格を押し上げる何らかのプラス要因があると考えていいでしょう。

それは何でしょうか? これも結論から言うと、消費増税の影響と考えられます。

金価格にも消費増税の影響、増税後の売却を見込んだ駆け込み需要も

国内の金価格、すなわち、金の売買で用いる価格は「消費税込み価格」を用います。現在は、税抜き価格に+8%を上乗せした価格ですが、これが10月から+10%の上乗せ価格になるのです。つまり、今買って10月以降に売却すれば、表面上は+2%分が“丸儲け”になる仕組みです。

ただ、実際には、買取り価格と売却価格には差異があり(これが取扱業者の手数料となります)、さらに、金価格自体が日々変動しているため、“丸儲け”というようなケースは稀です。

しかし、消費税が8%のうちに購入しておけば、この増税+2%分が売却時に有利に働くことは間違いありません。いや、有利どころか、大変大きなメリットになる可能性もあります。

現在の価格高騰が続けば増税分以上の利益を得る可能性も

もし、現在の海外市場での金価格上昇が続くならば、「税抜き価格」がさらに上昇しても不思議ではありません。その場合のシミュレーションを見てみましょう。

現在の税抜き小売価格は約4,900円です。もし、今、1kgの地金を購入すると購入代金(税込み)は約529万円です。さて、増税後の10月になって金価格が+100円上昇したとしましょう。この場合、税抜き小売価格は5,000円ですが、取扱い業者から見た税抜き買取価格(つまり、金の保有者から見た税抜き売却価格)は、手数料が控除されて約4,925円程度と試算されます。もし、ここで売却すれば、売却代金は約542万円となり、約+13万円の利益となります。

一方で、もし、このケースで消費増税がなかった場合は(8%のまま)、売却代金は約532万円となり、約+3万円の利益に止まります。+2%の増税分が大きなメリットになることがお分かりいただけたでしょうか? こうしたある意味で都合のよい思惑が、国内金価格をさらに引き上げている要因の1つと考えられます。

国内の金は絶好の売り場が到来か?

こうした消費増税分の“サヤ抜き”の思惑は別にしても、国内で金価格が高騰しているのは事実です。筆者の経験では、そろそろ街中の金取扱店(金ショップ等)が、金の買取りキャンペーンを実施する頃です。今回は前述した消費増税を控えているので、通常よりも買取りを強化する、すなわち、多少の上乗せが期待されます。

もし、皆さんが金をお持ちならば、絶好の売り場になるかもしれません。金は地金(1kgや500gのバー)や金貨でなくとも、指輪、イアリング、ネックレスなどの装飾品のみならず、万年筆の芯先や、入れ歯の金でも買い取り対象になるはずです。

過去、こうした金価格高騰時には、ほぼ例外なく、金の売却希望者が店頭で長い行列を作りました。今回も同じような光景が見られるのか注目しましょう。

注:国内の金価格は日々変動し、また、取引業者によって算出基準が異なります。十分注意してください。

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