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遺骨置き去りで逮捕者も。お墓問題の深刻さ

LIMO / 2019年6月29日 21時30分

遺骨置き去りで逮捕者も。お墓問題の深刻さ

遺骨置き去りで逮捕者も。お墓問題の深刻さ

日本は2007年頃には超高齢社会に到達し、医療・介護やお墓問題が喫緊の課題となっている。今回はお墓問題に焦点を絞り、課題や問題の深刻さに迫る。

遺骨の置き去り、スーパーのトイレにも

遺骨の置き去り問題は、年々深刻になっている。17年に毎日新聞が発表した調査によると、14~16年の3年間で全国の警察に落とし物として届いた人の遺骨は、203件にもおよんだようだ。そのうち8割以上は落とし主が見つかっていないという。

貸倉庫やコインロッカー、電車の棚、スーパーのトイレなどに置き去りにされた遺骨が発見されたというニュースが後を絶たない。

とくに首都圏では、お墓の購入や維持に経済的負担が大きすぎ、少子高齢化社会で承継者がいないなど問題は山積している。

都立霊園は激戦!仕方なく民営を選択する人も

核家族化や独身世帯の比率増加など、社会構造の変化がお墓にも影響をおよぼしている。お墓を維持する人がいないなどの理由で墓じまいをする人も増加しているが、一方で首都圏では公営墓地の空きがなく、人気区画の倍率は35.1倍(18年度)まで達しているという。平均倍率は5.2倍だ。都立霊園は民営よりも永代使用料が安い傾向にあり、東京都が運営していることで安心感があるため年々応募者は増加している。

終活関連サービスを提供する㈱鎌倉新書は19年6月、『第1回都立霊園に関する実態調査(https://www.kamakura-net.co.jp/newstopics/detail.html?id=6024)』を実施した。インターネット上で東京都に住む40~89歳の男女を調査し、有効回答数は事前調査が2万件、本調査が400件(都立霊園当選者200件、落選者200件)となっている。

申し込み回数は都立霊園の当選者が平均2.3回、落選者が2.8回となっており、約3回の申し込みで諦めてしまう人が多いようだ。

これは抽選会が年に1度しかなく、一般的な納骨時期は四十九日だが遅くとも三回忌までが良いとされていることが影響しているという。そのため3回落選したら、民営を選択する人が多いようだ。

都立霊園の抽選に落選した人の約半数は、次回申し込みをしないようだ。そのうち約7割が民営霊園のお墓を購入している。

多様化するお墓のかたち、散骨希望も増加

筆者の母は60歳になり、終活に取り組んでいる。エンディングノートもすでに書いたようで、その終活はなかなか本格的だ。

墓地の購入にも積極的に動いており、見学会にも足しげく通っている。なぜ急ぐのかというと、飼っているペット(犬)がもう高齢で、死期が迫っていることも影響しているようだ。母はペットとお墓に入りたいようで、樹木葬を検討している。樹木葬は墓石のお墓に比べ費用が安く、承継者を必要としない場合が多いようだ。「子どもの負担になりたくない」と思う高齢者も多く、墓石のお墓以外の選択をする人も増加傾向にあるという。

「自然に還りたい」などの理由で散骨を希望する人も増えているようだ。しかし自治体で散骨を禁止しているところもあり、今後増加すれば規制する自治体も増える可能性がある。

その他にも遺骨の一部を粉骨してアクセサリーにしたり、納骨しない手元供養など、供養方法は多様化している。

「お天道様が見ている」信仰は薄くなっている

日本人は「無宗教だ」とよく言われる。これが遺骨置き去り増加に影響しているのだろうか。

NHK放送文化研究所も参加している国際比較調査グループ(ISSP)が18年10~11月に実施した「宗教」に関する調査によると、「信仰している宗教はない」と回答した人は62%にもおよぶ。しかし、08年の調査でも「信仰している宗教はない」と答えた人は61%となっており、増減はない。「宗教を信仰している」と回答した人も08年は38%、18年は36%と変化はない。

だが、『信仰心があるかどうか』との問いに対し、「ない」(「あまり」+「ほとんど」+「まったく」)は52%となっている。対して「ある」(「とても」+「かなり」+「まあ」)は26%にとどまる。1998年の調査では「ある」が32%となっており、減少傾向といえる。

「ない」は98年では50%と2018年とほとんど変わらないが、その中でも「まったくない」は1998年では14%だったのに対し、2018年では22%に増加している点が大きな変化といえる。

さらに同質問に対し「わからない」という回答もあるのだが、これが3%から7%に増加している。「どちらともいえない」も選択肢としてあるわけだが、『そもそも知らない』『考えたこともない』人が増えているのかもしれない。

核家族の増加や晩婚化などの日本社会の変化により、祖父母に「お天道様が見ているよ」と教わる機会も減り、またそんなことも考えない人が増えているともいえるだろう。

それでも遺骨置き去り問題は経済的理由が大きい

遺骨の置き去りは犯罪であり、逮捕者も出ている。信仰心が減少傾向にあることも少なからず影響しているだろうが、やはり経済的な負担、子どもへの申し訳なさから遺骨の置き去りに発展しているケースが多いのではないだろうか。

そもそも信仰について、考えたり話したりする機会が日本人には少ないのかもしれない。墓石のお墓だけではなく供養方法も多様化している現代、どのように供養して欲しいか、また残される家族の希望など、元気なうちに話し合っておく必要があるだろう。

【参考】

『日本の超高齢社会の特徴』公益財団法人長寿科学復興財団

『人の遺骨置き去りか 8割以上「落とし主」が見つからず』毎日新聞

『日本人の宗教的意識や行動はどう変わったか』NHK放送文化研究所

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