子どもは産まない方が幸せ?既婚子なし女性の幸福度の高さから見る、日本女性の生きづらさ
LIMO / 2019年7月16日 12時10分
子どもは産まない方が幸せ?既婚子なし女性の幸福度の高さから見る、日本女性の生きづらさ
女性のなかには、毎日の仕事や家事、育児に追われて「つらい」と感じている人も多いのではないでしょうか。
夫婦でしっかり話し合って、または自分でしっかり考えて進むべき道を決めていたとしても、職場や親、親戚など周囲の人たちからさまざまな意見を聞かされて、気持ちが揺れてしまう場合もあるでしょう。
女性の「つらさ」とは
女性の人生には、結婚や妊娠、出産、育児、そして退職や復職などといったさまざまな転機が訪れます。それぞれのタイミングで自分なりの判断を下しながら前に進まなくてはなりません。かつて日本では「男はつらいよ」という映画が大変な人気を博していました。しかし今、「女性はつらい」と考えている人が増えているのです。
セレブ主婦向け雑誌として一世を風靡した光文社の『VERY』をご存じでしょうか。東京都白金発の「シロガネーゼ」、兵庫県芦屋発の「アシャレーヌ」といった言葉を生み出したのも『VERY』でした。この『VERY』で扱われるテーマが時代とともに変化しています。
2013年2月のテーマは「子育てがつらい私はダメ母ですか?」、16年10月のテーマは「『いい母』の定義なんて誰が決めた?」でした。18年には「『きちんと家のことをやるなら働いてもいいよ』と将来息子がパートナーに言わないために今からできること」という特集が組まれています。
女性たちはどんな「つらさ」のなかにおかれているのでしょうか。
幸福度を決めるもの
最初に18年に明治安田生活福祉研究所が発表した『人生100年時代の結婚に関する意識と実態(https://www.myilw.co.jp/research/report/2018_04.php)』をもとに、40~64歳の男女が考える現在の幸福度や結婚生活に対する満足度についてみていきましょう(男女別幸福度の表を参照)。
本調査によると、既婚女性では子どもがいるかいないかで現在の幸福度に大きな違いがみられませんでした。
「とても不幸」「どちらかといえば不幸」だと答えた人の割合が高いのは、男女とも未婚者や離別者・死別者など配偶者が不在なケースでした。とくに男性でその傾向が強く、不幸と答えた人と幸せと答えた人の割合が拮抗しています。
一方、女性では離別者・死別者でも「幸せ」だと回答した割合が70%を占めており、男性との差が際立っています。女性未婚者の6割近くが「どちらかといえば幸せ」と答えていて、結婚以外に人生の楽しみをみつけている様子もうかがえます。
結婚生活の満足度を決めるもの
次に同調査に基づいて、女性の結婚生活に対する満足度をみていきます(女性の結婚生活に対する満足度の表を参照)。
女性が仕事を持っている場合、子どもがいないほうが結婚生活への満足度が高くなっています。
「夫婦ともに正社員の子どもがいない世帯」で「とても満足」と回答した割合が最も高く、「夫婦ともに正社員の子どもがいる世帯」で「とても不満」の割合が最も高くなりました。
女性が正社員として働く世帯では、子どもの有無が結婚生活への満足度に大きな影響を与えているようです。子どもができると夫婦のライフスタイルは大きく変わります。家事分担や子育てに対する夫婦の考え方の違いが表面化しやすく、結婚生活に対する女性の不満が高まりやすいのかもしれませんね。
女性に集中する家事・育児
「育児や家事を誰がすべきなのか」についての考え方は時代とともに変わりつつありますが、いまだに女性に集中しやすい傾向が顕著です。
19年にSMBCコンシューマーファイナンス㈱が公表した『30代・40代の金銭感覚についての意識調査2019』をもとに、子育て世代のリアルについてみていきます。
30代・40代の配偶者がいる人(496人)を対象に「家事や育児の負担が自分に過度に集中していると思うか」という質問をしたところ、「非常にそう思う」「ややそう思う」と答えた人の合計は女性で76.0%に上りました(男女別家事・育児の負担に関する表参照)。
この世代で家事・育児が女性に集中している状況がうかがえます。
働くママに家事や育児が過度に集中した場合、「つらい」と感じる人が増えるのは自然なことではないでしょうか。一方、専業主婦のなかにも孤独な子育てに「つらさ」を感じている人は少なくありません。
出産後に仕事を続ける?
出産後に仕事を続けるのか辞めるのかということも女性にとって大問題です。
18年に内閣府男女共同参画局が公表した『「第1子出産前後の女性の継続就業率』及び出産・育児と女性の就業状況について』によると、10~14年の期間において出産後仕事を続けた有職女性の割合は過半数を超えています(第1子出産前後の女性の就業状況に関する表参照)。
出産前に就業していた女性の割合は72.2%です。このうちの46.9%(全体の33.9%)が第1子出産前後に退職しています。一方、出産前に就業していた女性の53.1%が就業を継続しており、出産後も働き続ける女性が少なくないことがわかります。
この背景には、「女性が輝く社会」を実現するための国や企業の取り組みが進んでいることがあるでしょう。しかし、本人の希望に関係なく出産後も働かなくてはならない女性も多いかもしれません。
一方、妊娠が発覚して仕事を続けにくくなり、退職する道を選ぶ人もいるでしょう。予定通りにものごとが進まないと「こんなはずではなかった」という「つらさ」を感じがちです。
20代は迷いが多い時期
19年にソニー生命保険㈱が公表した『女性の活躍に関する意識調査2019』によると、仕事をしている女性(619人)の3人に1人が「本当は専業主婦になりたい」と考えていることがわかりました(年代別専業主婦になりたい有職女性の割合の表を参照)。
有職女性に対して「本当は専業主婦になりたいか」と聞いたところ、全体の36.7%が「そう思う」と答えたのです。とくに20代の働く女性では、過半数が専業主婦を望んでいます。
一方、同調査で専業主婦(269人)を対象に「本当は外に働きに行きたいと思うか」を聞いてみると、「そう思う」が31.6%を占める結果になりました。専業主婦の3人に1人が「外で働きたい」と考えていることになります(年代別就業したい専業主婦の割合の表を参照)。
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20代でその傾向が強く、約7割の女性が本当は仕事をしたいと思っていることがうかがえます。
20代女性には人生の選択肢が多く残されており、そのはざまで揺れ動く人も少なくないのかもしれません。
子どもを産まない方が幸せなのでは?
ここまで、結婚や仕事、子どもを持つことについて様々な意識調査をみてきました。
既婚女性の幸福度は子どもの有無では変わりませんし、子持ちの有職女性への過度な家事や育児負担の現状がうきぼりになっています。「子どもを産まない方が幸せなのでは?」と考えてしまうような結果でした。
子育てには幸不幸が混在していることは、誰もが知っています。そして職場や地域の人々の子持ち世帯への批判は、いつの時代も一定数存在しています。
結婚すること、子どもを産むことは強制されるものではありません。だからこそ「自分が勝手に結婚したんだよね?」「だったら子ども産まなきゃ良かったでしょ」といった批判が存在しますが、すべての人が「子どもを産むことは不幸をうむ」と考え実行したら、社会保障制度が崩壊しかねません。また、子どもがいない社会に未来はあるのでしょうか。
結婚している人もしていない人も、子持ちでもそうでなくても、誰もが幸せを感じることができる社会の実現には、時間がかかると思います。しかし目指すべきでしょう。
「つらい」と思ったら、声をあげましょう。パートナーだけではなく、周囲や行政など、「変わらない」と諦めるのではなく言い続ける必要があるでしょう。また選挙に行くことも重要な行動の1つです。「選挙に行って何が変わるのか」は分かりませんが、投票しなければそれさえも確認のしようがありません。小さなことでも行動していくことで、未来も少しずつ変わっていくでしょう。
【参考】
『30代・40代の金銭感覚についての意識調査2019』 SMBCコンシューマーファイナンス
『「第1子出産前後の女性の継続就業率』及び出産・育児と女性の就業状況について』内閣府男女共同参画局
『女性の活躍に関する意識調査2019』ソニー生命保険
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